最近の電車内で
 スマホや 専用端末で電子書籍(漫画を除く)を読む光景を
 あまり見かけなくなった。
 漫画はまだ小学生らしい子も含めて
 年若い層がスマホで読みふけっている。

 ひと頃は
 専用端末で活字の書籍に読みふける姿を
 ちょいちょい見て
 この分では電子書籍時代の到来は目前のものだ
 と胸を躍らせて期待した。
 僕も出版界の末席に連なる人間である。

 しかし
 活字の電子書籍時代の到来は実現せず
 低迷とまでは言えないにしても
 期待外れであることは確かである。

 読書人口が先細っていくという事実を
 スマホ全盛という生活スタイルの変化から見ると興味深い。
 通勤帰りらしい女性が開いているスマホをチラ見すると
 メールや LINEのチェックを除けばゲームが目立つ。
 これはサラリーマンの場合も同じである。
 本当はゲームよりも
 ネットニュース 雑誌記事の読み放題などで
 情報を得ているケースのほうが多いかもしれない。
 専門のサイトでコンサートの中継や
 スポーツの中継を見ている若者もよく目につく。

 電車内でネットに興じている通勤客他は
 2,30年前なら文庫を中心に
 活字の書籍や 週刊誌に読みふけっていた層だと思う。
 つまり
 小説 エッセイ 自己啓発書 ビジネス書
 新聞 週刊誌などを電車内で読んでいた層は
 スマホを使い 多様な分野を気軽に楽しむ
 生活スタイルに転じていった。

 この過程で
 活字の書籍や 定期刊行物は
 どんどん部数を減らされていくという
 負のスパイラルに陥ったのである。

 電車の中で活字の本を開いている光景は
 確かに少なくなったが
 高齢者を中心にまだ普通に見かける。
 スマホが変えた生活スタイルに馴染めず
 従来の読書スタイルを維持している人達である。
 その人達の手にしている書籍は
 新刊書籍よりも図書館で借りてきたものや
 古書店で購入したものが多いような感を受ける。
 ただ文庫本を手にしている人は少数派である。


 先頃
 第102回「全国図書館大会」が行われた。
 「公共図書館の役割と蔵書、出版文化維持のために」
 と題された分科会で出版社側が図書館側に対し
 「図書館での文庫貸し出しをやめてほしい」
 という要望が出された。

 大手出版社にとって文庫の売り上げは
 他の判型の書籍に比べてかなり高い。
 ドル箱にしている出版社もある。

 という出版情勢であれば
 図書館での文庫の貸出し比率も当然高くなるだろう。

 しかし
 それをもって図書館の文庫の貸出しが増えたから
 新刊書店での文庫の売り上げを圧迫した
 と決めつけるのは早計ではないか。

 スマホ文化が生活スタイルの変化をうながし
 読書人口の減少を招いた
 と理解したほうがうなずけるのである。