慌てる乞食は貰いが少ない

 という諺があるよね

 乞食たちにミカンを施そうとする人が

 籠にいっぱいのミカンを入れて現れた

 乞食たちはみな寄ってきて

 順番の列を作りだした

 遠くにいて気づくのが遅くなった乞食が

 慌てて駆けてきていちばん前に出ると

  おくれ
 
 と手を出した

 施す人はその手にミカンを1つ乗せた

 すると その乞食は

  3つおくれ

 と言った

 施す人は与えたミカンを籠に戻して告げた

  じゃ 列に並びなさい

 彼は渋々列の後ろについた

 施す人はミカンを3つずつ与えだした

 列の後ろについた彼の番になった

 籠にミカンは1つしか残っていなかった

 施す人はその最後の1つを彼の手に乗せながら

  みんなに2つずつあげようと思っていたんだよ

  きみが初めから列の後ろについていたら

  あまったミカンをみんなあげられたのに

 と憐れみを込めて言った



 施す人はその乞食の強欲さを嫌ったのだ

 きみが強欲だと言ってるんじゃないよ

 肝心かなめのときって

 きみにとって何かのチャンスなんだろう

 そのときにこれは絶対ものにしなければ

 と慌ててしまって逃してしまう

 今までにそんなことが何度もあったはずだ


 きみは能力が高いから

 他の人にとって大きなチャンスでも

 小さなチャンスに映るし

 慌てなくてもしっかりつかんできた

 他人に奪われずにね

 本当はものにできたことを感謝しなければいけない

 つかみたくてつかめなかった人に…

 つかませてくれた自分の能力に…

 しかし

 きみは 自分でも気づかないうちに

 それを当たり前だと思うようになった

 慢心したんだよ

 きみにとって肝心かなめの好機に

 いつもきみが慌ててしまうのは

 絶対ものにしなければ と意気込むあまり

 感謝を忘れ慢心した心の隙間から表れた

 強欲さに溺れてしまうからなんだよ

 そのことに気づけば

 きみは慌てずに高い能力を出して

 しっかりものにできるはずなんだ

 そのことを心に刻み込んでほしい