人生を勝ち負けで渡っていく人がいる

 相場師はまさにその典型だろう

 相場を張るのはバクチと変わらない

 どんなに勝負強い相場師でも

 浮き沈みは免れない

 いや

 大相場を成功させて

 巨万の富を得ても

 相場師である以上張り続けなければいけない

 確率の法則が働くから

 とどのつまりは無一文になる

 巨万の富を動かしただけに

 無一文は奈落の底に突き落とされたも同じだ

 相場師の末路は多くはそうなる


 特別の職業でなくても

 勝ち負け意識で人生を渡っている人は多い

 その意識の強い小売店主は

 勝ち負けのボーダーラインを引いて

 上まわれば勝ち

 下まわれば負けとして

 1日の終わりに勝った負けた

 と一喜一憂している

 転職の多い人も

 前職より待遇がよいところに決まれば勝ち

 悪ければ負けとして捉え

 明暗の表情を見せる


 人生を勝ち負け意識で渡っている人には

 じり貧傾向が見られる

 人生はそのようにできていないからである


 ある病院勤めの看護師さんがいた

 ずっと未婚を通したので家族はいない

 定年になっても働いて

 70歳を超えて有料の老人ホームに入った

 それに必要なおカネ以外は

 すべて実績のある医療研究機関に寄付した

 その額は8000万円

 この人の人生に勝ち負けはなかった

 ただ看護師としての職務を全うしただけである

 それはこの人にとって使命感の裏づけのある職務だった

 全うしたことが貴い

 ということは長い人生を振り返れば

 勝者の足跡を残したことになる


 人生は孤独な長距離レースなのだ

 全うして初めて勝者なのである