30数年前のことかな。

ウォーキングの道筋で、

青いアジサイを見かけた。

足を止めてしばらく見入った。

曇天の日で、

青いアジサイは艶やかに映えて、

吸い込まれそうな引力を放っていた。

記憶では、その数日後のことになるが、

僕はあるスタジオで、

ビジュアル系男性誌のグラビア担当者と打ち合わせをしていた。

担当者は、アメリカ製だというヘアマニキアのカラー見本を見せてくれた。

僕が指定したカラーで僕の髪の毛を染め、

それをグラビアに載せるために撮影する。

そういう企画だった。

その頃の若者の間では茶髪金髪は、

時折、見かけるカラーリングだった。

だが、見せられた色見本には黄色、緑、ピンク、白、

オレンジなど多彩な色があった。

青色の見本を見たとき、

僕はこれだと思った。

先日、と書いていいかどうか。

もっとずっとまえのことだったかもしれない。

それほどに印象が強かったということだろう。

あのときウォーキングの途中で見た青いアジサイの青い色と、

その青色見本の色調がとても似ていた。

「これでやってください」

染め上がるまでかなり時間がかかった。

鏡の中の自分を見て、

これが僕か、と最初、唖然とした

青いヘアマニキアを施した僕の頭を見ていると、

どこかへ吸い込まれそうな心地になった。

僕の頭だから僕の頭の中しかない。

僕の頭は魔性を持つのか。

でも、すぐにとても気に入った。

そのカラーリングで、

2、3のテレビ番組に登場しただけで、

視聴者の反響がハンパではなかった。

すでにタイツが主軸となった僕のファッションは、

かなり知られていた。

そのファッションに、

青い色のカラーリングが加わったことで、

僕の身についたインパクトは、

いっとき驚愕的なものになった。

やがて、総青のカラーリングに飽きて、

オレンジ、黄色、赤、グリーンなどの

多色を用いたカラーリングするようになった。

さらに7色を使って、

レインボーのカラーリングもやった。

今はオレンジ、緑、ピンクの3色になって落ち着いた。

今の若い人たちのカラーリングが多彩になったのを見て、

今昔の間にふけることがある。

 

 

※ 画像は友人のTさんが送ってくれたものです。