【書評】誰も書けなかったパソコンの裏事情 | サンロフトの本とテレビの部屋

【書評】誰も書けなかったパソコンの裏事情

1998年12月発行である。普通、パソコンの世界で12年も前の本なんてまったく役に立たない。しかし、この本は1970年代末の黎明期からWindows 98時代までをフォローしているので、パソコンの近代史はこの1冊あれば十分だ。なぜなら、その後の変化は時代の変化のみで、どんなパソコンが出てきたかを論じてもほとんど意味が無いからである。
98年からこっち12年のパソコン史を熱く語れる人がいるとすれば、我々オールドファンより数段マニアだと言える。


まず、「天才パソコン」と「平凡パソコン」の分布図が面白い。縦軸に天才度~平凡度を、横軸に売れなかった~ベストセラーを取り、主なパソコンを配置している。
そして、主なパソコンがメーカー毎に並べられ、当時の裏事情が書かれている。NEC、シャープ、富士通の順ではなく、富士通、シャープ、NECなのが面白い。


当時を知るエンジニアならではの内容で、どれも貴重な証言である。特に著者が関わったシャープのエピソードが興味深い。MZ-80Kは発表後、カセットテープの信頼性を検証しているうちに、先に日立ベーシックマスターが売り出されてしまったとは、初めて知った。
時代が下るほど、発表時期と発売時期のズレとか、何年発売かは分かっても何月発売かは分からなくなってくるものだ。


21世紀のパソコンの予想も、今読むと面白い。当たりあり、ハズレあり。
「HDDが10年後に1Tバイトになる」は、大当たり。インターネットの普及発展も大当たり。SuperFDやHiFD(大容量フロッピーディスク)が普及の可能性ありで、DVDの普及は当分難しいはハズレ。CPUはCISCがRISCに取って代わられるは、CISCのRISC化&RISCのCISC化の現状を見ると半分当たり。でも、x86アーキテクチャが大勢を占めている点ではハズレに近いかな。


ただ、難点が一つ。パソコンのスペック等にミスが多いのだ。ちょっとした記載ミスもあれば、なぜ? と目を疑う珍妙なミスもある。
本文では、PC-8801がFDD2台装備で22万8000円のハイ・コストパフォーマンスにFM-8やMZ-80Bが苦戦したとか(FDD別売りだし割安でもなかった。PC-8801mkIIと混同?)、X1の色が黒・赤・シルバー(黒→白)でMS-DOSを採用とか(何か別のものと錯覚?)、FM-7とPC-8801が同時期発売とか(FM-7が約1年遅い)。
各機種の写真とスペックを記した欄でも、PC-8001にミニFDD標準搭載で16万8000円とか(FDDインターフェースすらオプション)、PC-9801VXで98シリーズで初めて漢字ROM標準装備とか(PC-9801Fから標準)、細かいこと言うとVX2とVX21の混同どか。

誰も書けなかったパソコンの裏事情/宮永 好道
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