『20世紀音楽(光文社新書272)クラシックの運命』宮下誠著 光文社 1050円
『20世紀音楽(光文社新書)クラシックの運命』宮下誠著 光文社 1050円
分厚さと大仰なタイトルに、思わずおよび腰になった。小難しい現代音楽論が、延々と続くのではないか? いや、それでも、現代音楽は興味あるテーマなので、手に取った。中を見てみると、意外にもその手の話はサラっとしか書かれておらず、拍子抜けした。
時代別、国と地域別に、20世紀の作曲家の作品が解説されているだけなのだ。無論、時代背景等も書かれているが、『レコード芸術』誌等の記事と変わらない。
特に、通常、普通のクラシック音楽に分類されているマーラー、ショスタコーヴィチ、プロコフィエフ、ストラヴィンスキー、バルトーク、ドビュッシー、シベリウス、ニールセンといった、おなじみの面々については、いまさら、この本でフォローすることも無いと思う。
いや、シェーンベルク、ベルク、ヴェーベルンのような、コテコテの現代音楽だけが20世紀の音楽ではないと言いたいのだろう。
確かに、映画やテレビでよく使われるオルフの「カルミナ・ブラーナ」などから、現代音楽の匂いは感じない。
全部読み通すというより、20世紀の作品を聴くためのガイドブックとして役立ちそうだ。取り上げている作曲家の人数が多いので、解説されている作品そのものは少ない。だが、よく耳にしどこでも手に入る通俗名曲から、どこを探しても見つからない珍曲まで網羅されている。
それにしても、20世紀でも交響曲ってそんなに重要なのかな? 大きくページが割かれ、ショスタコーヴィチなんて全曲解説つき。ショスタコだったら、やっぱジャズ組曲でしょ。ま、同意は少ないだろうけど。彼は交響曲より映画音楽とかの方が面白い。
20世紀音楽の特異性は、バラエティの豊富さだろう。クラシックといえば、ドイツ・オーストリア。だが、時代を下るごとに東欧、北欧、イギリスと、ヨーロッパ全域に広がっていく。20世紀に入ると、北米、中米、南米、アジア等、全世界からクラシック作曲家が誕生してくるのだ。だから、面白い。
この本では、アジア、とりわけ日本人作曲家についてほとんど記述がないのが寂しい。
以下、雑談。
私も現代音楽を数々聴いてきたが、依然として苦手意識が克服できない。
聴くのは、19世紀末の後期ロマン派から民族主義の時代の作風を踏襲する、20世紀初頭の保守的な作品ばかりだ。
ベリオ、ペルト等は美しいとは思うが、何度も聴きたいとは思わない。北欧の無名(失礼)作曲家は北欧レーベルから色々出ているし、旧ソ連の無名(また失礼)は当時の国策によって結構録音があったりするが、やっぱり、聴きにくい。
J-POPの世界でも、数年前、1970年代っぽい、フォークソングっぽい曲が色々流行ったけど、70年代をリアルタイムで体験した私なんかからすると、あまりピンと来なかった(何曲か好きな曲はあるが)。
それと同様に、現代音楽のロマン派風作品も、どこかピンと来ないのだ。
本の内容から外れるが、20世紀音楽についての率直な感想である。