本ブログに記載した嘉悦報告書のミスに関して、大阪市に公益通報を行なってきましたが、

ついに、大阪市は嘉悦報告書の誤りを公式に認めました。

 

https://drive.google.com/file/d/1ixebmumgsit6QtLNdsgctVEu-NeFuuip/view

上記ファイルはダウンロードして、自由に宣伝等に使ってくださいね。

 

「通報内容を踏まえ報告書を見る限り、仕様書に明確に違反するものではないが、複数の記載誤りと思われる箇所が確認された。」「複数の記載誤りと思われる箇所が確認されることから、本件報告書の内容を市の取り組みとして取り扱う場合は、必要な確認を行い、適切な対処をとったうえで取り扱われたい。」

 

市会や法定協議会で嘉悦報告書をあれだけ追求されても、動かなかったのに、一市民の公益通報でここまでの答弁が引き出せたら、大満足です。大阪市公正職務審査委員会の皆様、ありがとうございます。

あと、通報日は「令和元年1月1日、」でなくて、「令和2年1月1日、」ですね。

 

特に、後段の「本件報告書の内容を市の取り組みとして取り扱う場合は、必要な確認を行い、適切な対処をとったうえで取り扱われたい。」が重要で、これまでの経緯から、大阪市役所には嘉悦報告書の「必要な確認を行い、適切な対処をと」れる職員はどうもいないようですから、嘉悦報告書は大阪市として使用することは困難で、事実上の死に体となるのではないでしょうか。

 

大阪市民一人ひとりの思いが、ふるさと大阪市を守るのです。

 

スルメは噛めば噛むほど、味が出るかもしれないが、都構想の「嘉悦報告書」は読めば読むほどウソが見つかる。という訳で、今日も嘉悦報告書の新たに発覚したウソを紹介しよう。

 

嘉悦報告書 57ページ〜71ページ、99ページ

マクロ計量モデルは、これまで書いたようにすでに多くのミスが見つかっています。本日のテーマは「稼働率」です。

マクロ計量経済モデルとして6個の外生変数、7個の内生変数を用いて7本の連立方程式体系を構築しています。58ページ冒頭に「域内実質総生産は、民間資本ストック(及びその稼働率)、社会資本ストック、就業者数で決定される(生産関数)。」とあります。「図7-1-1 モデルの概要」が示されます。「稼働率」は主要な外生変数の一つです。

 

嘉悦報告書は以下に示すように、「稼働率(実稼働率)」、「稼働率指数」、「鉱工業指数(IIP)」を混同して記載しており、用語を正確に使用していませんので、注意して、読みましょう。

 

59ページの(表7-1-1)「データの出所及び加工方法」(大阪府)において、各経済指標(変数)の略語について記載されています。系列の9番目に「稼働率」「IIP」、出所「経済産業省」とあります。62ページの(表7-2-1)「データの出所及び加工方法(東京都)」においても、各経済指標(変数)の略語について記載されています。系列の2番目に「稼働率」「IIP」、出所「経済産業省」とあります。

63ページに冒頭に生産関数の推定式(7-2-4)式が示されます。

log(Yt/Lt)=β01log(IIPt*KPt-1/Lt)+β2log(KGt-1)+ut (7-2-4)式

「表7-2-2 推定結果」に係数の推定結果が示されます。「LOG(IIP*KP/L) β1」、「DM0818*LOG (IIP*KP/L) β1’」と示されます。

 

65ページにおいて、計測の前提となる基準ケース(ケース0)のシミュレーションを行っています。(表7-3-1)「基準ケースの想定」の外生変数の2番目に「IIP」「足下のデータで延長」とあります。65ページ本文の5行目に「外生変数のうち、稼働率、実質金利は2015年度の値をそのまま延長する。」とあります。

でも、これウソなんです。

補論99ページ「表A7-3-2 シミュレーション結果(基準ケースその2)」の「IIP」を見ると、IIPの列には2013年を100.00とする100前後の単位のない数値が示されます。この表を見ることで、嘉悦報告書が「稼働率」「IIP」と呼んでいる外生変数は、「稼働率指数」のことであることがわかります。

しかし、(表A7-3-2)を見ると、実質金利[IPR]は2015年度の値をそのまま延長してますが、稼働率指数[IIP]は2015年度の値98.00をそのまま延長しておらず、2016年度は98.60、2017年度以降は2017年度の値101.70をそのまま延長しています。

