BRAVO MOUNTAIN『釣れなくても「つり天国」現地インタビュー! 』 | 千客酩酊

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釣れなくても「つり天国」現地インタビュー! 名物オーナー&実釣「ブランド魚」レポート

1/5(金) 8:09配信
BRAVO MOUNTAIN

「つれないつり掘つり天国」釣れないの? 釣れるの? どっちなの?(撮影:水卜 ヤマト)

 今回筆者が訪れたのは、栃木県那須町にあるトラウト(マス)専門の管理釣り場「つれないつり掘つり天国」(以下つれないつり掘)。ルアー&フライの管理釣り場の激戦区として知られる栃木県で「つれないつり掘」というある意味、商売を放棄したかのようなユニークなネーミングで営業するこの釣り場に興味を惹かれたのだ。

■【画像】「つれないつり掘つり天国」で釣れるのかを実釣調査
 いったいどんな理由があってこのような名前にしたのか、オーナーに直接話をうかがってきた。そして何より気になるのは「魚は釣れないのか? 釣れるのか? どっちなの?」という「つれないつり掘」の核心部についても実際に釣りをして調査してきたので、ぜひ最後まで目を通していただきたい。
■釣り場名は、オープン前のある出来事が原因だった
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終始笑顔で話してくれた釣り場オーナーの秋元さん

 「ほんとうに釣れなくてさぁ、もう頭に来ちゃったんだよ!」

 施設の名前の由来についてそう話してくれたのは、釣り場のオーナーである「秋元」さん。ホームページでは自身を「頑固おやじ」と書いていたため、ちょっと気難しくて怖い人を想像していたが、とても物腰の軟らかい昭和イケメンのお父さんだ。

 釣り場がオープンする前、池の工事が終盤に差し掛かった頃に、試験的に池にマスを放流してみようという話になった。するとどこから情報を聞きつけたのか、見知らぬ釣り人がやってきて、魚を釣らせて欲しいと懇願され、許可したのだという。放流されたばかりの無垢な魚たちは、フライ(毛鉤)を疑うことなく口にして次から次へと釣れたそうだ。

 釣りの経験がほとんど無かった秋元さんは、そんなに簡単に釣れるのならと自分も試してみたところ、まったく釣れなかった。その後もたびたびやってくるフライフィッシングの釣り人は簡単に釣るのに自分にはまったく釣れない。あまりの貧果に頭にきた秋元さんは、ある文字を板に書いて池の前に掲げた。

 「つれないつり掘」という秋元さんの心情をそのまま書いたものだった。知人や関係者たちはこれを見て大いに盛り上がった。気をよくした秋元さんは、音の響き、語呂の良さから、施設名を「つれないつり掘つり天国」として、平成13年に管理釣り場をオープンした。

 前職では炭火で焼いた川魚(ヤマメ、イワナ、ニジマス、アユなど)を観光客にふるまうプロの焼き魚職人であった秋元さんだが、魚を釣るのはまったくの素人。施設名の由来はそんな秋元さんらしいとてもユーモラスなものだったのだ。

■自然豊かな広大な敷地でのんびり釣りが楽しめる

釣り場は3500坪もの広大な敷地の中にある

 「つれないつり掘」は日本屈指の観光地である那須高原にある。那須高原というと多くのテーマパークやゴルフ場、ショッピングモールなどが立ち並び、観光客の絶えない賑やかな場所を想像するかもしれないが、釣り場周辺はわずかに別荘地があるだけで、森と畑が広がる田舎の風情が感じられるとても静かな場所である。

 筆者が訪れたこの日はたまたまなのか、釣り場の大きさの割りにはお客さんの数が若干少ない印象を受けた。オーナーの奥様によれば「お客さんが多すぎると困るのよ!」とのこと。もちろんお客さんがまったく来ないのは問題だが、多すぎても対応しきれないので10人前後がちょうど良いと話す。この商売っ気の無さがなんとも潔く微笑ましいではないか。

 多数のアングラーで賑わう釣り場は、落ち着かないので苦手だという人や、釣りに集中したい人にとってはまさに理想的な釣り場といえるだろう。
■放流魚は、釣り人が憧れる「林ブランド」

 「つれないつり掘」で泳ぐ魚はすべて近隣にある「林養魚場(はやしようぎょじょう)」から仕入れたもの。林養魚場は国内で最古参の老舗養魚場で、ここで育てられた魚は「引きヨシ(釣れた時の引きが強い)、味ヨシ(味が美味しい)、見た目ヨシ(まるで天然魚のような綺麗な魚体)」の三拍子が揃った、トラウト派の管理釣り場愛好家のあいだでは大人気のブランド魚である。ちなみに「つれないつり掘」で泳ぐ林ブランドの魚は、スチールヘッドとドナルドソン(どちらもニジマス系)である。

 その味の良さからホテルや料亭からの引き合いも多く、コロナ禍明けの現在は値段も跳ね上がり仕入れの難しい魚だと聞く。もし釣りあげた際には、家に持ち帰って食べてみるといいだろう。赤身のとても美味しい魚である。

