お母さんが認知症で末っ子の貴方は、

1週間に1,2度、実家へ会いにいってるんだ。
お母さんの面倒は、
お兄さん夫婦が見ているので申し訳ない、
と思っているって。
優しいんだね、
お兄さんたちにも気を遣って。
お母さんはまだ貴方のことを認知できるのかな、
ああまだちゃんと解るんだ。
笑って、
よくきたね、
と喜んでくれるんだ。
でも、
一昨日会いにいったばかりなのに、
3年ぶりだねえ、
と言われたり、
ときおり、
貴方を訝った表情で見るのか。
つかの間、
この人誰かしら、
と思うのかも。
でも、今はまだいいよ。
そのうち貴方を貴方と認知できなくなる。
それが怖いんだね。
そう遠くない将来に必ず起こることなんだから、
前向きに受け入れようよ。
世界で認知症の患者は急増しており、
その数は約5、6千万人と言われているんだ。
もしかしたら、
貴方は認知症になったら、
いずれ何も解らなくなるから、
とても悲惨なことだと思っていないだろうか。
それはね、
お母さんに失礼なことかもしれない。
お母さんは新しい世界を新たに知るということで、
その人生は続いていくんだよ。
そのことをずしりと重く感じてほしい、
貴方や、
お兄さんたちが、
認知症のお母さんを痛ましい、
という目で見ると、
逆に社会から自分達を孤立させることになる。
僕はグループホームを慰問したことがある。
職員に見守られたり、
助けられながら食事の後かたづけをしたり、
雰囲気はびっくりするほど明るかった。
見舞いにきた家族を、
家族と認知できなくても、
仲よく楽しく歌っている。
肉親との新しい関係なんだね。
そうか、
お母さん、
来月からグループホームの利用者になるのか。
実家から歩いて10分のところだって。
じゃ、今までどおり、
週に1,2度、
お母さんに会いにいける。
どうか、
楽しい新しい母子関係を築いてほしい。