よって、65ページ本文5行目の記述は間違いです。正しくは「稼働率指数は2017年度、実質金利は2015年度の値をそのまま延長する。」です。

もしくは、65ページ本文5行目が正しいとして、マクロ計量経済モデルのシミュレーション全てが、間違いで意味がないと考えることもできます。

 

当たり前ですが、「IIP」とは経済産業省が発表する鉱工業指数のことで、鉱工業指数(IIP)を構成する生産指数、出荷指数、在庫指数、生産能力指数などの指数の一つが、稼働率指数です。稼働率指数は基準年の稼働率を100として表した指数であり、稼働率(実稼働率)とは異なります。実際に使用できるデータは稼働率指数なので、経済学者にとっては当たり前かもしれませんが、一般市民も読む報告書なのですから、正確な用語を使うべきだと思います。

私は心が広いから、細かい誤植は許してあげるけど、税金1000万円もらっているのだから、ちゃんと校正すべきです。

 

嘉悦報告書61ページから64ページ 

7章.マクロ計量経済モデルによる経済効果 2節.社会資本の経済効果

コブ・ダグラス型生産関数を示して、社会資本ストック、民間資本ストックでそれぞれ偏微分して、社会資本、民間資本それぞれの限界生産力を求めています。62ページに「大阪府域については、2007年を境に構造が大きく変化しているので係数ダミーを用いていることにしたため、2007年度以前と2008年度以降とで係数が異なる。」とあります。

63ページに推定式(7-2-4)式が示され、「表7-2-2 推定結果」に係数の推定結果が示されます。

「DM0818*log(IIP*KP/L) β1’」「DM0818*log(KG) β2’」とありますが、意味がわかりません。

 (表7-2-2)の下に、「注2)推定期間は、いずれも1997年度から2015年度である。」とありますから、これはダミー係数を用いた2008年から2015年を表す「DM0815*log(IIP*KP/L) β1’」「DM0815*log(KG) β2’」の誤記であると推測されます。

 

93ページ

補論「表A7-1-1 マクロ計量経済モデル方程式体系」においても、数式eq1に「表7-2-2 推定結果」の「大阪」の結果が再掲されています。

 本論と同様に、「DM0818*log(IIP*KPR(-1)/L)」「DM0818*log(KGR(-1))」とありますが、これはダミー係数を用いた2008年から2015年を表す「DM0815*log(IIP*KPR(-1)/L)」「DM0815*log(KGR(-1))」の誤記であると推測されます。

 

69ページ 本文2〜3行目

ケース1のシミュレーション結果は「基準ケースとの比較で、実質域内総生産は、10年間の累積504.6億円である。」とありますが、正しくは、「基準ケースとの比較で、実質域内総生産の増加額は、10年間の累積504.6億円である」です。

69ページのケース2のシミュレーション結果は「基準ケースとの比較で、実質域内総生産の増加額は、ケース2-1(最大)で10年間累積778.2億円、ケース2-2(通常)で10年間累積641.5億円である。」と正しく記載されています。

 

嘉悦報告書72ページから75ページ 

7章.マクロ計量経済モデルによる経済効果 4節.特別区設置に伴う経済効果

73ページ 本文2〜3行目

ケース3のシミュレーション結果は「基準ケースとの比較で、実質域内総生産は、10年間の累積5033.4億円である。」とありますが、正しくは、「基準ケースとの比較で、実質域内総生産の増加額は、10年間の累積5033.4億円である。」です。

74ページ 本文5〜7行目

ケース4のシミュレーション結果は「基準ケースとの比較で、実質域内総生産は、ケース4-1(最大)で10年間累積1兆505.6億円、ケース4-2(通常)で10年間累積7769.4億円である。」とありますが、正しくは、「基準ケースとの比較で、実質域内総生産の増加額は、ケース4-1(最大)で10年間累積1兆505.6億円、ケース4-2(通常)で10年間累積7769.4億円である。」です。

 

77ページの(表8-1-2)「マクロ計量経済モデル(まとめ)」においても、総合区の「実質域内総生産 505億円〜778億円」、「含む波及効果553億円〜853億円」、特別区の「実質域内総生産5033億円〜1兆0506億円」、「含む波及効果5515億円〜1兆1511億円」と記載されていますが、正しくは「実質域内総生産の増加額」と記載すべきです。

 

あまり細かい誤植を追求するつもりはないけど、税金1000万円もらっているのだから、きちんと校正すべきだよね。

 

