【パソコン狂時代】39 ●個性と欠点は表裏一体? SONY SMC-70
【パソコン狂時代】39 ●個性と欠点は表裏一体? SONY SMC-70
1982年12月発売。この時期にパソコンではなく「ソニーマイクロコンピューター」と銘打っている。SMCはその頭文字だと思われる。本体22万8000円。
出たばかりのX1やFM-7のスペックや安さを盛り込むのは不可能としても、すでに標準だった8ビット高級機のスペックを満たしていないのは、大きな失態だった。
単に欠点と言うことも出来るが、あえて失態と言おう。高校入学間近でリアルにパソコン選定中だった我々にとって、SMC-70はあまりにも引きが弱かったからだ。
あと1年早く登場していれば、ソフトの無さは致命傷にならなかったろうが、それ以外にもSMC-70が敬遠される理由はあった。
グラフィック機能は、640×200ドット8色(VRAM 48Kバイト)が前提だと我々は考えていた。根拠は無いが既存製品がそうだった。今だって、新型PCが1024×600ドットだったり65536色だったら買わないという人は多いだろう(自分の用途には十分だとしても)。
SMC-70のカタログには「16色表示グラフィック重視設計」とあるが、160×100ドット16色4画面、320×200ドット16色、640×200ドット4色、640×400ドット白黒(VRAM 38Kバイト。うちGRAM 32Kバイト)だった。
確かに、多少荒くても多色の方が自然に見えるし(高速ゲームにも有利)、漢字1000文字表示はビジネス用途だから白黒でいい。しかし、自分が買うとなると、それじゃダメなのだ。
純正ディスプレイは2モデル。いずれも、やや小さい13インチだ。
アナログ/デジタルRGB 13型トリニトロンカラーモニター・プロフィールファイン KX-13HG1(14万9000円)
キャラクターディスプレイ(640×400ドットグリーンモニター)CPD-120(6万2000円)
(本体の上にモニターを置く)モニタースタンド SMK-0091A(1万2800円)
640×400ドットとカラー表示が両立しないのが悲しい。他社製ディスプレイが使えればいいが、アナログRGBで縦400ドット対応モデルはまだ無かったと思う。
余談だが、ライバル機の一つ初代PC-8801はカタログ上640×400ドット白黒だが、ある裏技が存在した。私も忘れかけていたのだが「ワープロソフトJET-8801Aの編集画面って、白黒じゃなかったよなぁ」と思って、カタログを見直したのだ。
白黒モードのグラフィックの上に文字(テキスト画面)を表示すると、文字の色がグラフィックについてしまう。欠点でもあるが、利点でもある。
例えば、グラフィック画面に「かんじ」と描き、同じ座標に黄色の空白文字($20)を6文字表示したら、黄色で「かんじ」と表示されるわけだ。これ、JET-8801Aの変換時か範囲指定時に使われていた方法!
ワープロソフト等に限れば、PC-9801並に640×400ドット8色なのだ。SMC-70との差は歴然だろう。
さて、次へ進もう。
本体はキーボード一体型だが幅が狭く、テンキーが無かった。カーソルキーは十字型配置だが、フルキーの右上だ。
当時、テンキー無しは低価格ホビー機の象徴であった。たぶん開発者たちは気づいていなかったろうが、我々は外観に高級感を感じなかった。1980年頃まではテンキー無しの非ホビー機があったし、現代ではテンキー無しのコンパクトキーボードもカッコいいが、あの一時期に限ってはそうだったのだ。
CPUはZ80A、RAM 64Kバイト、ROM 48Kバイト(SonyBASIC+マシン語モニタ11.5Kバイト!)。BASICには、BASIC自体を拡張できるカスタムコマンドを備えていたという(詳細不明)。そして、CP/Mを当時出来たばかりの3.5インチFDで提供。8インチ標準FD、5インチ(5.25インチ)ミニFDに対し、3.5インチマイクロFDと呼んだ。
コンピュータとしての基本は、良くも悪くも普通である。が、FDDを使うとCP/Mマシンとなり、Sony DISK BASICもCP/M上で動作する。これは非凡だ。
中途半端なグラフィック、テンキー無しと来て、最後の欠点。ほとんどのオプションが理不尽なほど高価なことだ。
3.5インチマイクロフロッピーディスクユニット1ドライブ SMI-7011A(8万9000円)
同2ドライブ SMI-7012A(14万8000円)
外部(増設用)FDD1ドライブ SMI-7013(15万8000円)
(SMI-7011A&7013用)拡張用FDD SMI-7014(9万8000円)
これは、当時の5インチFDDと同程度。PC-8801より安いくらいだ。
しかし、拡張ものがいただけない。カタログに記載が無いが、拡張スロットは内部1、外部3らしい。いわゆる拡張ボードの基盤ではなく、薄いユニットをはめ込むように増設する(手順不明)。他に類を見ない個性だが、これが高コストの原因か?
