スラップスティック幼稚園-4 | 日陰で絵日記

日陰で絵日記

イラスト描きとその家族の日記

 「今日は工作をしたんだ~」


 むーちゃんが夕食時に言う。

 五月の節句が近づいている頃だ。

 鯉のぼりを作ったらしい。



 「誰と一緒に作ったの?」

 「ひとりで」


 マヨの問いに、あっけらかんと答える。

 他の子はお友達と作ってるのに、むーちゃんだけが一人だったらしい。





     日陰で絵日記-20110902_hitoride-1


 口調には陰がないから大した事ではないのだろう。

 でもボクの脳裏には、↑のようなさびしい映像が浮かんだ。


 そして、その想像はまたしばらくの間ボクを苦しめた。





 同じマンション同士のグループもないむーちゃん。



   日陰で絵日記-20110902_hitoride-2


 仲良くなる「きっかけ」や結びつける「理由」さえない。




 幼稚園の最初には、「お友達になってくれる?」なんて漏らした初対面の子に、「同じ幼稚園なんだからもうお友達だよ!」と、優しくも余裕のある言葉をかけていたのに、気が付けば誰よりも孤独である。


 いや…自分が疎まれている事に気づいていない節がある、とのマヨの言葉を信じるなら、つらいのはむーちゃんよりむしろそれを見ているマヨだったろう。





     日陰で絵日記-20110902_hitoride-3


 幼稚園に迎えに行くと、いつも泣いているというむーちゃん。

 そして諍いの要因はむーちゃんであり、マヨが皆の親に毎日のように頭を下げる。





 振り返ればボク自身、決して友達の多い方ではなかった。


 小学校の友達はもう名前を思い出せる奴はいないし、幼稚園など友達がいかたどうかも覚えていない。

 きちんと「友人」と呼べるものができたのは中学以降だ。


 でもそれがボクにとって不幸だったかと言われるとそうではない。

 一人でぼーっとしているのが好きな子供だったからだ。

 小学校のうちはほとんど一人で過ごしていた。


 だからむーちゃんにとってもそうである可能性はあるのだが…不思議と親というものは、自分の子供に「たくさんの友達」がいてほしいと期待してしまうものらしい。



 「いいところだってあるんだよ」


 誰にともなく小さくつぶやく。

 友達になってくれとは言わないが、せめて疎まないでほしい。

 

 虚空を見つめながら何度も思った。

 


                              <続く>





 

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