『復活珍品上方落語選集』3冊のオススメ! 滅んだ噺の中にこそ、掘り出し物が! | 「絶望名人カフカ」頭木ブログ

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『絶望名人カフカの人生論』『絶望読書』『絶望図書館』、NHK『絶望名言』などの頭木弘樹(かしらぎ・ひろき)です。
文学紹介者です(文学を論じるのではなく、ただご紹介していきたいと思っています)。
本、映画、音楽、落語、昔話などについて書いていきます。

昨日、『米朝落語全集 増補改訂版』全八巻のお話をしたので、
それに関連して、
他の貴重な落語集についても。


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この3冊もとても貴重なものです。
タイトルからもわかるように、
「すでに滅んでしまい、今日では舞台に掛けられることのないネタや、
 稀にしか上演されなくなってしまった珍品を集めた落語集」
というものです。

こういう本は、本当にありがたいです。
どうしても、講座にかけられやすい噺というのと、そうでない噺というのがあります。
面白くないから滅んでいくということも、もちろんありますが、
演者にとってトクになるソンになるということもあるそうです。
つまり、自分の芸を見せやすい噺と、見せにくい噺。
見せにくい噺はやり手がなくなって滅んでいくわけですが、
でも、噺自体は面白いということもあります。

また、面白くない噺にしても、またいつどんなふうに面白くよみがえるかわかりません。
たとえば、古今亭志ん生の十八番として大人気の「火焔太鼓」にしても、
もともとはあまり面白くなかった噺を、志ん生が面白くしたそうです。

それに、つじつまが合っていなかったり、洗練されてなかったり、よくわからなかったり、
そういう噺にこそ、
じつは物語の原初の力が残っていたりします。
滅んだような噺の中にこそ、他に得がたい掘り出し物があるのです。

というわけで、
こういう本が、
しかも3冊も出ているということは、
なんとも嬉しく、ありがたいことです。

著者は、四代目桂文我師匠。
亡くなった桂枝雀師匠のお弟子さんです。
桂枝雀師匠は、桂米朝師匠のお弟子さんなので、
桂文我師匠は、桂米朝師匠の孫弟子にあたる方です。

この桂文我師匠は、滅んでいく噺の復活にとても力を入れておられます。
米朝師匠のその方面の業績を、継いでいかれるお方ではないかと期待しています。
こういう方がおられるということは、
落語好きにとって、そして物語好きにとって、なんとも福運です。

落語好きの方だけでなく、
物語好きの人にはオススメの3冊です。