8インチFDDコントロールユニット SMI-7016(7万8000円)
RS-232Cインターフェースユニット SMI-7301(3万9800円)
IEEE-488インターフェースユニット SMI-7032(5万9800円)
バッテリーバックアップユニット SMI-7080(6万8000円)
256Kバイト・キャッシュディスクユニット SMI-7050(12万8000円)
(自作基盤取り付け用)エクスパンジョン・モジュールケースキット SMK-7092(10個で6万9800円)
拡張ユニット(インターフェースユニット最大5ユニット搭載)SMI-7040(13万8000円)
(16ビットCPU 8086)スーパーチャージャー SMC-7086(19万8000円)
キャッシュディスクやバッテリバックアップは現代風で面白いが、バッテリはわずか7秒間なので無停電電源としても役に立たない。当時でも7秒で出来ることはないし、誤って抜けたコンセントをさし直すのがせいぜいだ。カタログの記載ミスであってほしい。
8ビットの16ビット化って、この時期では画期的だけどねぇ。後にMZ-2000やPC-8801用のボードが出るが、実用性は怪しかった。
あと、RS-232Cは普通標準装備だし、FDDインターフェースもすごい値段だし、自作基盤を挿すのにこんなに金がかかるし、さらに拡張ユニットの高さ!
他のオプションは、こんなところだ。
テンキーユニット(カーソルキー付き) SMI-7060(9800円)
漢字ROMキット SMK-0052(3万9800円)
ライトペン SMI-7061(4万8000円)
(テレビ接続用)ビデオシグナルコンバーター SMI-7070(1万9800円)
カセットレコーダー TCM-232(1万800円)
テレビ接続が相場の2~3倍という以外、相場である。
純正ソフトウェアも出ていた。FDDを使うとCP/Mマシンなので、英文アプリが多い。
CP/M SMW-7002(3万9800円)
CP/M86(16ビットCPUユニット用)SMW-7004(5万9800円)
Sony DISK BASIC(CP/M用)SMW-7011A(1万9800円)
ソニー・グラフィックスエディター(作図ソフト)SMW-7072(2万2800円)
ソニー日本語ワードプロセッサー SMW-7040K(4万9800円)
Super Calc(表計算)SMW-7025(4万9800円)
Record Management System(データベース)SMW-7031(6万9800円)
Record Generator(データベース)SMW-7032(8万9800円)
Data Base Management System(本格的データベース)SMW-7033(9万9800円)
Sony Writer(英文ワープロ)SMW-7041(2万4800円)
Letter Writer(高速英文カラーワープロ)SMW-7045(4万9800円)
Mail List(英文DM、宛名書きソフト)SMW-7048(4万9800円)
今回は思いがけず長くなった。
SMC-70は、地元ではどこかのショップに置かれていた。何かの展示会でも見た気がする。後継モデルSMC-777はオモチャっぽいカーソルキーを触った覚えがあるが、SMC-70は触れなかったと思う。どちらにせよ、あまり興味の無いシリーズだった。
MZ-2000もそうだが、とかく個性の強いパソコンは欠点も多いものである。FM-8、FM-7、PC-8801並みの機能を持った上で、個性や優位性があれば良かったのにと思う。両立は無理? いやいや、X1はやってのけた。