【パソコン狂時代】38 ●孤高のモンスターマシン、FM-11 | サンロフトの本とテレビの部屋

【パソコン狂時代】38 ●孤高のモンスターマシン、FM-11

【パソコン狂時代】38 ●孤高のモンスターマシン、FM-11


1982年11月、FM-7とともに登場したのが、FM-11である。
FM-11には3タイプあった。
FM-11EX(39万8000円)は8088/8MHz&68B09E/2MHz、CP/M-86&F-BASIC。FDD 1ドライブ(+1ドライブ追加内蔵)&外付2ドライブ可。簡易言語FMCALC装備。
FM-11AD(33万8000円)は68B09E/2MHz、F-BASIC。FDD&FMCALCはEXと同じ。
FM-11ST(26万8000円)は、FM-11ADからFDDを外し、ROM版F-BASICを搭載したものだ。
各モデルともZ80Aカードがオプションで、FM-11EXは、Z80A、6809、8088と、当時の主要CPUが全部使えたわけだ。


OSも、CP/M-86、MP/M-86、MS-DOS(!)、CP/M-80(要Z80Aカード)、FLEX、OS-9、F-BASICと、PC-9801以上に幅広くサポートされていた。
RAMはPC-9801と同じ128Kバイトだが最大1Mバイト。グラフィック機能は640×400ドット8色(専用ディスプレイ時は16色中8色)だが、2画面用意され192Kバイト。
滅びたと思われたバブルカセットも、128Kバイトの大容量でオプション提供。
この時点でMS-DOSをサポートしながら、FM-16βでCP/M-86を選択し、互換性の無いFM-RでMS-DOSに乗り換えるという迷走ぶりにユーザーは怒り、部外者は失笑した。


CPUのクロック等の情報はネット上で拾った。当時のカタログを持っているが、クロックは記されていない。後継モデルFM-11BSでは8088/8MHzだが、初代PC-9801は8086だが5MHz。本当にFM-11EXが8MHzなら、そうとう速い筈だ。実際に使った人によると、FM-7より遥かに速かったらしい。PC-9801のGDCに匹敵する仕掛けがあったのか?
さらに、GRAMがPC-9801の2倍(PC-9801E/Fと同じ)ある等、PC-9801に対する優位性をなぜカタログでアピールしなかったのか、大いに疑問である。


オフコンとの連携とFM-8のF-BASICソフトの継承がこの1台で行えるというコンセプトを伝えるのはいいが、スペック重視で宣伝しない姿勢はパソコンマニアの感覚からズレていた。
これほどのモンスターマシンを売れなかったのは、マーケティングの失敗である。FM-7が安すぎて、ホビー層が丸ごと流れてしまったのも要因だろう。
マニア向けだったパソコンが、ホビーユースとビジネスユースに二分されていったのは、ちょうどこの頃からだ。
市販ソフトの充実だけでなく、ホビーパソコンの低価格化と、ビジネスパソコンの高機能高価格化が大きな理由である。MZ-80K/CやPC-8001より、FM-11やPC-9801のシステムは遥かに高額だ。

1981年秋の段階で、NECがPC-6001とPC-8801のホビー&ビジネス2路線展開を発表したのは、先見の明があった。他のメーカーは単に入門用と高級機に分けただけであった。

この見方でいえば、高級機FM-8にサウンド機能を加えた上に低価格化し、FM-7としてホビー用に転換したのはミラクルだ。


地元では、放送会館にFM-11があったと思う。いや、二の宮の方のどこかかも。記憶がはっきりしないのは、興味が無かったからではない。触れる状態になっていなかったからだ。たまたまかもしれないが、残念である。


FM-11の敗北は、68系8ビットでいくのか、80系(86系というべきか)16ビットでいくのか、方向性が定まらなかったせいだと言われている。
素晴らしい性能であっても、スペックだけ見たユーザーには「8ビットから脱却できない」と映った。世間に流れる「8ビット=古い、16ビット=新しい」というメッセージに惑わされ、我々は本質を見抜けなかったのかもしれない。8ビットゆえに敬遠されたMZ-2500の例もある。


FM-11AD系は冗談でなく本当に8ビットから抜けられず、FM-11AD2、FM-11AD2+とマイナーチェンジを重ねることになる。孤高のモンスター8ビットマシンは孤高のOS-9を積み、カリスマ性を帯びていく。あまり売れないからこそのカリスマ性だ。NECのPC-100のような存在といえる。