和訳『In My Life』(ビートルズ) | タブンダブン

タブンダブン

流浪のライター、かげぎすのブログ。書評、映画感想、洋楽の和訳などいろいろとやっています。

今回の和訳はビートルズ『In My Life』(1965)。

 

 

 

名盤“Lover Soul” (ラバーソウル)に収録されている曲です。

 

 

ラバー・ソウル ラバー・ソウル
2,621円
Amazon

 

 

『In My Life』は、僕のビートルズベスト3のどこかにかならずランクイン――というのは、ランク内は順不同だから――しています。

 

曲の製作は、公式ではジョンとポール、すなわち“レノン・マッカートニー”名義になっていますが、作詞は実質的にジョンがやりました。

 

ジョン本人の話によると、「あなたはいちど自分の子供時代について(曲を)書いてみてはどうか」というあるジャーナリストの言葉が『In My Life』の出発点のようです。

 

タイトルが示しているように、この曲のテーマは自分自身の人生を振り返ること、というわけですね。

 

↑じっさいの作詞原稿。

 

ところで歌詞のなかには、「Some are dead and some are living」という言葉が出てきます。

 

 

直訳でずばり「ある者は死に、またある者は生きている」となるわけですが、ジョンの友人の証言によれば、この「Some are dead」とは、かつてビートルズのメンバーだったスチュアート・サトクリフのことのようです。

 

 

画家になりたいという理由でビートルズを脱退したスチュ。1962年、脳溢血で亡くなりました。

 

ジョンにとってスチュは“自分の分身(alter ego)”のような存在だったらしく、愛するヨーコ・オノにたびたびスチュのことを口にしていたようです。

 

「(スチュは)僕のもうひとりのような存在で……彼の言葉には魂が宿っている……僕を導いているんだ 」

 

〝alter ego ... a spirit in his world ... a guiding force"

 

 

ともかく『In My Life』は、死と生を引き合いに出すことで、“過ぎ去った日々”の重さがうまく演出できています。

 

 

『In My Life』は、ジョンの世界観が見事に表現されている作品のひとつであると言えます。

この曲を聴くたび、ジョン・レノンのナイーブな部分がみえてくる気がします。

 

 

憧れのエルビス・プレスリーが「おれはビートルズのレコードをぜんぶ持っているよ」と言ったとき、「ぼくはあなたのレコードを一枚も持っていない」と笑えない冗談でこたえてその場にいた人々を凍り付かせたあのジョンとは思えないくらい、『In My Life』はとても繊細な歌詞です。

 

 

 

歌詞はシンプルながら、「場所」と「記憶」とを結びつけるところが深みを与えています。

 

ほんとうに完成度が高い曲だと思います。

 

僕の周りにいるビートルズフリークの人たちも、『In My Life』に特別な思い入れのある方がたくさんいました。わかりあえる仲間がいるのはうれしいですね。

 

 

いまではそうでもないですが、かつて僕は、この曲にドはまりして狂ったように何度も聴きました。当時はiTunesの再生回数トップ10の常連でしたねえ(しみじみ)

 

 

今日では、ロックの本場イギリスでさえ「さすがにもうサウンドが古いよな」とビートルズを評する人々が現れ始めました。

 

たしかに、誕生してからはや半世紀もの歳月が経ち、ビートルズはもはや“古典”の域です。

 

しかし古典とはつねに古くて新しく、そして偉大なのです。

 

みなさんも、いまいちど“グランド・セオリー”たるビートルズに立ち戻ってみてはいかがでしょう。思いもよらぬ発見や感動があるはずです。

 

 

 

There are places I remember
そこは 僕が人生を振り返る

 

All my life, though some have changed
場所なんだ けれど 変わってしまったもの

 

Some forever, not for better

変わらないもの 悪いもの
 

Some have gone and some remain
過ぎ去ってしまったもの いまでもとどまり続けている場所でもある

 

All these places have their moments
あらゆる場所があらゆる記憶なのだ

 

With lovers and friends I still can recall
恋人や友人といた日々をこうして僕は思い出す

 

Some are dead and some are living
彼らはすでに死んでいたり いまも元気だったりする 

 

In my life, I've loved them all
それでいい すべてひっくるめて僕は自分の人生を愛しているから
 

 

But of all these friends and lovers
だけどね かつての友人や恋人を

 

There is no one compares with you
きみとは比べられないんだ

 

And these memories lose their meaning
思い出はやがて意味を失っていくのだから

 

When I think of love as something new
いま目の前にある愛がすべてそうさせてしまうのだろう

 

Though I know I'll never lose affection
愛に先立つ人々との出会いや物事にたいして

 

For people and things that went before
情緒を失うことはないのかもしれないけど 

 

I know I'll often stop and think about them
きっと僕はふと立ち止まって考えてしまうだろう

 

In my life, I love you more
人生のなかで きみへの思いよりも価値のあることなんてないんだ

 


Though I know I'll never lose affection
愛に先立つ人々との出会いや物事にたいして

 

For people and things that went before
情緒を失うことはないのかもしれないけど

 

I know I'll often stop and think about them
きっと僕はふと立ち止まって考えてしまうだろう

 

In my life, I love you more
人生のなかで きみへの思いよりも価値のあることなんてないんだって
 

In my life, I love you more

人生のなかで きみへの思いよりも価値のあることなんてないんだ