カフカの『変身』の邦訳リストです‼️(2024年5月28日追記) | 「絶望名人カフカ」頭木ブログ

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『絶望名人カフカの人生論』『絶望読書』『絶望図書館』、NHK『絶望名言』などの頭木弘樹(かしらぎ・ひろき)です。
文学紹介者です(文学を論じるのではなく、ただご紹介していきたいと思っています)。
本、映画、音楽、落語、昔話などについて書いていきます。

 

月刊『みすず』(みすず書房)で、

「咬んだり刺したりするカフカの『変身』」

という連載をさせていただいています。

隔月連載で、第1回が8月号で、第2回が10月号。

その10月号が刊行されました。

https://www.msz.co.jp/book/magazine/

 

 

その10月号の連載の中で、

「くわしくはブログのほうで」

ということを2箇所ほど書きました。

カフカの『変身』の邦訳リストと、

英訳リストについてです。

連載でそれらをすべて載せてしまうと、

それだけで終わってしまうからです。

 

というわけで、

その2つのリストをブログのほうに掲載させていただきます。

 

それと、

連載の中で、カフカの『変身』の主人公の名前は、

グレゴールの場合とグレーゴルの場合があるということを書きましたが、

そのリストも合わせて掲載させていただきます。

つまり、計3つのリストを掲載させていただきます。

 

なお、リストの作成は、

校正者で、個人的にも親しくさせていただいている、

岡上容士(おかのうえ・ひろし)さんが

ほとんど行ってくださいました。

この場を借りて、御礼申し上げます。

ここまで詳細なリストは、これまでなかったと思いますので、

ご興味のある方には、いくらかお役に立てるのではないかと思います。

連載と合わせてお楽しみいただけましたら幸いです!

 

 

カフカの『変身』の邦訳リストです!

 

カフカの『変身』の英訳リストです!

 

カフカの『変身』のグレゴール・グレーゴルのリストです!

 

 

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カフカの『変身』の邦訳リストです!

 

 

○1952年6月1日発行 高橋義孝・訳 文芸誌「新潮」1952年6月号

 

○1952年7月28日発行 高橋義孝・訳『變身』(のち『変身』)新潮文庫(1966年、1985年、2011年改版。Kindle版もあり)

 

○1952年7月30日発行 中井正文・訳『變身』(のち『変身』)角川文庫(1968年、2007年改版。Kindle版もあり。ただし、1968年の版に基づいている)

 

○1953年7月31日発行 高橋義孝・訳『カフカ全集 第三巻變身・流刑地にて・支那の長城・觀察(他三十八篇)』新潮社

 

○1953年12月20日発行 中井正文・訳『三笠版 現代世界文學全集26 カフカ アメリカ・變身 他五篇』三笠書房

 

○1954年7月20日発行 高橋義孝・訳『現代世界文學全集7 カフカ 審判・變身・流刑地にて』新潮社

 

○1958年1月7日発行 山下肇・訳『変身 他一篇』岩波文庫

 

○1960年4月10日発行 原田義人・訳『世界文學大系58 カフカ』筑摩書房(青空文庫で公開。それに基づいたKindle版も多数あり)

 

○1961年10月25日発行 原田義人・訳『世界名作全集11 若きヴェルテルの悩み マルテの手記 変身』筑摩書房

 

○1962年3月23日発行 原田義人・訳『世界文学全集29 カフカ 城 変身』河出書房新社

 

○1964年1月15日発行 高橋義孝・訳『世界文學全集48』新潮社

 

○1966年4月10日発行 辻瑆・訳『世界の文学39 カフカ 城 変身 流刑地にて 判決』中央公論社

 

○1966年8月15日発行 高本研一・訳『ドイツの文学 7 カフカ 変身 審判』三修社

 

○1967年9月10日発行 原田義人・訳『世界文学全集 第2集 第17巻 カフカ 城/変身』河出書房

 

○1967年10月18日発行 高安国世・訳『世界文学全集37 カフカ/リルケ』講談社

 

○1968年3月20日発行 原田義人・訳『カラー版 世界文学全集38 カフカ 城/変身 サルトル 水いらず/汚れた手/他』河出書房

 

