おはよう、
有り難う、
などの挨拶や、
気軽に謝意を述べる言葉を別にすれば、
いつもの通り、
という言葉は日常ごく普通に口から出る。
「では、いつもの通りでまいりましょう」
スーパーなどで職場の長が朝礼の締めに使っている。
エッ、いつもの通りでいいのかな。
いつもよりお客様に優しくとか、
いつもより応対をハキハキと、
でなくていいのかな。
「いいか、いつもの通りだ。平常心で行け」
運動部系の監督が選手達にハッパをかける。
いつもの通りでライバルに勝てるのかな。
いつもの通りに行って裏をかかれないのかな、
と余計な心配をしてしまう。
「いつもの通りだぞ。誤配はご免だ」
宅急便の先輩が後輩に重圧を掛ける。
いつも誤配が多いのに、
いつもの通りで誤配はなくなるの、
と、思わずツッコミを入れたくなる。
「いつもの通りにやってきました」
上司の指示で飛び出した若い社員が
意気揚々と戻ってきて報告する。
まだ若いのにいつもの通りで完璧なのか、
と意地悪に考えてしまう。
こうして、
いつもの通りって、
誰もが安心して了解しあえる言葉なんだ、
と納得するしかない。
つまり、
魔法の言葉の1つなのだろう。
何かのときには責任を分担できるし、
保険的効果もある。
「いつもの通りだ。失敗は許されないぞ」
特殊詐欺団の幹部が配下に対しても使う。
ハイ、僕もここらでいつもの通り失礼します。