カフカ「城」3 | 世界文学登攀行

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世界文学の最高峰を登攀したいという気概でこんなブログのタイトルにしましたが、最近、本当の壁ものぼるようになりました。

P201-300

カフカワールド全開。
としか形容できない話が延々と続く。

読み応えもあって面白いんだけど、感想が、記事の更新のたびに上の2行だけというのもいかがなものかと思うので、内容に少しだけ触れながら物語について書いてみる。

これまで、主人公のKは「城」との闘いが一つのテーマだったが、ここにクラムという人物が大きくクローズアップされてくる。
初登場は手紙である。
「署名は、読みとれなかったが、『X庁長官』という職印が捺してあった」(P51)
のちにこれがクラムという署名であることがわかるが、クラムは城に属する、高い役職をもった人間であることがわかる。

その後、Kはクラムに会うのだが、それも小さな覗き穴からのぞくという体裁である。
そして、クラム氏を見かけるのはこれまでのところこれ1回なのだ。
今読んでいるところは、自らの人間関係に複雑に絡んでいるクラムに会うためにKがあらゆる力を使って奮闘する様子が描かれる。

今回はクラムのことだけ書くのだし、物語の雰囲気も味わってほしいので、Kが覗き穴からクラムを覗いた時の、長い長い文章を引用してみたい。

「この小さな覗き穴は、あきらかに隣室の様子を見るためにくり抜かれたもので、ほとんど部屋全体を見わたすことができた。部屋の中央におかれた仕事机をまえにして、快適そうな、まるい安楽椅子に腰をかけ、眼のまえにぶらさがった電燈の光にまぶしいほど顔を照らしだされているのが、まさしくクラム氏であった。中くらいの背たけをして、ふとった、鈍重そうな男である。顔にはまだしわができていないが、頬は、すでに年齢の重みでいくらかたるんでいた。黒い口ひげは、長くぴんとはねていた。ななめにかけた、反射のつよい鼻眼鏡に隠されて、眼はよく見えない。クラム氏がまっすぐ机のほうを向いて腰をかけていたら、Kにはその横顔しか見えなかったであろう。ところが、Kのほうにからだを半分以上向けていたので、顔がすっかり見えた。クラムは、左肱(ひじ)を机につき、ヴァージニア・シガーをもった右手を膝の上においていた。机の上には、ビールのジョッキがひとつ置いてある。机の枠が高いので、なにか書類でものせてあるのかどうか、はっきりとはわからないが、どうやら机の上にはなにもないようにおもえる」(P78-79)

そして、不思議なところは、この時クラムは眠っていたと聞かされるのだ。
Kは叫ぶ。「眠っているんですって!さっきあの部屋をのぞいたときは、ちゃんと目をさまして、机にむかっていましたよ」(P85)
それに対する説明。「いつまでもあんなふうにすわっているのです。あなたがごらんになったときも、すでに眠っていたのです。でなかったら、あなたにのぞかせなんかしなかったでしょう。彼は、いつもあんな格好で眠るんです」(P85)

これがクラムの登場シーンである。
書き写しながら、独特な雰囲気の物語だなと改めて思う。