【パソコン歴史浪漫】30 ●キーボード7段論 | サンロフトの本とテレビの部屋

【パソコン歴史浪漫】30 ●キーボード7段論

【パソコン歴史浪漫】30 ●キーボード7段論


パソコンのキーボードは、時代とともに変化してきた。
キーのスイッチは、メカニカルからメンブレンに。深いほど快適と言われたキーストロークも、浅い方が標準になった。キートップ形状も、中央が丸く凹んだタイプから、左右だけ高いシリンドリカルへ。さらに、最近はまっ平らなものが増えた。
キートップの角度も変わった。奥へ行くほど階段状に高かったのが、指の角度に合わせたスカルプチャーや、中間的なステップスカルプチャーが一般化した。しかし、最近では手前の段も奥の段も、全く同じ高さのものが増えた。
デスクトップ型が主流だった時代は、ハンドヘルド、ラップトップ、ノート型用キーボードの妥協と見られていたものが、ノート型が主流になるとこちらの方が常識となった。そして今、デスクトップ機が逆輸入する形である。
……という話を、以前も書いた。


キーボードを構成するキーも変化してきた。
機能キーの増加である。ワンボード時代のフルキーボードには、機能キーはほとんど無かった。TK-80BSには、BREAK、英記号、まっ消、復改、後退、カナ、カナ記号の7つしか無い。
PC-8001になると、SHIFT、HOME CLR、カーソルキー、GRAPH、CTRL、STOP、ESC、INS DEL、ファンクションキー等が加わって、計18キー。PC-8801では加えて独立カーソルキー、TAB、CAPS、HELP、COPY、ROLL UP、ROLL DOWN。
日本語(漢字)入力が可能になると、さらに変換、無変換、全角半角等が加わる。これで十分かと思いきや、Windows時代には、IBM PC/ATのALT、SCROLL LOCK、PRT SC、NUM LOCKも含め、Windowsキー、メニューキー、カナ・ローマ字キー等が出てきた。アプリ起動や音量調節等のメディアキーというのまである。
しかしながら、1980年代初頭でもオフコンや企業向け高級パソコンでは、多数の機能キーを備えたキーボードが珍しくなかった。機種名は失念したが、何かの本で全122キーのものを見たことがある。現在のフルキーボードでも109キーである。


さて、皆さんのキーボードは何段だろうか?
メディアキーを除けば、ほとんどの人が6段だと思う。しかし、これも現代の常識でしかない。
TK-80BSは5段で、最下段はスペースキー(スペースバー)1つしかない。IBM PCの83キーボードも5段だった。通常フルキーの上に並んでいるファンクションキーが、フルキー左に2列5段に収まっている。
単に昔はキーが少なかったという話ではない。
富士通FM-8、FM-7等はファンクションキーや(テンキー上部)のカーソルキー2段に並び、全7段配列になっていた。親指シフトも7段である。フルキーの下が2段という異色の配列だ。ラップトップ型のパーソナルワープロでも同じである。これは、単なる偶然だろうか?


6段にせよ7段にせよ、キーボードの進化にはもっと別の可能性もあったはずだ。フルキー4段に手前と奥に1段ずつという形態は、絶対のものではない。
フルキー手前を2段にすればALT、CTRL、変換キーの配置にもっと自由度が生まれるし、カナ4段の上に数字1段の5段フルキー配置もあり得た。
ミニノート等(日本ではデスクトップ機でさえ)キーボードの幅がネックになる時は、広いキーピッチのまま機能キーをすべて下2段に配置するのも一つの方法だ。今さらやるのは反発が強いだろうが、10年後には常識が変わっているかもしれない。


そもそも、キー配列には疑問が多い。
フルキーの1段目(一番奥)と2段目ではキー半個分右へ、3番段目ではわずかに右へ、4段目ではまた半分右へズレる。この根拠は何なのだろう?
1980年代初頭までは、MZ-80K系や50音配列キーボードはテンキーのように並んでいた。
パソコンの、いやミニコンや汎用コンピュータの端末、テレタイプ、穿孔機等のキーボード配列がタイプライタを流用したため、今日のいびつな配列に結びついたのではなかろうか?
フルキーの並び順や機能キー、全体の配置等、キーボードの大きな改革はすべて挫折してきた。もはや、変わることが出来ない気もするが、キートップの雰囲気はずいぶん変化した。この先、大きな変革が起こるのかもしれない。


関連ページ  『TK-80BS』