阿部輝夫「セックスレスの精神医学」 | 世界文学登攀行

世界文学登攀行

世界文学の最高峰を登攀したいという気概でこんなブログのタイトルにしましたが、最近、本当の壁ものぼるようになりました。

実は私、新婚なわけなのだけど。
お互い40歳過ぎてて、交際期間もなくて初婚となると、現実問題いろいろ不具合も出てくるわけで。

まだ深刻な何かがあるわけではないのだけど、参考程度に読んでみた。

著者はメンタルクリニックの開業医であり、臨床現場からの多くのケーススタディを元に本書は構成されている。
そのため、専門家からの見地を盛り込んだ一冊であるにもかかわらず、非常に読みやすかった。

セックスレスにいたるまでには様々な要因があり、精神的なものが理由である場合には、第三者からはささいなことに見えるようなものも、しばしば深刻な結果をもたらすことになりうることなど、ふむふむなるほどと思うことが多かった。

2つだけ、心に残しておきたい言葉を残しておく。

「虫歯を放っておく人はいないでしょう。セックスの問題も一緒です」(P14)

「セックスはパーソナルな問題であり、きわめて密度の濃いコミュニケーションのひとつである。それが円滑にできなくなるというのは、心に頑なな結び目ができてしまうことではないだろうか」(P201)

本書は2004年刊行であり、あとがきで最近急増しているという性同一性障害について触れていることからも、だいぶ古いものだと思う。
人々の性に対する感覚も当時とはかなり変わっているであろうし、もう少し学術的に語るべきシーンも多くなっているに違いない。

ただ、本書を読んで、男女が当然に営むはずの行為であるセックスについて、一歩引いたところからあれこれ考える契機になった。