●ミサワホーム「OII型」その11・「建てにくい」は「建てられない」ではない | サンロフトの本とテレビの部屋

●ミサワホーム「OII型」その11・「建てにくい」は「建てられない」ではない

●ミサワホーム「OII型」その11・「建てにくい」は「建てられない」ではない
貼る機会が無くて残った3枚から。


O型シリーズの特徴的な外観は、遠くから見た全体像だけではない。玄関周りだけで個性が際立っている。ガラス張りの玄関、ポーチ灯、そして、広いポーチ。玄関庇のフラワーボックスを支える支柱は、堅樋(たてどい・縦の雨樋)も兼ねる。


南面2階にバルコニーがあると思ったら、下部が筒抜けで金網だけで驚いたものだ。手摺の代わりとも言えるし、文字通りプランター等を置くスペースにもなる。下部にはエアコンの室外機を収めることも出来る。初期GOMAS時代にだけあった「フラワーボックス」は面白い発想だった。

遠くから見ると、外壁は当時主流のモルタル仕上げのようだが、近づくと独特の凹凸が美しいスタッコ仕上げ。写真では分かりにくいが、デコボコに塗ってから、表面の半分ぐらいが平らになるように抑えてある。正確な手順は分からないが、当時、そう説明を受けたと思う。


雨戸の無い窓は新鮮だったが、シャッターになっていると知って驚いた。



カタログ最終ページのイラストは、外観・内観写真の反転プラン。通常はベスト仕様で描かれるのだが、例外的にオプションも描かれている。地下室と2階サニタリーだ。

この時期のカタログ裏表紙に必ず入っていたロゴを最後に貼っておこう。



カタログにプラン集は無いので、別紙のプラン集(西玄関・ベスト仕様)を貼る。立面図も載っているのは珍しいが、オーバーハングの凹凸を分かりやすくするためか影も描かれている。


OII型の売れ筋は代表プランの44坪タイプで、坪単価も最も安い。49坪タイプが割高なのは2階サニタリー標準装備のせいだろう。49坪タイプだけ標準装備にする理由は無いので、44坪タイプを最も割安に見せるためだと思う。

グロテスクな「3つ目」の外観はともかく、プランだけで比較すれば44坪より49坪の方が良い面も多い。2人の子供が8畳の子供部屋を共有するより、2分割可能な12畳の方が良い。座敷の床の間は奥行きが深く、一応部屋の奥にある。リビングとダイニングが区切られているのは現代では欠点だが、当時の価値観では決して悪くなかったと思う。玄関ホール、2階ホールともに広々している。


連載に際して、GoogleマップからO型シリーズをいくつか見直してみた。予想に反して、建物の南面を西や東へ90度横倒しに建てた実例は少なかった。

予想の意図はこうだ。東西道路なら玄関が正面に来るが、南北道路ではアプローチが長くなってしまう欠点がある。前を1間空けて建てると玄関まで7m程度。前に車を縦に停める駐車場を設ければ、玄関まで10m程度。土地の半分以上置くまで入っていかなければならない。

事実、そうしたアプローチの長い実例が多い。上空から見ても、ストリートビューでも、狭く薄暗いアプローチを玄関まで進む印象の家が多いのだ。ポーチと玄関庇の突出が他のモデルより長いが、その建て方なら収まるという考えか?

うちがGOMAS Oを建てた時、北西道路だったため、建物の南面を南東にするか南西にするかで迷った。玄関を正面に持ってきて、正解だったと思う。


O型シリーズの難点は、建物が南北に長いことだ。南側に広い庭を取るのが難しいのである。庭の奥行きが1間半、それどころか1間ほどしかなく、採光がほとんど期待できない実例もあった。向かいは隣家の北面だから、大きな窓を付けることは可能なのだが……。


O型シリーズのさらなる難点は、「4ファサード」ゆえ全方向にある窓。我が家も北面に大きな窓が付けられず、通常壁の面に窓を設けた。1階は塀があるのでまだいいが、2階は制約が大きい。これは、多くの家に当てはまる。北面の向かい側には隣家の南面のあるので、OII型の2階主寝室のように北面のみが窓では困るのだ。

他の初期GOMASで窓の位置を変えた事例はほとんど見ないが、O型シリーズではオーバーハング部分に無理やり窓を取り付けたものをよく見かける。


他のモデルと比べ、O型シリーズはそれらの条件が最も厳しく、建てにくい。巨大なG型は2階東西面の開口部がほとんど無い。それに準ずる巨大さのM型2リビングも、北側の部屋の角に窓があるものの、南側の部屋には東西の開口部がほとんど無い。

コンパクトなA型2階建てもG型同様の工夫がある。MII型も東西面の窓は玄関側に集中。MII型も東西面には奥の出窓ぐらいしかない。

最も建てやすいのは、GII型だろう。建物は南北に短く、大きな開口部は南面に集中。玄関が斜めになっているのは、ポーチの突出をほぼ無くす効果もある。南道路以外の土地ならアプローチも短い。その好条件は最大の49坪タイプでも変わらない。都市型住宅としては傑作だ。


1979年、OII型を断念してS型風のフリーサイズを建てたあの土地ならば、そのままの窓の配置で良好な採光が得られた。皮肉にも、O型シリーズを建てるには今の広い土地よりも適している。あの年の春、私は57坪のわが土地にOII型を配置した図面を描いて、そこに住む日を夢見ていた……。


O型シリーズは、そうした欠点を無視するかのように基本設計を変えることなく、この後も続いていく。欠点の有無だけで、魅力を語ることは出来ないのだ。

44坪の巨大住宅が最小の建坪でコンパクトに収まっている、というのも事実。狭い土地に無理やりでも建てられるのは素晴らしい。「建てにくい」は決して「建てられない」ではないのである。


連載はO型NEWへ続くが、資料整理のため2、3日休載する。


関連ページ 『メーカー住宅徹底研究』