祖父母と孫の断絶はいつ頃から始まったのだろう。

少子高齢化社会と時を同じくした、と理解していいと思う。

毎年春、小学校の新入生は、

色とりどりのピカピカに光ったランドセルを背負って登校する。

お祖父ちゃんお祖母ちゃんからのプレゼントが多いかな。

ほとんどが同居していないお祖父ちゃんお祖母ちゃんで、

何かのときには孫たちの両親から頼りにされる。

財政出動の場合が多い。

だから、孫たちもお祖父ちゃんお祖母ちゃんを、

金づるのように見ている。

そのときは孫たちも嬉しいし、

はしゃぎたくなる。お祖父ちゃんお祖母ちゃんに、

ありがとうと言って甘える。

お祖父ちゃんお祖母ちゃんは福々しい笑顔になって、

遠く離れた自分たちの住まいへの帰路につく。

それだけのことだ、と言っては酷かな。

今は小学生でも中学年あたりになれば、

遠い田舎にいるお祖父ちゃんお祖母ちゃんと

オンラインで親しくつながっているケースもある。

しかし、それは少数派だろうね。
僕は20代の後半、2年ほどだったが、

保険の調査員をやっていたことがある。

全国各地へ出張した。

ローカル線を乗り継いで終点の駅からバスに乗って、

その終点で降りることもあった。

岬の突端の集落で、

突風に吹きつけられて体がふらついたこともあった。

それはともかく、

その頃は地方へ行って調査で歩けば、

どこにでも子供の姿が見られた。

午後も2時を過ぎると通りがかりの神社や、

お寺の境内から子供たちの声が聞こえた。

つい、こっちも一休みしようと境内に入ると園児や、

小学生の子供たちが遊んでいた。

お母さんたちの姿も目立った。

でも、特に目立ったのはまだ元気なお祖母ちゃんたちだった。

自分の孫も連れてきて見守っている人も多かったのだろう。

お祖父ちゃんたちもいた。

あるとき、

ベンチに1人掛けて、

元気に動き回る子供たちを、

ニコニコ見ているお祖母ちゃんがいた。

僕も少し歩き疲れていたので、

そのお祖母ちゃんと同じベンチに腰を下ろした。

そして、ほんの少し世間話をした。

当時、地方では珍しい一人暮らしの高齢者でした。
「お昼をすませて散歩がてらここにくるとほっとするんです。

子供たちのはしゃいだ声や、歓声が元気をくれるんですね。長生きの秘訣だと思って晴れた日は毎日ここへきて2時間ほど過ごします」

それから半世紀以上経ったのかな。

高齢者の夫婦が息子や娘達の一家と同居する率は、本当に少なくなった。

そのどちらかが先に逝けば、

当然、一人暮らしになる。

そういう高齢夫婦や、独り暮らしの高齢者が子供たちの声を耳にして、

騒音だと思うようになった。

子供が複数いる家庭の近くに住む一人暮らしの高齢者から、

苦情を言われる親は珍しくない。

子供の声がうるさいから何とかしてくれ、

といった通報が警察に寄せられることも稀ではなくなった。

昔は子供が元気に遊ぶ声に元気をもらい、

余生を楽しく過ごした高齢者が多かったのに、

これはどうしたことか。

いろんな要因が考えられる。

でも、1つの大きな要因は、

祖父母と孫世代の断絶が進んだということではないだろうか。

今の高齢者たちは、

小さな子供たちの甲高い声に慣れていない。

三世代同居が普通だった時代は、

孫はお祖父ちゃんお祖母ちゃんから社会の基本的ルールを学んでいた。

お父さんお母さんから教えられるより、

優しくて面白かった。

昔話や、絵本の読み聞かせを通して生命の尊さも学んだ。

口うるさい親から逃げるシェルターの役割もはたしていた。

3世代同居の家族が地方からもどんどん減少していく。

祖父母が担っていた役割を、

親は担えない。

これは由々しきことではないか。

このブログを読んでいただいている方々は、

親世代が多いかな。

いずれ高齢の域に入ったら、

地域でどんどん読み聞かせ活動に参加してほしい。

きっと、子供たちの喜びの声を聞くのが、

親世代のときとは違った意味で大きな楽しみになる、

と思う。