アンニョンハセヨ~
「麗〈レイ〉〜花萌ゆる8人の皇子たち〜」 でハマったイ・ジュンギ氏を堪能したい一心で、わざわざ楽天vikiへ加入して、「悪の花」を視聴しました(12月3日にDVD発売だそうです)。
※画像は、韓国の番組公式より
■視聴時期
2021年11月
■スコア
3.8
■視聴方法
楽天viki
■放送開始年
2020年
■放送局
tvN
※以下はあくまでもkabo個人のたわ言です。マイナス点も挙げていますのでご容赦ください。
※ネタバレありです。謎解き要素があるため、ネタバレなしで視聴することをお勧めします。
■満足点・共感した点
1.“サイコパス”の描き方
主人公が実はサイコパスではなかったという展開が最も良かった。
個人的に、サイコパスを題材にした作品で一番がっかりするのは「サイコパスとされるキャラクターが、周囲の愛情や環境の変化でサイコパスを克服する(治る)」というオチ。
そのため「 サイコだけど大丈夫 」はかなりモヤモヤしたんだよなー。
自分は専門家ではないので断定できませんが、概ね「サイコパス=先天的で治らない」「ソシオパス=後天的で治る」と認識しているからです。
だから本作も途中までは、サイコパス設定の主人公がヒロインと出会ってからの14年間で、徐々に人間としての感情を取り戻す流れか?と、少しシラケた気持ちで観ていました。
ところが、実は本人はサイコパスではなく「周囲からサイコパスのレッテルを貼られた被害者」だったとは
専門家による誤診断というカラクリは少し無理があったけど、“本物のサイコパス”である父親からの洗脳に加え、閉鎖されたコミュニティの集団心理が仮想敵を作り上げたという、人間の闇の部分にめちゃくちゃリアリティがあって、本物のヒソンが立ち上がったことよりも怖かった
それを踏まえると、ジウォンに対して無意識に出ている笑顔に本人が気づいていないことと、自分はサイコパスだと思っているから必死に表情の練習をするヒョンスの対比シーンが切なかったな
2.最終回に凝縮された作品メッセージ
上記「1」とも関連します。
謎解きサスペンスではありますが、登場人物が限られているので犯人や協力者の目星がつきやすく、ラスボスは最終話の1つ前であっけなく成敗され、夫婦愛や家族愛のラインも、そこそこ期待通りにハッピーエンド。
ところが、この作品は単なるサスペンス&ラブストーリーではなく、最終回にそのメッセージが凝縮されていたんです
正直言って、この最終回がなかったら、個人的評価や満足度は低めだったかも
事件が解明した後の、ヒョンスに対する世間の声は「連続殺人事件を解決に導いたヒーロー」「姉の罪を背負って隠れて生きてきた気の毒な人」「妻を14年も欺いたサイコパス」などさまざまで、評判や噂に惑わされて、自分に都合の良い側面しか見えないという人間の心理が表現されていました。
里長事件を正当防衛として法に委ねなかった理由を「父親がサイコパスで連続殺人事件を起こしたから、自分たちの言うことは誰も信じてくれないと思った」と言ったように、サイコパスではないけど人の心を読む能力に長けているヒョンスは、その構造を早くから理解していたわけですね。
第1話で、娘が幼稚園で理不尽な理由により友達にぶたれたとき、ヒョンスが真っ先に謝り「評判が悪いと、次に何かあった時に真っ先に疑われるから」と娘に諭したエピソードが、ここで回収されるとは
実際に、当時の裁判では村人の証言がほとんど同じだったり、里長(の甥)が仕掛けた鶏の首切り事件の犯人がヒョンスにされたり、最終回の裁判でも陪審員たちの心情は、検事が誘導したほうへ見事になびいていました(しかしそれを逆手にとって、里長の甥を最終公判へ引っ張りだしたのがまたうまい!)。
ジウォンはその反対で「自分が見たことしか信じない」という、ヒョンスが苦しめられてきた集団心理とは異なる視点を持つキャラクターだったため、無意識にジウォンに惹かれたというわけか(脚本すごいな)。
ということで、いとも簡単に真実ではない方向へなびいてしまう集団心理の恐ろしさや残酷さのほうが、サイコパスよりも怖いという作品メッセージを感じた。
3.キム・ムジンのキャラクターと活躍
本作で最もいい味を出していたのが、ソ・ヒョヌ氏が演じたムジン。
調べてみると、「マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~」でドンフンの部下の一人だった俳優さんだった
序盤では散々な目に遭いましたが、その後はコメディ&癒し担当(?)としてメキメキと存在感を発揮し、ヒョンス姉弟の良き協力者として奮闘し、彼の存在がなければ事件を解決できなかったと言っても過言ではない
