【パソコン狂時代】31 ●最強プリンタPC-PR201までの長い道のり | サンロフトの本とテレビの部屋

【パソコン狂時代】31 ●最強プリンタPC-PR201までの長い道のり

【パソコン狂時代】31 ●最強プリンタPC-PR201までの長い道のり


PC-9801シリーズがビジネス機として成功した最大の要因は、プリンタにあったのかもしれない。先日、PC-8801から1年後という発売時期にあったと書いたが、結局どの分析も後付けに過ぎない。あれもこれも、一つの説と捉えて欲しい。


PC-9801登場時、カタログ写真ではPC-8801純正のPC-8822(23万4000円)が使われていた。
PC-8822は、PC-8801時代最強の18ピン漢字プリンタであった。PC-8801が発表された1982年9月、まず、PC-8821+オプション漢字ROMとしてアナウンスされ、後から漢字ROM内蔵のPC-8822が追加された。ただ、実際の出荷開始時期に差があったかどうかは不明だ。
当時はドットインパクトプリンタが主流で、特記なき限りこの印字方式である。また、用紙サイズは10インチ幅80桁が主流だ。


年明けて1983年に至っても、漢字プリンタはまだメジャーではなかった。実売10万円の非漢字8ピン、9ピンプリンタでも、本体の漢字ROMを使えば漢字プリンタと同じ16ドットの漢字が印字できたからだ。本体漢字ROMの16ドットのフォントパターンをプリンタに転送する時間もかかる(グラフィック印刷モード)が、仕方ない。
8ピン、9ピンでも、半ドット分改行して2倍の精細印字が可能であった。EPSON MP-80K等の漢字プリンタも、プリンタエンジンは非漢字プリンタと同じだったのだ。
ズレを防ぐため往路のみの印字になるため、18ピンの往復印字モードの1/4の速度になるが、当時はこれも仕方ないと思われていた。


そんな事情から、PC-8822はさほど注目されなかった。しかし、18ピンゆえの漢字の高速印字と、1度に漢字全体を印字するために鮮明さも際立っていた。
ともあれ、PC-9801が出た1982年10月から7ヶ月間、このPC-8822が相棒となる。


1983年5月、NECから(パソコン用としてはNEC初の)24ピン漢字プリンタ「PC-PR201」が発売された。29万8000円という破格の価格設定に、誰もが驚愕した。
EPSONからも24ピンプリンタ「MP-130K」が出ていたが、JIS第1水準漢字非漢字で51万円、JIS第1、2水準で55万円だった。180dpiという超高密度のプリンタエンジンに加え、24ドットフォントを収めた漢字ROMが非常に高価であった。MP-130Kの発売時期は不明だが、各誌1981年12月号には記載無く、1982年11月付カタログには載っている。EPSONの社史すら、1984年のUP-130KをMP-130Kと誤記するほど、今となってはもうよく分からない。


PC-PR201もMP-130Kも、ビジネスユースを意識した16インチ幅136桁だった。
実は、PC-PR201は24ピンといっても漢字22×22ドットで、同時にアンダーラインを印字出来るようになっていた。解像度は160dpiとEPSONに劣っていたが、24ピンで明朝体が印字できるという点から同等と見なされた。価格差がありすぎ、細かい優劣は無意味とも言えた。
16ドットフォントは漢字の点画に一部省略があり、公文書には使えなかった。しかし、24(22)ドットなら省略が無く(一部怪しい漢字があるが)、ビジネスでは圧倒的優位だったのだ。


24ドット漢字ROMといえば、後のIBM 5550(ROMベースじゃないけど)、PC-98XA、X68000等に限られた話。PC-9801シリーズは24ピン漢字プリンタが必須となっていった。
1984年7月、PC-PR201を10インチ幅80桁にサイズダウンしたPC-PR101(24万8000円)が追加される。一般向けにもワープロソフトが普及したという判断だろう。
熱転写方式の24ピン漢字プリンタPC-8825も出て、PC-8801mkII時代に入るとPC-8801シリーズでも24ピン漢字プリンタが普通になっていく。


NECが純正でPC-PR201を出したことが、初代PC-9801~PC-9801E/Fの大きなアドバンテージになったのは疑う余地が無い。
EPSONのようなプリンタメーカーならPC用、FM用、MZ用と対応機種を広げるが、NECはPC-8801/9801しかサポートしない。ライバル機がPC-PR201を使えないのは大きなダメージだった。
原則としてプリンタは同じセントロニクス・インターフェースなので、実際はケーブルの端子の問題だけだ。純正品が無くても、サードパーティから色々なケーブルが出ていた。あとは、ワープロソフト等がそのプリンタに対応すればいい。
昔は、プリンタのマニュアルに全コマンドの解説が載っていたので、最悪、自作したらいい。私もX68000時代、NEC NM-9950IIと、CANON BJ-10vの印字プログラムを作った。


最初は絶賛されたPC-PR201だが、24ピン漢字プリンタが普通になってくると、一つの欠点がクローズアップされるようになる。フォントデザインのまずさだ。PC-PRシリーズはモデルチェンジを続け一時代を築くが、途中で1回フォントデザインが改定されている。
うちの高校にもPC-PR201が入って、放課後、全文字印字を行ったのだが、その時はデザインのまずさは感じなかったなぁ。あの頃はまだ無頓着だった。