新刊『転がる検事に苔むさず』直島翔 小学館、面白かった! | 「絶望名人カフカ」頭木ブログ

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新刊『転がる検事に苔むさず』直島翔 小学館

すごく面白かった!

 

第3回警察小説大賞の話題作で、主人公は検事。

警察と検察って、ドラマとか見ていてもわかりにくいが、

初めてよくわかった。

それもそのはずで、

著者は新聞記者として検察庁を担当し、

父親が警察官だったそうだ。

 

 

転がる検事に苔むさず

 

 

主人公が魅力的だと、

「ほんとにこんな検事がいるの?(いてほしい!)」

ということが読者としては気になるが、

モデルがあるそうで、

「警察任せにせず、自分で被疑者と向き合い、供述を取っていく。担当記者時代、そういう熱意のある人に出会えて教示をいただいた」とのこと。

 

 

帯に「新人とは思えない安定感」という今野敏さんの言葉があるが、ほんとにそう思った。

細部の魅力を積み重ねるにはテンポが大切だと、ある脚本家さんがおっしゃっていたが、

堂々たるテンポで、さまざまな事実、感情、エピソードが積み重ねられ、読むほどに作品世界の魅力が増していく。

 

そして、

犯人と警察官と検事しか出てこない世界ではなく、それぞれに家族がいる。

そこまできちんと描かれている。

これがとても効いていた。

ネタバレになるといけないから詳しく書けないが、そのことが事件そのものにも関係してくる。

読み終えて、この世界にまた戻りたくて、もう続編が読みたくなっている。