●日本らしさ、躍動感、そして展開力…… | サンロフトの本とテレビの部屋

●日本らしさ、躍動感、そして展開力……

●日本らしさ、躍動感、そして展開力……
東京五輪エンブレムへの意見が4万件余り集まったという。一見多いようだが、コンペ応募者1万5000人に比べるといささか少ない。通常のロゴマークのコンペより手間がかかり高価なドローソフト必須だったから、応募への関心は応募数を大きく上回っていたと思われる。


あるフリーフォント本に、こんな一節があった。「イラストは、描く人は多いが使いたい人は少ない。フォントは、作る人は少ないが使いたい人は多い」。ゆえにフォントを作る意義があるというわけだ。通常、エンブレムはフォントのようにごく少数の人が作り(応募し)多数の人が使ったり見たりするのだが、フタを開けてみたら、イラストのように自分がやりたいというだけだった。密室での選定が批判されたけど、オープンな選定で決定したエンブレムが特別親しまれるわけでもないだろう。


日本らしさ、躍動感、という募集要項のキーワードは誰もが理解したが、展開力の真意は伝わったろうか? 単に色々なグッズに使われるという意味ではない。サノケンのエンブレムでは、パーツを組み合わせて英数字が作れるようになっていた。あれ自体は悪い冗談としか思えなかったが、ああいうのが展開力なのだ。


『新しい時代のブランドロゴのデザイン -ダイナミック・アイデンティティのアイデア97』という本が参考になる。1パターンのロゴマークを使うのではなく、一定の図形の組み合わせや配色を決め、統一的なイメージで様々なバリエーションを展開するのが近年のデザインの潮流なのだそうだ。


正直、ぜんぜん面白くない方向へ進んでいるが、デザイナーなら無視できない。密室コンペの100人はみな知っていただろうが、今回の1万5000人の何割が知っているのか、大いに疑問である。東京五輪がデザイン的にリオより後退するとすれば、カッコ悪いなぁ。スポーツの祭典だから、デザインや建築はどうでもいいという人もいるけど……。


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