アキレス腱が切れるという大怪我を負った、我が友人TK。
カゲオ 「入院するなら、見舞いにでもいこうか?」
TK 「いや、入院するとしても一週間くらいだし、入院しないかも知れないから、お気遣いは無用だよ」
そんな話を電話でしていると、TKの電話口がやや騒がしくなった。
彼の部屋に、愛娘がやってきたらしい。
「誰とお話してるの?」的な言葉が聞こえる。
カゲオ 「お~ナナちゃん(仮名)か~。ずいぶんしゃべれるようになったんだなぁ」
TK 「そうか、前に来た時はまだしゃべれなかったもんな。今はすごくよくしゃべるぞ~」
カゲオ 「そっか。ひさびさに遊びに行くかな」
TK 「おお、ぜひきてくれ。ナナ、今度お絵かきのおじちゃんが遊びに来てくれるって。なんでも描いてくれるぞ~」
TKは、ナナちゃんに向かってそう言ったあと、カゲオにこう言った。
TK 「ナナはプリキュアが大好きなんだ。描いてもらえばすごい喜ぶよ」
プリキュア…?
名前は耳にした事あるけど、どんなものなのかわからない。魔法少女のようなものなんだろう、と勝手に予想をつけておく。
描いたことなど当然ないから、資料を用意しとかなくちゃなぁ…とやや慎重なカゲオ。
…いや、絵柄によっては練習しておく必要があるかもしれない。
「お絵かきのおじちゃん」などという名前をつけられては、その名に恥じぬ働きをしなければならない。
その場になって失敗して、「これ違う~」などと泣かれてはえらい事だ。
プリキュア…どんなキャラクターなんだ!
電話を切ろうという矢先、ナナちゃんが電話を代わりたい、といっているのが聞こえた。
TK 「お絵かきのおじちゃんと話したいらしい。ちょっと代わるぞ」
カゲオ 「お、おう」
ナナちゃん 「おじちゃん、あのね…」
カゲオ 「うんうん。 (かわいいなぁ) 」
ナナちゃん 「おじちゃんなんでもかけるの?」
カゲオ 「うん、なんでも描けるよ (こりゃあ絶対に失敗できないな…) 」
ナナちゃん 「コップもかける?」
カゲオ 「え?」
ナナちゃん 「コップもかける?」
カゲオ 「コップって…お水飲むコップ?」
ナナちゃん「うん、かける?」
カゲオ 「…かけるよ」
カゲオがそう答えると、満足したように、TKに受話器を返した。
TK 「それだけ確認したかったらしい(笑)。じゃあ、そういうわけだからまたな~」
ちょっと待てTK。
コップってあのコップでいいの?
普通の水飲むコップ?
本当にただのコップ?
あれが描けるかどうかがどうしてそんなに大事なんだ?
…悩んでても始まらない。
遊びに行く日はまだ決まってないけど、どっちにしろ失敗が許されないって事に変わりはないのだ。
カゲオは資料を手に、さっそく練習を開始した。
うーん…
完璧なコップだ!
…あれ? 練習するのって、コップだけでよかったんだっけ… 1クリックお願いします。