会田大輔「南北朝時代」 | 世界文学登攀行

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世界文学の最高峰を登攀したいという気概でこんなブログのタイトルにしましたが、最近、本当の壁ものぼるようになりました。

「南北朝時代」
――五胡十六国から隋の統一まで

「南北朝時代」といっても、日本の室町時代初期の話しではない。
中国の5~6世紀。具体的には北魏が華北統一を事実上果たした439年から、隋が中華を再統一する589年までを指す。
と言って、ああ、あの時代かとわかる人はどのくらいいるのだろうか。

ざっくりというと、南北に分裂した中国において、異民族支配も含めいくつもの王朝が交代し、そしてまた一つの中華に統一されるまでの時代の話しである。

こうして本書の感想を記そうと思っているのだが、何をどう書いていいのか少し困る。
王朝交代の歴史ということは、乱世の話しであり、エピソードには事欠かない。
印象に残る話も多い。
ただそのエピソードをいくつか抜き出して、はい終わりとするにはもったいなすぎるのだ。

結論から言う。
硬めの新書なので、小説のような情緒豊かな記述はない。
どちらかというと当時の社会情勢から何が起きて、どういう制度が創出されて、そして文化・宗教が生れたというような淡々とした記述が多い。
歴史というのは、人間社会の描写であるから、余計な脚色なんてなくても、事実の積み上げだけで十分に面白いらしい。
時代のダイナミズムを感じながら、僕は珍しく一気に読み終えた。

ほとんど知らない人ばかりが目まぐるしく舞台に入場し、そして退場していく。
読んだらどうせ忘れてしまう物語の数々。
だからこそ、面白かったなあ、という感情だけがすがすがしく残っている。

歴史を学ぶということは知識を増やすというだけのためではない。
人間の存在、核心に触れる体験をすることだ、と思う。
ここまで書くのに、書いては全部消してというのを結構繰り返した。
歯がゆい気持ちもあるけれど、伝えたいものがある、というだけで少し熱くなっている。