池田大作「人間革命」4 | 世界文学登攀行

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世界文学の最高峰を登攀したいという気概でこんなブログのタイトルにしましたが、最近、本当の壁ものぼるようになりました。

1949年は、「経済安定九原則」いわゆるドッジ・ラインの実施により、日本の経済界は激動に巻き込まれたそうだ。
その中で、軌道に乗っていた戸田の事業も苦境に陥ることになった。
苦難の日々の中にあって、戸田という人物が深い部分から描かれる。
読み応えがあり、夢中で読んでしまった。

また、この苦難の日々に、戸田を支える弟子、山本伸一の奮闘も語られる。
伸一の弟子の道に徹する生き様に、強い感動を呼び覚まされた。

この山本伸一というのは、著者が自身をモデルにした人物であり、実際には創価学会では戸田の後を継いで第3代会長になった人物である。
「人間革命」は、創価学会の歴史が描かれたものであるから、正直に言うと、戸田―池田という師弟の系譜を正統化するための誇張もあるだろうし、物語の時代からは20年も30年もあとになって書かれた作品であるから、遡って文脈を整理している部分もあると思っていた。
その辺の脚色に対しては、敏感になりながら読んでいこうと気負っていた部分はある。

しかし、4巻の圧倒的な感動には抗いがたく、そういう読み方をするのはやめようと思った。
現実の世界に、創価学会も、戸田城聖氏も、もちろん著者である池田大作氏も実在する。
だが「人間革命」は、学術的な歴史書ではなく、物語の世界なのであるから、別に現実にある組織や人物と無理にリンクさせる必要はないからだ。
「人間革命」は実在する組織や人に題を取った小説である。それで十分だと思う。

さて。
ここからは、自身の中に残しておきたい言葉などを書いて終わりにする。

「新しい仕事というのは、自分たちの、これまでの枠を破るところから出発するもんだ」(P41)

「近代の淵源はルネサンスであるが、人間復興の精神は、社会の背後に、人間がはつらつと巨大な姿で現れた事実に由来するといえよう。中世の封建社会に、全く埋没していた人間が、地球の重ささえもつ存在であることに気づいたのである」(P72)

「敗れることは、人生にも、事業にもあるだろう。しかし根本的な勝敗は、一生涯を通してみなければ、論ずることはできない」(P180)

「書物は精神の滋養であり、苦闘に立ち向かう勇気の源泉となる」(P183)

「組合はつぶれ、学会の理事長も辞任したというのに、先生は、こうして懸命に将棋盤をにらんでいる。先生の姿を見ていると、すべての苦境が、嘘のようにも、悪夢のようにも思える。これが、先生の本然の姿なのかもしれない。
 自分も、今、苦しみ悩んでいる日々の活動は、仮の姿なのかもしれない。いずれにせよ、本然の姿だけは、いかなる時にも失うまい」(P284)

「御書には、『一念に億劫の辛労を尽せば本来無作の三身念念に起るなり所謂(いわゆる)南無妙法蓮華経は精進行なり』との御文がある。
 ――永劫に重ねるがごとき辛労を、一瞬一瞬に尽くしていくならば、本来、自分の生命に備わっている『無作の三身』すなわち本源的な仏の生命が、瞬間瞬間に起こってくる、との仰せである」(P346)