定年後
――50歳からの生き方、終わり方
僕はまだ40歳にもなっていないので、定年なんてまだまだ先だと思っているのだけど、それでもこの本はすごくためになった。
会社という枠の中で、自分の役割を果たすことだけを考えて生きていると、いざ、定年となり、所属する組織も肩書きもなくなってしまったあと、自由にできる時間がたくさんあるにも関わらず、個人では社会とつながれず、孤独の悲哀を感じるようになるということは、容易に想像ができる。
今は寿命が長くなっているから、会社が定年になる60歳を越え、健康に過ごせる75歳も越えて、それでも生きていかなければいけない。やがて老い、病み、死んでいく自分から逆算すれば、人生の新たな像が、そこに現出せざるを得ないであろう。
巨大な社会という機構の中で、単なる歯車のように、自分を、日々の時間を浪費するような生き方をすることはとてももったいないと思った。
著者は働き盛りの四十代で一度心を病み、長期に休職をした経験がある。
その時にいろいろと考えて、新しいことをはじめた。
60歳で定年を迎えたあと、それが今の仕事につながっているようだ。
著者はその経験もあって、定年を迎える前の50歳くらいから、何かはじめてみたらいいよ、と言っている。
できれば、それは、少しでもいいからお金になるようなことであれば、社会の役に立っているという実感につながるし、自分を客観的に評価する基準にもなるとも。
定年後に、新しいことをはじめようとする人は少なくない。しかし、自分の得意技(専門性)を磨こうとする人は多いけれど、社会の要請や他人のニーズに応えようとする意識がある人は少ないという。社会とつながっていくためには、その意識こそが重要なのだということは、目からウロコであった。僕にも会社員根性が染みついているのであろう。
この本は、定年後というものを考えてみましょうというワークショップに参加するような気持ちで読めた。
定年後を考えることは、今の生き方を見つめることであり、これからどういう生き方をしたいかを考えることである。
この本には、たくさんの問いがあった。
それだけに良い本であったと思う。
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