幸せってどこにあるんだろう。
幸せな時間はどうやって持つんだろう。
こんなことを思ったことあるなあ。
何度も何度もね。
みんな思ったことがあるんじゃないかな。
幸せって漠然としてるだろう。
株で10億円稼いだからメチャ幸せ、
とはならないだろう。
狂喜乱舞しても幸せって感じじゃないもんな。
知られちゃって羨望の視線が、
これでもかこれでもかと殺到する。
闇サイトで誕生した強盗団に襲われ、
いのちまで奪われることもないとは言えない。
話が横道に逸れた。
中学生になって、
幸せって何だろう、
とぼんやり思うことがたまにあったな。
畑道を歩いていたら、
小柄のアオムシが野菜の大きな葉の縁をかじっていた。
おいしそうにな。
かじる音までが聞えてきそうだった。
幸せな奴だな、と思ったよ。
いきなり、ブーンと羽音を立ててスズメバチが飛んできた。
あっという間にアオムシを抱えて飛び去った。
うちへ帰ってもその事件がショックで、
しばらくふさぎ込んだ。
「はい、お団子」
母がニコニコして現れて串団子を差し出した。
好物のみたらし団子だった。
僕はわっと歓喜の叫びを上げて受け取り、
夢中でかじりだした。
「羨ましいほど幸せそうね」
そう言い残して台所へ戻る母の背中を見ながら、
言われてみればこれが幸せなんだと思ったよ。
でも、もっと違う幸せを思ったんだ。
母がいる、
まだ帰宅していないが、父がいる。
同じくまだ帰宅していないが、姉がいる。
僕も含めて同じ屋根の下で、
家族が無事に暮らしている。
そのことが、
何だかとても幸せなことのように思えた。
それは一瞬のことで、
すぐにもう1本団子ほしいな、
という欲に変わった。
幸せって感じようと思っても感じられない。
おっ、これが幸せって不意に感じられても、
すぐに他の思いに取って代わられる。
幸せって不思議だな。