<前回からの続き>
曲の合間のMCは、相変わらずぶっきらぼうで情報量の少ないものだった(笑)。
メンバーの中でもう少し喋りの立つ奴はいなかったのか…と、やや残念。まぁバンドは演奏がメインで喋りはサブだからいいんだけどね。
ステージから降りてきたメンバーを見ると、ベースとドラムは20~30歳くらいの若い子だった。
音楽やとかスポーツといった趣味の世界は、付き合う人間の年齢層を広くしてくれる。
縦関係(年齢による上下関係)のわずらわしさを除けば、それは得るものが多く、楽しいものだ。
兄貴もその関係を楽しんでいるであろう事は、彼らにかける言葉から察せられた。
それは目上から目下に話すような斜め45°のものではなく、フラット(180°)なものだったから。
「お疲れ様」
そうねぎらうと、「悪いな、急な話なのに来てもらって」と、兄弟というより社会人同士らしい言葉が返ってきた。
そんな気遣いができるようになったんだな、と感心する。
いや、ボクは兄貴よりずっと偏屈な人間だったから、もともと気遣いは彼の方がうまかったのかもしれない。
「演奏はよかったよ。心地いいギターだった。でもMCは落第かな」
正直にそう告げると、MCがダメな事など聞いてないかのように、兄貴は喜んだ。
思い返してみると、兄貴の演奏の感想をきちんと伝えるのも10年ぶりだ。
二人でビールを飲み、ボクは兄貴の奥さんや、兄貴のバンド「東京ガロンヌ」のメンバー、兄貴のバンド仲間と小一時間ほど話した。
「じゃあ、また」
「おう、サンキュー」
そんなやり取りをして、ボクは店を出た。
兄貴とはボクが生まれてからの付き合いだから、もう41年も一緒にいる事になる。
それでいて兄貴が実家を出てからはほんの十数回くらいしか会っていない。
おそらく死ぬまでに顔を合わせる回数も、似たようなものだろう。
まぁ回数はともかく、濃度というか、今後も会う時が今回のライブのような「自分を見せたい瞬間」であればいいなと思っている。
兄貴にとっては音楽。
ボクはイラストと、家族。
誇らしい宝が、もっとも輝かしい瞬間こそ、会いたい時だろう。
…終わり
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