○1969年1月20日発行 神品友子・部分訳『黒いユーモア選集 下巻(セリ・シュルレアリスム 1)』国文社

 

○1969年5月10日発行 高橋義孝・訳『世界文学全集56 カフカ 審判/変身 他』集英社

 

○1969年7月10日発行 菊池武弘・抄訳『変身―抄―(ニュー・メソッド 独文対訳シリーズ2)』評論社

 

○1969年10月1日発行 高本研一・訳『ドイツの名作 カフカ 変身・審判』三修社

 

○1969年10月30日発行 高橋義孝・訳『世界文学全集 39』新潮社

 

○1970年10月20日発行 高橋義孝・訳『新潮世界文学38 カフカ』新潮社

 

○1971年6月30日発行 高橋義孝・訳『世界文学全集44』新潮社

 

○1971年7月1日発行 高安国世・訳『変身・判決・断食芸人 ほか二編』講談社文庫

 

○1971年10月20日発行 高安国世・訳『世界文学ライブラリー24 カフカ 変身/判決 ほか』講談社

 

○1972年8月15日発行 原田義人・訳『筑摩世界文學大系65カフカ』筑摩書房(1979年11月30日発行の第5刷のみ、65ではなく63となっている)

 

○1973年1月20日発行 川崎芳隆・訳『変身 他四編』旺文社文庫

 

○1974年5月25日発行 城山良彦・訳『愛蔵版 世界文学全集30 リルケ カフカ』集英社

 

○1974年10月1日発行 原田義人・訳『近代世界文学29 カフカ』筑摩書房

 

○1976年6月15日発行 片岡啓治・訳『世界文学全集5 変身/黒猫 他5編』研秀出版

 

○1977年12月1日発行 立川洋三・訳『世界文学全集33 カフカ』学習研究社

 

○1977年12月15日発行 原田義人・訳『世界の文学Eterna38 第36巻 若きヴェルテルの悩み マルテの手記 変身(Chikuma Classics)』筑摩書房

 

○1979年発行 種村季弘・翻案『グラフィック版 世界の文学 別巻1 世界幻想名作集』世界文化社

 

○1979年1月25日発行 城山良彦・訳『世界文学全集74 カフカ ヴァルザー』集英社

 

○1980年11月25日発行 川村二郎・訳『決定版 カフカ全集1 変身、流刑地にて』新潮社

 

○1980年11月30日発行 原田義人・訳『河出 世界文学大系58 カフカ』河出書房新社

 

○1988年1月30日発行 中井正文・訳『変身(同学社対訳シリーズ) 』同学社

 

○1989年10月10日発行 原田義人・訳『河出 世界文学全集20 カフカ/サルトル 城/変身 水いらず/汚れた手/他』河出書房新社

 

○1989年12月20日発行 城山良彦・訳『集英社ギャラリー[世界の文学]12 ドイツⅢ・中欧・東欧・イタリア』集英社

 

○1993年11月20日発行 辻瑆・訳『新装 世界の文学 セレクション36 第28巻 カフカ 城 変身 流刑地にて 判決』中央公論社

 

○1995年1月10日発行 三原弟平・訳『カフカ「変身」注釈』平凡社

 

○1996年10月4日発行 種村季弘・翻案『世界幻想名作集』河出文庫

 

○2001年6月15日発行 池内紀・訳『カフカ小説全集4 変身ほか』

 

○2003年1月20日発行 川崎芳隆・訳『変身』グーテンベルク21(Kindle版のみ)

 

○2004年9月16日 山下肇、山下萬里・訳『変身・断食芸人』岩波文庫(Kindle版もあり)

 

○2006年3月30日発行 池内紀・訳『変身(カフカ・コレクション)』白水Uブックス

 

○2007年8月20日発行 神品友子・部分訳『黒いユーモア選集2』河出文庫

 

○2007年9月20日発行 丘沢静也・訳『変身/掟の前で 他2編』光文社古典新訳文庫(Kindle版もあり)

 

○2008年11月10日発行 浅井健二郎・訳『カフカ・セレクション Ⅲ 異形/寓意』ちくま文庫

 

○2011年3月31日発行 野村廣之・訳『フランツ・カフカ入門』三恵社

 

○2012年1月17日発行 酒寄進一・翻案『変身』牧野良幸・画 長崎出版

 

