【書評】最高に楽しい[間取り]の図鑑/本間至/エクスナレッジムック | サンロフトの本とテレビの部屋

【書評】最高に楽しい[間取り]の図鑑/本間至/エクスナレッジムック

玄関、階段、キッチン等、テーマ別に間取りの工夫を解説した本である。
同様の趣向の単行本や住宅雑誌の記事はこれまにでもあったが、この本は異質だと感じた。すべて実例なのに間取り図ばかりで、写真は小さなものが1~2枚ずつしか載っていないのだ。それぐらいの配分でないと十分な間取り解説はできない。


間取りによって、住みやすさからライフスタイルそのものまで決まってしまう。内外装や設備の良し悪しより重要なはずだが、ほとんど論議されることはない。間取りの出来不出来は、設計士のセンスに左右される有様だ。限られた面積に決まりきったパーツを配置するだけだが、間取りは囲碁や将棋のように奥が深い。


この本に登場する間取りには、そうした奥深さが感じられる。単なる間取り案の提示ではなく、実例から読み解くことが重要である。建てるまでに十分検討されているので、実例の方が完成度が高い。


だが、この本の解説が絶対とは思わない。人によって何を重視するかが異なるからだ。
子供部屋をオープンにするとか、吹き抜けをつくるとかいう大まかな話ではない。間取りのディティールの捉え方が、人によって異なるのだ。


私が同感なのは、トイレに関する考え方だった。最近のなんでもオープン・ブームで、LDK内にトイレや洗面所のドアがある住宅が増えたが、私は良いとは思わない。この本には、オープンであっても、LDKから近くても、トイレが気にならない手法がいくつも登場する。


少し不思議に思ったのは、前室や踏み込みのある和室をえらく推していることだ。私も小学校の頃、一時期前室に凝っていた。住宅雑誌や積水ハウスのカタログで見かけてからだ。半畳ないし2畳の板の間(畳敷きの場合もあり)、廊下と和室の間に置かれている。茶室なら水屋になるが、前室にそうした機能は無い(と思う)。


タイトルが示すとおり、内外装や設備を選ぶより間取りを考えるほうがはるかに楽しい。そう思う人が読めば面白い本である。


最高に楽しい「間取り」の図鑑 (エクスナレッジムック)/本間至
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