●若い女性がシャア専用ザクに食いついた!? | サンロフトの本とテレビの部屋

●若い女性がシャア専用ザクに食いついた!?

●若い女性がシャア専用ザクに食いついた!?
しばらく前の『ZIP!』で、ファーストガンダムの人気キャラ&モビルスーツを調査する企画があった。中でも目を引いたのが、ガンダムの映像を見せて反応を見る件。若い女性たちが、シャア専用ザクがガンダムに襲いかかるシーンで、「速い!」とえらく食いついていたのだ。


女性層はメカに興味がなく、まして戦闘シーンに興味があるわけがない。というのが半ば定説。若い女性にターゲットを向けたSEED以降のガンダムでは、ガンプラ販促程度にしかモビルスーツは映らず、いや、映ってはいるが意味のある戦闘シーンはほとんど出てこなくなった。どういう性能のモビルスーツが、どういう戦い方をするかなんて、彼女たちには一ミリの興味もない。と言っているかのような作品づくりである。だが、定説は俗説に過ぎず、案外我々と同じように面白さを感じているのかもしれない。


モビルスーツ戦がつまらなくなったのは、単純に演出技術の低下なのかもしれない。さらに数日後の『ZIP!』で富野氏へのインタビューがあり、「戦闘シーンで気を遣っていることは?」の質問に、「同じことをやらない」と答えていたのだ。ライフルを1発撃ったら、2発目は撃ちたくない。しかし、思いつかなくて、よく連射してしまったとも言ってた。


ファーストガンダムには印象的な戦闘シーンが多かったが、そんな工夫の賜物だったのだろう。シャア専用ザクの速さもしかり。今観ても、不慣れでもたついているガンダムと、鋭い動きのザクの対比が素晴らしい。


工夫の極みは、最後のガンダム対ジオング戦。まず、ジオングが未完成で脚がついていないという設定。秀逸なアイデアだ。そして、離脱したジオングの頭部を、ガンダムがビームライフルで撃つシーン。ファーストガンダムでイラストを1枚描くとしたら、最初に挙がる画だろう。アニメ史に残る名シーンである。


ガンダムが頭部(メインカメラ)を破壊されていることと、アムロが脱出してガンダムが無人で目標まで歩いて行くことに、圧倒的な独創性がある。巨大ロボットアニメでは、ロボットは人間と同等のキャラクター。主人公ロボットが頭部無しの状態で戦うなどあり得ない。そして、パイロットとロボットは一心同体。最後の敵を倒すラストショットがパイロット不在の自動で行われるのも、あり得ない。


「モビルスーツは兵器であって、スーパーロボットではない」と言いつつも、それまでの戦闘シーンはチャンバラの要素が強く、人間同士が戦っているかのようであった。ところが、最後の最後に来て、機械としてのガンダムを描いた。そして、それが最高に魅力的だった。「なんだよ、アムロが撃たなきゃダメだろう、つまんねー」なんてのは極めて少数意見だろう。


ファーストガンダムにはモノを描くとはどういうことかが、ぎっしり詰まっている。私が今まで観たアニメで1、2を争うほど本作が好きなのも、モノが魅力的に描かれているからだと思う。近年、ほとんど忘れられているが、モノを描くことには多くの可能性が残されている。若い人や女性層にもアピールできるやり方もきっとある。