○2012年5月1日発行 川島隆・部分訳『カフカ「変身」2012年5月(100分de名著)』NHK出版

 

○2013年3月14日発行 真鍋宏史・訳『変身』Amazon Services International, Inc.(Kindle版のみ)

 

○2015年4月10日発行 須田論一・翻案『子どもの想像力を豊かにする カフカ童話集』メトロポリタンプレス

 

○2015年10月25日発行 多和田葉子・訳(『変身(かわりみ)』)『カフカ(ポケットマスターピース01)』集英社文庫ヘリテージシリーズ(Kindle版もあり)

 

○2018年10月6日公開 田中一郎・訳『変身』(ネット公開)

 

○2022年02月25日発行 川島隆・訳『変身』角川文庫(Kindle版もあり)

京都大学文学部准教授でカフカの研究者である川島隆先生の翻訳です。最新のカフカ研究に基づいており、今後はこの翻訳がスタンダードとなっていくことでしょう。

 

○2024年5月5日発行 本田雅也・訳『対訳 ドイツ語で読む「変身」CD付』白水社

カフカ没後100年で出版された本。全訳ではなく、全体の3分の2ほど。冒頭文で「虫」を「不快虫」と訳している。

 

 

〔参考〕英訳からの重訳、英語でのテキスト版

 

○1982年7月10日発行 ナボコフ・著 野島秀勝・訳『ヨーロッパ文学講義』ティービーエス・ブリタニカ(ナボコフの講義に『変身』の英訳が複数の箇所で引用されており、それらからの重訳。Muir訳がベースになっているが、ナボコフが修正している箇所もあり)

 

○2007年4月25日発行 滝口峯子・注釈(全訳はなし)『The Metamorphosis 変身(講談社英語文庫)』講談社インターナショナル(Muirの英訳を使用)

 

○2012年7月30日発行 金原瑞人・注釈(全訳はなし)『変身THE METAMORPHOSIS (金原瑞人MY FAVORITES) 』青灯社(Appelbaumの英訳を使用)

 

○2013年1月20日発行 ナボコフ・著 野島秀勝・訳『ナボコフの文学講義 下』河出文庫(内容は1982年刊のものと同じ。こちらはKindle版もあり)

 

○2013年8月30日発行 柴田元幸・訳(冒頭のみ。Appelbaumの英訳からの重訳)『書き出し「世界文学全集」』河出書房新社

 

○2016年3月1日発行 注釈者不明(編集部? 巻末にアルファベット順で単語と熟語の訳のみがあり。全訳はなし)『Metamorphosis 変身(ラダーシリーズ)』IBCパブリッシング(Nina Wegnerによる抄訳)

 

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カフカの『変身』が邦訳されるまでのいきさつについては、

今回調べて、連載のほうに書いておりますので、

よかったらお読みください。

 

オマケとして、

日本で最初の『変身』の翻訳が掲載された、

文芸誌「新潮」1952年6月号の

目次です。

(表紙は連載のほうで掲載しました)

 

 

坂口安吾の『夜長姫と耳男』も

同じ号に掲載されていたことなどがわかります。

 

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リストを見ていて、まず驚くのは、

カフカの『変身』が毎年のように出版されていたということ!

そして、文学全集がとにかくたくさん出ています!

文学にとっては、とてもいい時代だったことがわかります。

 

リストを見ていて不思議なのは、

たとえば高橋義孝訳は『新潮』で発表されて以来、

ずっと新潮社の本に掲載されていたのに、

途中で集英社の文学全集にも収録されています!

乗り換えたわけではありません。

同時期の新潮社の文学全集にも収録されているのです!

そしt、その後も新潮社から出ています。

 

原田義人の訳も、筑摩書房から出ていたのが、

河出書房からも出るように。

 

これはどういう事情だったのでしょう?

昔は、出版社どうし協力し合って、文学の普及に力を入れていたのでしょうか?

事情をご存じの方がいらしたら、

お教えいただけますと嬉しいです<(_ _)>

 

 

カフカの『変身』の邦訳リストです!

 

カフカの『変身』の英訳リストです!

 

カフカの『変身』のグレゴール・グレーゴルのリストです!