拙著『絶望読書』(飛鳥新社)が韓国語に翻訳されました!
外国語に翻訳してもらえるというのは光栄なことで、
ありがたいことです。
表紙もなかなか素敵です。
で、担当の編集の方が、なかなかやる気のある方のようで、
本の宣伝のために、
韓国のイケメン俳優さんに、推薦文を書いてもらったとのこと。
(推薦文というのは、日本の文庫についている巻末の解説のようなもののことのようです)
おおっ、それはすごいな!とありがたく思っていました。
シン・ドンウクという方とのこと。
私は知らなかったで、ネット検索してみたところ、
たしかに、イケメンです!
どんな推薦文を書いてくれたんだろうと思っていたら、
その編集さんが、わざわざ日本語に訳して送ってきてくださいました。
で、どれどれと読み出してみたわけですが、
ん?
いきなり最初の文が、
「この本はおもしろくない。」
で始まります。
その後も、
「実は、もともと推薦文を書くつもりなど全くなかった。」
「実はこういう類の本はあまり好きではない」
などと続く。
えっ? これ、推薦文なんだよね?
という私の疑問に答えるかのように、
推薦文はさらにこう続く。
「こんな風に推薦文を書いたら、通常おもしろく読んだという感嘆が続くに決まっている。」
ところが、
「やっぱり面白くなかった。すごい情報を与えてくれる本でもなければ、小説のように作家の文章が素晴らしい本でもなかった。」
あんまり驚いて、3回くらいくり返し読んでしまった。
これが本に載るのかと思ったら、青ざめた。
どこが推薦文なのか。むしろ営業妨害だ。
なんの恨みがあって、こんなにディスるの……。
いやもう、ほんと驚きました。
日本の本でも、文庫の解説で、「この人、本当はこの本のこと、あんまり評価していないのでは?」と思わせるものに出会うことはあります。
しかし、ここまでけなしてあるものは、まずないでしょう。
ショックでよろよろになりながら、
さらにひどいことが書いてあるのではとおびえながら、
もう読むのをやめたほうがいいのかなと思いながら、
それでも、気になって、続きを読んでみました。
すると、
「著者は自分が珍しい病を得てから十三年間読んだ本を紹介するのに力を注ぐが、その話し方がまるで毎日聞くラジオDJの暖かい声のように優しかった。絶望に落ちたらこうやってみろと、自分はこんなやり方で耐えてきたと……。しかし著者は本の終りまで自分の哲学とやり方を押し付けない。ただ絶望に落ちて苦しんでいる読者を慰めてくれるだけだ。
「頑張ろう。絶望を乗り越えろと押し付けないから。ただ、こういうやり方があるけど、君はどう思う? これはねえ、僕が自分で経験した話だよ。僕が絶望の中で経験した話だよ」
この本の中で著者はただ絶望に落ちていた自分の話を優しく聞かせてくれながら、しんみり自分だけのやり方を提示する。本を読みながら、著者はとても暖かい人だろうなという気がした。彼の文体には遠慮深くて配慮のある性格がそのまま込められていた。なれなれし過ぎずに、強く主張しすぎずに…… なんか正しくて優しい口調というか。そんな暖かい感じの中で、僕はこの本を三時間で読み終えた。昼飯も抜かした。飲もうと思って置いておいたコーヒーカップも机の上にそのまま置きっぱなしだった。僕が読んだ本のなかで一番早く読んだ記録だった」
あれ?
なんだか、風向きが変わってきました。
「この本は共感のための本だ。試練と絶望の中にいる人々が共感するための本。試練を長らく経験した僕は、著者の言葉が本物だというのを分かる。」
「著者は自分が苦しみの中でどうやって成長できたかについて、まっすぐで優しい口調で僕たちに話してくれる。」
「僕はこの本を、著者の絶望の経験を共有したいと思う人、またこの本の第2部で述べられているように、僕らが生きていく中で遭遇する様々な絶望の瞬間を共感したいと思うすべての人にお勧めする。」
すべてを引用するのは問題があるかもしれないので、
引用はこれくらいに留めておきますが、
なんと後半は、とても共感に満ちた、
素晴らしい言葉が続くのです。
じゃあ、なんであんな前半を書いたんだ?
と不思議でしたが、
考えてみると、韓流ドラマのイケメンって、
このパターンですよね。
主人公の女性に、やたらひどいことを言う。
で、女性もすごく頭にくる。
でも、その後、いろいろあって、好きになるわけですが、
よくまあ、あんなひどいことを言ったやつを好きになるなあと思ってました。
でも、これ、好きになりますね!
最初にあんまりショックを与えられたので、
後半でほめられると、
もうなんか「なんて素敵な人なんだ!」となってしまいました。
この手は使えますね。
私もやられてしまいました。
このイケメン俳優の出ているドラマを何か見ようかと思います。
と思って、さらにこの人について検索してみたら、
なんと、この人、難病でした!
こんなにイケメンなのに驚きました。
もちろんイケメンは難病にならないわけではありませんが、
人生を謳歌している感じなのに、
闘病で苦しんでいたとは……。
こういう記事がありました。
闘病中のシン・ドンウク、辛い過去に涙「病気で失神し、起きたら歯と腕が折れていた」
評価が9.6なので、
きっとかなりいい評価なのではないかと思います。
(10点満点だと思うのですが、まさか20点満点とかではないですよね)
この推薦文のおかげかもしれません。