デフォー「ロビンソン・クルーソー」2-2 | 世界文学登攀行

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世界文学の最高峰を登攀したいという気概でこんなブログのタイトルにしましたが、最近、本当の壁ものぼるようになりました。

 

P101-200


まだ物語は全然序盤なのだが、ここまで読んで思ったこと。
上巻のテーマが個人だとしたら、下巻のテーマは社会、というとらえ方をしてもあながち間違いではないと思う。


洗練されたスペイン人、善良なイギリス人、社会の規律を守れないイギリス人、蛮人、という人たちが象徴的に登場人物として現れるが、それは当時の海洋を越えた世界進出の縮図なのかな、という気がする。
ちなみに、ロビンソン・クルーソーの下巻部分の発刊は、1719年イギリスでのことである。


上巻がそうであったように、下巻で描かれる物語世界も、寓意的なものなのであろう。
もしかしたら、さっき書いたような世界情勢とリンクするのかもしれないし、しないのかもしれない。
物語社会は独立しているわけだし、どちらでもいい気がする。


また、終わりの方には、カトリック司祭が出てくる。
司祭が、ロビンソン・クルーソーに「私の服装から私がどんな宗旨の者かお分かりだと思いますが、私もあなたの国籍からあなたの宗旨が何であるか、見当がつきます」(P196)と、同じキリスト教の中でも、相容れない「宗旨」という言い方をして、今後の議論を予告しているように思う。
宗旨、宗派、というのは、まさに文化を内包した社会であると思う。
人が集まれば力になる。力を持てばそこに力学が発生して動き出す。


ロビンソン・クルーソーが独力で到達した宗教観が今後どのように展開していくのかというのは、興味深いものがある。


と、ブログに感想を書くときはどうも固くなってしまうけれど、物語自体は闊達でとても面白い。
数百人の蛮人の襲撃を二十数人のヨーロッパ人で撃退する描写なんかは、目の前で展開するかのように生き生きと描かれている。