アンニョンハセヨ~
韓国ドラマに限ったことではないですが、他国の作品を視聴していると、その国の文化や歴史に無知な自分を痛感し、少しでも知っていたらもっと作品を楽しめるのに!と思うことがあります。
自分は、2年前の今頃はBTSも知らなかった韓流ビギナーなので、余計にそう思うのかも。
そんなわけで、特に第4次ブーム以降に発行された韓国エンタメ関連本を見つけると、つい手に取るようになりました。
本書は、ドラマよりも音楽やアイドルについての言及が多いので、軽く読み流したページもありますが、ドラマに関連して印象的だったことをメモします。
※本書は図書館で借りました。
韓国エンタメはなぜ世界で成功したのか
著者:菅野 朋子
発行所:文藝春秋 (文春新書 )
発行日: 2022/1/20
■Kエンタメの歴史と三大音楽事務所
ほかの本でも解説されていますが、Kエンタメのターニングポイントは、ざっくり言うと下記の3点に絞られるようです。
1.民主化(1987年)
表現の自由。
2.経済危機(1997年)
内需の製造業から、コンテンツ輸出へシフト。
3.デジタル社会化(2000年代~)
SNSマーケティングや、世界共通のプラットフォーム。
BTSの世界進出成功のカギとなったのは「トランスメディア戦略」。
さまざまなコンテンツや媒体で断片的に情報を表現することで、ファンがそれらを集めてつなぎ、解釈・共有する手法だとか。
個人的には「賢い医師生活」のマーケティングも、まさにもそれに当てはまるのではと思いました。
また、90年代までのアーティスト発掘はテレビ局のオーディションやスカウトが中心で、専属タレントへのギャラは局が支払っていたというのが意外でした。
現在は事務所が養成する「インキュベーションシステム」が主流で、契約期間は最長で7年に短縮されているそうです(昔は10年以上の契約もザラで“奴隷制度”と言われたらしい)。
そして、K-POPファンならイロハの「イ」未満の話だと思いますが、今回ようやく三代大音楽事務所を理解しました。
●SM(95年~)
H.O.T.、BoA、東方神起
韓流ブーム初期をけん引。
●YG(96年~)
BIGBANG、BLACKPINK
ソ・テジ・ワ・アイドゥルの元メンバーが設立。
●JYP(97年~)
TWICE、NiziU。
代表はパク・ジニョン。
これに加えてBTSが所属するHYBE(ハイブ)が、とんでもない売り上げ。
「愛の不時着」で、南朝鮮に来た第5中隊員のイケメン(イ・シニョン様)がスカウトでもらった名刺の「SN」「YJ」「JYB」は、まさに三大事務所をパロディっていたということか
元ネタがわからなくても理解できたシーンですが、ちゃんとわかったいたらもっと爆笑できたんだろうな
あのサウナのシーン、5人の会話がめっちゃ面白かったですよね
また、事務所の役割やスキャンダルに関するパートでは、先日視聴したばかりの「流れ星」の元ネタを読んでいるようでした(現実は「流れ星」の世界とは程遠くて引いた……)。
■「応答せよ」シリーズに登場するアーティスト
以前の投稿でも書いたかもしれないけど、H.O.T.は韓国において初めての「アイドル」だそうです。
そして、いわゆる演歌的な大衆歌謡曲が主流だった音楽業界において、92年にデビューしたソテジは、新しい音楽の地平を開いた存在で、韓国の音楽史を語るうえで「ソテジ前か、ソテジ後か」と言われるほどのエポックメイキングだそうです。
それらを知ったうえでドラマを思い出すと、1997のシウォンたちがアイドルに夢中になった背景がよくわかる!
そして、主に1975年生まれの1994のキャラクターは、民主化されてから思春期~青春時代を迎えた最初の世代で、かつてない斬新な文化を享受したことになるんですね。
当時、1994ユンジンたちの世代がソテジの音楽を初めて聴いた時の衝撃を想像すると、あのドラマの空気感がより具体的に感じられます。
たしかサムチョンポのナレーションで「僕たちはあの時代、最先端の文化やテクノロジーを享受していた」という意味のフレーズがあったような。
さらに、ユンジンがショックを受けていたソテジ解散の理由が、軍事政権下時代からの名残だった検閲制度だったことも理解できました。
結局、検閲制度はソテジの解散から半年後になくなったそうです。
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後半は、韓流スターを切り口にした韓国社会における権力やフェミニズムの解説や、日本コンテンツへの反応の事例紹介が中心でした。
だから、「韓国ドラマをもっと理解するための本」という意味では、以前読んだ『韓国カルチャー 隣人の素顔と現在』はかなりお薦めです!(感想の投稿)
とはいえ、映画「82年生まれ、キム・ジヨン」は観たいと思っているので、今回はその前提となる情報をさらに得ることができました。
ではまた