ムジンは“普通の人間”として一番感情移入できるキャラだったので、彼を通して人間の弱さゆえの過ちが表現され、誰もがムジンになり得る可能性が示唆されていました。
ラストでヒソン両親に言ったセリフ「袋の中身が鹿であると思いたかった」は刺さりましたね
それと、ヘスとのサブカップルパートもすごく良かった
今後別の作品で出会ったら、絶対に注目してしまう俳優さんになりました
4.「記憶喪失」の正しい使い方
“韓ドラあるある”の代表例(?)である「記憶喪失」。
初心者の自分は大昔に視聴した冬ソナくらいしか思いつかないですが、人によっては「また記憶喪失かよっ」という気持ちになるのでしょうか
しかし今回は、それを逆手にとったのかと思うくらい、とても意味のある記憶喪失だと思った。
たとえハッピーエンドでも、記憶があるままでは、ヒョンスが罪悪感でずっと苦しむことになるから、その15年間の記憶を消すことはとても重要だったと思う。
5.ヒョンスの純愛
前半のヒョンスは、ミスリードのためにサイコパスキャラが過剰に演出されていましたが、並行して人間らしい描写も絶妙に表現されていました。
特に毎話冒頭の回想シーンは、金髪ジュンギ様を拝めたのもあって格別だった
<回送シーンのピュアなヒョンスの例>
●雨宿りの軒先で「じゃんけんに負けたほうが雨に打たれる」というゲームを拒否しながらも、咄嗟に手を出してしまうヒョンス。
●停電の際に、明かりが復旧するまで外で待っているヒョンス(with初雪)。
●臨月のジウォンのお腹に手を当てて胎児に話しかける時、咳払いをして声を整えるヒョンス。
●生まれたばかりのウナを見てジウォンがうれし涙を流しているときに、その涙の意味を尋ねたり、「自分のことを好きになってくれるかな」と心配するヒョンス(このセリフがラストシーンでも効果的に使われてた!)。
ほかにも現在のシーンで、ムジン宅へジウォンが突然訪れて緊迫する中、「ジウォンは甘いコーヒーが飲みたい頃だから淹れてあげて」とムジンに指図するヒョンスが最高でした
ジウォンを愛していることに無自覚だからこそ、反比例するように無意識の行動には愛情がたっぷりなんですよね
「陰のある男がヒロインの愛で感情を取り戻し、父性が芽生え、愛する者のために闘ったり逃げたりする」キャラクターは、「TWO WEEKS」のテサンに似ていましたね。
ウナとの父子シーンや、黒キャップを被って秘密裏にタスクをこなしたり、ムジン宅のバルコニー外に隠れて間一髪になったり、村でジウォンに見つかって追いかけられるシーンなんて、まさに「TWO WEEKS」だった(テサン大好き)
また、ヒョンスが金属加工職人という少し珍しい職業設定だった理由が最後に判明したときは、「なるほどぉ-ーーーー」と唸った
何度も強調されて表示されたスタジオの名称「明けの明星が宿る空間」が、ギリシャ神話由来だなんてオシャンティーすぎるわ
おかげで、退院後、荷物や着替えはもちろん、記憶を戻すために自宅へ一度も戻らなかった設定には無理があるというツッコミを胸にしまいましたw
オシャンティーといえば、独特の世界観を放つOSTが印象的だった
ボーカル入りはたった3曲しかないため、どれも繰り返し耳にして、とても印象に残った。
6.イ・ジュンギの圧巻の演技
やはりこの作品の完成度は、イ・ジュンギ氏の卓越した演技力あってのもの。
わたしは陰のあるヒーローキャラのイ・ジュンギ氏の演技が好きなので、キャラクター自体には物足りなさがありましたが、今回のような繊細な心理描写をこれほど完璧に演じるのは本当にすごい
例えば「自分をサイコパスだと思い込んでいるのでそのように振る舞いながら、妻の前では良い夫の演技をしているつもりで、でも本当はサイコパスではないから素の笑顔がこぼれる」みたいな、かなりややこしい心理描写が絶妙だった
そしてなんといっても圧巻だったのは、15話の崖のシーンで、ジウォンを亡霊だと思って混乱するところと、16話で里町の甥に会った帰りの車中で「2人とも出口のない円の中をずっと回っているようだ」と言いながら泣きじゃくるシーン。
特に車の中のシーンは、キャラクターの心の機微が繊細に表現された名演技だった。
■モヤモヤ点・共感できなかった点
●謎解きパートが期待していた展開ではなかった
●サイコパスが犯人だと興ざめする
●ムラ社会の闇にメスを入れてほしかった
●ミスク夫妻のその後
ミスク夫のタクシー運転手(「ヴィンチェンツォ」の事務長さん)が末期がんだったので、2人が再会できたのか気になった。
いろいろな要素が複合的に絡められた脚本なので、視聴者は何かしらの要素にハマれる可能性がある一方、どの部分に期待するかで感想が異なる作品かもしれませんね。
イ・ジュンギ氏の次回作「アゲイン・マイ・ライフ」もめちゃくちゃ楽しみです
ではまた