今は南部歴・・・んと何年だったかな?
0086年だっけ?まだ戦争中なの。
私アン・ユウリィはとにかく故郷から戦災を逃れて。
独りで西にある知らない町に居るの。
その日暮しの日暮し。ほとんど乞食ね私は。
前に日雇いで働いたお金ももう底をついちゃった。
お財布には、100ゼゼコしかないわ。
冬を越すために購入した。ハリモグラのコートも、もうボロボロ。
やっぱ安物はダメね。裁縫も生地もハンパもんだわ。
今は長雨で、昼間っから傘も無く雨に打たれて市場の片隅で・・・
くだもの屋さんの出店の近くでじっとしている。
私「お腹減った・・・」
もう2週間も何にも食べてない。だってお金がないんだもん。
お母さんに食べさせてもらってた去年が懐かしい・・・
ダイエットになって丁度良い、どころか背中とお腹がくっつく。
あ、店番のおじさんがコックリコックリを始めそう。
しめしめ。
周りの大人達は、みすぼらしいルンペン少女なんて気に留めていないわ。
ぐぅぅぅぅ・きゅるるるる・・・
・・・
ごめんね、お腹の虫さん・・・泣かないで。
あなたに食べさせるご飯が無いの。
あなたの為のお金がもう無いのよ。
私「ごくん・・・」
ハッ!いけない。ヨダレが止まらないわね。
じいいい・・・
目が商品の果物に釘付け状態。
コロコロめかんとパインカップル。
あたしの好物を狙ってるの。
パインカップルは分厚い皮で防御されてて食べれないから。
私の空手チョップでブッた斬って・・・・
「ハッ?」
今私、何考えてたんだろう。意識がブッ飛んでたわ。
私の果物ナイフで切ればいいのに。
「ハッ!そろそろね」
そ~れそ~れ。今、私アンが眠る電波光線を送ったわ。
10秒後におじさんは眠りの国へ旅立つのよ!
うっひっひっひっ!
・・・・・・
くだもの屋「・・・・ふが」
「!」
ダダダダダダダッダ!バシャバシャバシャバシャ!
むんずっ!むんずっ!むんずっ!
ダダダダッダダダダダダダ!バシャバシャシャバシャバシャ!
「はあっはあっはあっはあ!」
コートがずぶ濡れで重量オーバーだわ。
ここなら誰にも見られないわね。
ガサゴソゴソ・・・・
ピンッ!
私「ふっふっふっ」
「あんたの命もここまでね。パインカップルさん?」
「てやあっ!」
ザクッ!ザクッ!ザクザクッ!
ガブッ
むしゃむしゃむしゃ!
「う、うううう。美味すぎますわお嬢様♡」
嬉しすぎて涙が止まらない。
・・・・・・・・
私、アンは今日も生存したのよ!
・・・・・・・・
雨が止まないわね。傘がどっかに落ちてないかしら。
何日か食いつないだ。私ってたくましい。イケ少女ね!
夜だから。商店街の裏の通りで、雨をしのいで眠る私。
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
アニィ「おいアン。傘が無いなら僕の傘の中に入って帰ろうよ」
私「いいもん!お母さんが迎えに来てくれるもん!」
アニイ「・・・アン。なんで嫌なんだよ?」
私「だって、アニィ兄ちゃんとアイアイ傘したら」
「学校中でからかわれるもん!」
アニィ「そんな事気にしてんのかアンは・・・」
「・・・・・・・・」
「もういい!知らないぞ、僕は帰るからなっ?」
私「バイバイ、アニィ兄ちゃん!」
バシャバシャバシャ!
3時間後、まだ小学校の玄関口で独りきり雨宿りしてる私。
真っ暗になっちゃった。
?
あれ、誰かがこっちに来る。
?
私「お母さん!」
母「アン、何してんのこの子は?」
「心配かけるんじゃありません!」
私「ごめんなさいお母さん。てへへへ!」
母「さあ、早く帰って晩ご飯食べましょうね」
「アンの好きなオワンカレ・スープも作ってあるわよ?」
私「わーい!オワンカレだオワンカレだあ!」
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
私「はっ?」
ゆ、夢か。
リアルな夢だった・・・
お母さんに会いたいなあ・・・
オワンカレ・スープが食べたいなあ・・
・・・・・・
カランカラン・・・
店のママ「いらっしゃいませえ」
私「あのう・・・」
店のママ「・・・あんたお客さんじゃないわよね?」
「ここは夜の営業の酒屋バーよ。分かってんの?」
私「あ、あの、外の従業員募集の張り紙を見ました」
「ここで働かせて下さい!」
ペコリ・・・
ママ「・・・うーん。確かに人手が足りなくて困ってるんだけど」
「あんた、歳はいくつ?」
私「20歳です」
・・・ホントは18歳なの。
ママ「・・・・」
コックのおじさん「いいじゃないかメル。雇ってやれよ?」
ママ「あんたがそ~言うなら・・・」
コックのおじさん「お嬢ちゃん、クニは何処だい?」
私「チョモル村です」
ママ「・・・聞いたこと無い土地だねえ」
「よっぽど田舎なんだろうねきっと」
私「ハイ、てへへ・・・」
さあ、初勤務よアン。気張るわ私は!
カランカラン・・・
ママ「いらっしゃいませえ!」
私「いいいい」
「いらっさいませえ・・・」
お客のおじさん「なんだいメル。新しい娘を雇ったのかい?」
ママ「ええ、そうなのよ。ご贔屓にしてやってね?」
他の客のおじさん「お嬢ちゃん可愛いねえ」
「でも何か臭うな・・・」
ママ「!」
「服を着替えさせるだけじゃダメか・・・」
「アン。あんたいつから風呂入ってないの?」
私「うーんと・・・何ヶ月かなあ?」
ママ「!!!」
「あんた接客はいいから厨房を手伝いなさい!」
私「ハイ!メルさん」
・・・・・
コックのおじさん「アン、芋の皮むき上手だなあ」
「おうちでお料理手伝ってたのか?」
私「えへへへ。お母さんのお手伝いしてたの」
コックのおじさん「裏で生ゴミを捨ててくるから」
「ちょっと鍋を見てておくれ」
私「はい」
・・・・・・・
ぐつぐつぐつ・・・
あ、これオワンカレ・スープとコタツイモだ。
私「ちょっと味見・・・」
ズルズルズル・・・
?
私「う、うまいわこれ!」
「お母さんが作ってくれるオワンカレ・スープと全然違う」
「一体どーやって作るのかしら?」
?
何かお店が騒がしいわね。何かあったのかしら?
私「メルさーん。何かあったんで・・・」
メル「アン!あんたは奥に隠れてなさいっ」
私「え、何かあったの?」
メル「しいぃぃ・・・」
「カンガルー軍の奴らが来てるのよ!」
「あんたには売春の仕事なんてさせないからね!」
「あんたど~見たってネンネだもの」
私「へ?」
メル「早く二階へ上がって私のベッドで寝てなさい!」
「今日はもう仕事はいいから」
私「は、はい。メルさん」
・・・・・・・・・・
私が年齢詐称したのバレてんのかしら?
まあ、良いか。これでご飯に困る心配も無くなったし。