 ちなみに「つれないつり掘」には大きな池が3つある(1~3号池)。50を超える大型魚がたくさん泳ぐ1号池はキャッチ&リリース専用池なので、魚の持ち帰りは禁止されている。2号池と3号池(ともに40前後の魚が多く放流されている)に関しては釣り場のルール(匹数制限)の範囲内で魚の持ち帰りが可能(ただし生きたままの持ち帰りは厳禁)なのでよく覚えておこう。

■仲良しご夫妻がつくりだす癒し空間
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炭火でマスを焼いているオーナーの秋元さん。奥様と共にいろいろな楽しい話を聞かせてくれた

・管理人の飾らない、商売っ気のない感じが好き
・ここの良さは釣果では無く、親父さんとお母さんが作り出す本当に心が癒やされる空間です!
・手作り感満載の釣り場でアットホームな感じです。
・みなさん人柄が良く優しかったです。おじいちゃんが色々釣りのノウハウを教えてくれます。
 子どもたちは色々教わっていました。楽しい旅の思い出をありがとうございました!
・自称頑固(相当朗らかな)親父さんと奥さんにも癒されます。

 これらはすべて釣りで訪れた利用客がGoogleのクチコミ欄に書いたもの。これらのコメントを見ただけで釣り場の雰囲気の良さが目に浮かぶのではないだろうか。仲良しご夫妻がつくりだす癒しの空間にみんなヤラれてしまっているのである。

 「つれないつり掘」の公式インスタグラムもぜひ覗いてもらいたい。きっとオーナーご夫妻に会いにいきたくなるはずだ。
■そのネーミングとは裏腹によい釣りが楽しめた
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当日はトップウォーター(水面)とボトム(底)で魚の反応がよかった
 ここからはいよいよ「つれないつり掘」の核心部。実際に釣りをしてみた感想をお伝えする。筆者は1日券を購入して正味6時間ほどルアーフィッシングを楽しんだ。とにかく大物の引きを味わいという一心で1号池で大半を過ごして6匹の魚をキャッチした(バラシが5匹)。「つれないつり掘」という名前の割には意外にもあっさり釣れてしまったという感じだった。

 ただし、釣るのが簡単だった訳ではない。放流されてから時間がたち、釣り人のプレッシャーにさらされ続けて警戒心が強くなった魚が相手である。反応を見ながら頻繁にルアーを変えたり、釣り方を変えたりしながらなんとか釣り上げることができたという感じだった。

 これは釣り場のオーナー(秋元さん)も話していたことなのだが、まったくの釣り初心者には難易度の高い釣り場といえるだろう。運よく魚を放流するタイミングに立ち会えれば簡単に釣ることも可能だろうが、一日を通してコンスタントに釣るのは難しいはずである。初心者はベテランに同行してもらうのがよいだろう。

 それにしても釣れる魚はどれも素晴らしく、さすが林養魚場の魚といったところだ。どの魚も引きが強烈でしかも粘り強く何度もフック(釣り針)を伸ばされてしまった。一匹の魚から得られる満足度が非常に高いので、たとえ数が釣れなかったとしても気持ちよく帰れるのではないだろうか。

 ちなみに、気になる魚の放流についてだが、魚の持ち帰りが可能な2号池と3号池に関しては、来場者の数や来場者の釣れ具合をみながら不定期で実施(場内にある畜養池からの放流)。魚の持ち帰りが禁止されている1号池については、養魚場から魚を仕入れたタイミングで行っているそうなので参考にしてほしい。(※ これらは取材時の情報であり、今後変更される可能性あり)

■釣りのステップアップにおすすめの釣り場

釣りのステップアップにおすすめの釣り場。ぜひ一度出かけてみてもらいたい
 「つれないつり掘」について紹介させていただいたが、興味をもっていただけただろうか。釣り初心者にとっては難易度が高めの釣り場だといえるが、まったく歯が立たないほどではないと思う。とても攻略しがいのある難しさで、釣りのステップアップをはかりたいと願う人にとってはきっとよい練習場になるはずである。

 それでももし釣りに行き詰まってしまった場合には、休憩がてらオーナーご夫妻と会話してみるとよいかもしれない。ご夫妻の癒しの力で気分がリフレッシュされ、きっと釣りの良い攻略法が思い浮かぶはずである。気になった方は、ぜひ一度釣り場に出かけてみてもらいたい。

水卜 ヤマト(みうら やまと)
栃木県在住。釣り歴40年以上の団塊ジュニア世代。
淡水魚が好きで、特にサケ科魚類の見た目のよさと生態に大きな興味をもっている。
フィッシング&フィッシュ魚ッチングではつねに重いカメラを持ち歩くため肩こりが絶えないのが大きな悩み。

水卜 ヤマト

個人の意見
 お客様はよく釣れるのに「釣りが素人であるオーナーだけが釣れない」という釣り堀「つれないつり堀、つり天国」。
放流量が少なくて釣れないのに、オーナーがお客様へ「腕が悪い」と言ってしまう釣り場より、ずっと微笑ましい。