きみの寛容な性格は

 僕の耳にも轟いているよ。

 人も羨む

 火のような恋をしたんだってね

 婚約を誓いあった直後に

 彼女は海の向こうからきた男に

 奔ったんだ。

 聞くところによると

 そのとき

 きみは自殺を

 図ったんだってね。


 彼女は

 ぼろ雑巾のように捨てられ

 きみの前に現れた。

 疲れ切っている彼女を

 きみは許した。

 
 そして

 結婚した。

 それからまだ

 1年も経っていないじゃないか

 彼女は妻子ある男の許へ奔った。

 すぐ奔る女なんだよ

 でも

 妻子ある男は家庭へ戻り

 彼女はきみを頼ってきた。

 きみは見るに見かねて

 受け入れようとしている。

 それだけ彼女が好きだということ

 それに尽きるんだよ。

 いいかい

 彼女の性根は直らないと思うよ。

 だから

 今回が縁切りの

 最後のチャンスと思おうか。

 
 それでも許したいんなら

 それもいいだろう。

 ぼくはきみに人格者

 いや

 菩薩の一面を見ている。

 その見方が的を得ていれば

 きっと

 きみのとほうもない寛容さが

 彼女の人間性を変える。

 そうなったら

 きみたち夫婦は

 揺るぎないものを築くはずだ。

 それに期待しよう。