高校2年だったんだよ
駅からまっすぐ南へ伸びる大通りを1キロ以上歩くと
左側に僕の高校がある
そこに達するまで右側に高校が3つあった
いちばん駅寄りに音大の附属高校があったの
もっと駅寄りには国立大学が
大通りの両側に分かれて広大な敷地を誇っていたけど
ここでは関係ない

行きは左側の歩道を歩き
帰りは右側の歩道を歩いて通学した
なぜって
音大の附属高校は制服がなくて女子ばかりだったから
その子たちの後ろ姿を見て歩くのが楽しかったんだよ
色とりどりのセーター、スカート、ワンピースで
髪もポニーテール、長髪、男装の麗人風の断髪もいて華やかだったなあ
さすがに金髪や、赤毛に染めたのはいなかったけど

他の3校は男女共学のところでもみんな制服で
地味そのものだったから
後ろ姿を見るだけで ホントまぶしかった

ある子の後ろ姿にドキドキときめいて
帰宅してもときめきがおさまらなくなってね
ほとんどビョウキ状態になった
大柄でやや長い髪で
いつも原色のスカートを履いていて
ぷりっとしたお尻と
ふくよかで白くて真っ直ぐな足がチョウまぶしかった
その子の下半身の後ろ姿にいつもしびれたんだから

いつもその後ろ姿に出会えるとは限らなかったさ
でも 10回以上は出会えてそっとついて歩いたの
駅に着くまでの儚くて気弱なストーカーだった
その子の顔お見たのはたまたまで2回だけ
彫りが深いって解ったけど
強く印象には残らなかった
だって激しい羞恥に襲われて一瞬しか見れなかったもの

3年になってから出会えなくなった
1学年上だったんだと思うよ
しばらく心で引きずったけど
仕方ないかと自分でピリオドを打った

後年、思春期の思い出の女性とかいうテレビの企画で
その子のことを話したら探すということになった
何人かそれらしい人に行き着いたらしいけど
特定はできなかったのね
名前も知らなきゃ 住むところも知らなかった
んだから特定できるわけがない

今年の秋に
その附属高校から音大へ進んだ人が主催する
童謡を軸にしたコンサートに
読み聞かせで出演することになったの
その人を僕に紹介してくれた人は
別の音大を出た僕の友人の女性で
テレビの人に僕の初恋の人ではないかと問われたことがある人みたいよ
と意外なことを耳に入れてくれた
片想いの初恋ってことなのかなあ
懐かしく当時のその子の後ろ姿
それも下半身がありありと蘇ったの

その人を交えて3人でランチ会をしたけれど
後ろ姿では変貌度が高いゆえ特定できず
彫りの深い顔立ちに この人だ って
一瞬確信したけれど
やはり 特定はできなかった

せめて
こんにちは いつも後ろ姿を見ています
と一声かけておけば
その人も忘れようがなかったのに

なにしろ気弱なストーカーでしたから
夢幻の世界に等しいのです