当事者同士だけなら比較的穏便に済むであろう事も、「観客」の存在によってのっぴきならない事態に陥る事がある。
エンドウさん、シバタさんの「わけわからん」発言を受けて、集会室は耳が痛くなるような緊張にに包まれていた。ボクをはじめとするほとんどの人たちは、この状況で「観客」でしかなかったが、「観客」はその存在故に役者を追い詰めるものだ。
…追い詰められるのはこの場合つまり、ミハラさんだ。
二人がかりで攻撃されたからと言って、大勢の目の前で「私が悪うございました」と頭を下げるわけにはいかないだろう。
それでもミハラさんは、エンドウさんに言われた通り一言二言説明を試みようとした。
場を丸く収めようとの精一杯の努力だったはずだ。
だがエンドウさんはその説明を途中で遮った。
「ミハラさん、説明してほしいと言ったのはその事じゃありませんよ」
諭すような口ぶりは、意図しているのかいないのか。
感じ方によっては上から目線にも受け取れるその口調に、ついにミハラさんが切れた。
「わからんわからんって…
あんただって理事長経験者だ、
わからん事はないだろう!」
顔を真っ赤にして怒鳴った。
この人がこんなに怒るのか…と驚くほどの切れっぷりだ。
確かにミハラさんの説明が的外れなのは事実だった。
だが懸命に丸く収めようとしているのは伝わっていたのだし、それをそこまで挙げ足取りをするのはいかがなものか…。
「ばかばかしい! 俺は帰る!」
追い詰められ、ミハラさんはそう言ってかばんを取り出した。
<続く>
人気ブログランキングに参加中!
1クリックお願いします。