嘉悦報告書22ページ 

5章.政策効果分析による総合区の経済効果  1節.行政区の財政効率化効果

大阪市、横浜市、川崎市、浜松市、岡山市の各行政区の人口、面積、1人当たり歳出額を用いて、歳出関数の係数を最小二乗法で推定し、得られた係数を用いて、大阪市において検討されていた8総合区の1人当たり歳出理論値を計算しています。

y^=β0^+β1^pop+β2^(pop)23^area+β4^dummy (5-1-4)式が示されます。

ここでは「^(ハット)」は累乗ではなく、理論値もしくは最小二乗推定量の意味です。

「ここで、y^は、1人当たり歳出(理論値)、β1^からβ4^は、(5-1-1)式を最小二乗法によって推定することで得られた最小二乗推定量である。」とありますが、「β1^からβ4^」は誤りで、正しくは「β0^からβ4^」です。

 

46ページから47ページ

6章.政策効果分析による特別区の経済効果 1節.基礎自治行政の財政効率化効果

全国の市町村の人口、面積、1人当たり歳出額を用いて、歳出関数の係数を最小二乗法で推定し、得られた係数を用いて、現在検討されている4特別区の1人当たり歳出理論値を計算しています。

「log(y^)=β0^+β1^log(pop)+β2(log(pop))23^log(area)+β4^dummy (6-1-4)」式が示されます。

ここでは「^(ハット)」は累乗ではなく、理論値もしくは最小二乗推定量の意味ですが、よく見ると、「β2」だけ、「^」を付け忘れています。

「ここで、y^は、1人当たり歳出(理論値)、β1^からβ4^は、(6-1-1)式を最小二乗法によって推定することで得られた最小二乗推定量である。」とありますが、「β1^からβ4^」は誤りで、正しくは「β0^からβ4^」です。

 

まあ、こんなんは許しといたろ。

これも、嘉悦報告書のいい加減な誤植の話。

 

嘉悦報告書65ページ

7章.マクロ計量経済モデルによる経済効果 3節.総合区設置に伴う経済効果

マクロ計量経済モデルとして6個の外生変数、7個の内生変数を用いて7本の連立方程式体系を構築しています。

59ページの(表7-1-1)「データの出所及び加工方法」において、各経済指標(変数)の略語について記載されています。

65ページにおいて、計測の前提となる基準ケース(ケース0)のシミュレーションを行っています。「基準ケースにおける外生変数の想定は表7-3-1の通りである。」とあり、(表7-3-1)「基準ケースの想定」が示されます。

 

(表7-3-1)の外生変数の一番下に「UKPG」「0%で延長」とありますが、UKPGという変数(略語)は(表7-1-1)にも、どこにも定義されていません。

おそらく、(表7-1-1)における「社会資本計測上の誤差」の略語である「UKGR」と書くべきところを、「UKPG」と誤記したものと65ページのその後の本文から推測されます。

また、93ページの補論(表A7-1-1)の数式eq7、並びに99ページの補論(表A7-3-2)を見ると、該当すると思われる変数は「UKGR」と思われ、「UKGR」と書くべきところを、「UKPG」と誤記したものと推測されます。

 

しかし、一般的には補論よりも本編での定義が優先されますから、報告書の本編において、連立方程式の外生変数のうちの一つの定義を間違っているということは、このシミュレーション自体が意味を持たないことになります。しかも、その後の総合区のケース1,2-1,2-2、特別区のケース3,4-1,4-2は公的固定資本形成(FGR)以外の外生変数は「基準ケースと同様である」とあり、さらに実質域内総生産の基準ケースとの差分の10年間の累積値を計算しているので、基準ケースにおける想定で間違っているということは、すべてのケースのシミュレーションは意味を持たないことになります。

 

嘉悦報告書は税金1000万円もらっておいて、まともに校正作業もしてへんねんで。

数学の行列って知ってますよね。私たちの世代は高校数学の「代数・幾何」で、行列を勉強しました。逆行列とかありましたよね。

今の高校数学課程からは、行列はなくなりましたので、大学に入ってから勉強するそうです。なので、行列が出来ない大学生は当たり前。でも、嘉悦大学「教授」も行列ができなかったという話。

 

嘉悦報告書36ページから41ページ 

5章.政策効果分析による総合区の経済効果 3節.府市連携による経済効果

5章3節においては、産業連関分析を用いて府市連携による経済効果に関して検討しています。

産業連関表の見方については、嘉悦報告書においても説明されています。

嘉悦報告書の説明は分かりにくいって言う人は、「産業連関表」で検索してみて。もっとわかりやすい説明のサイトもあるよ。

産業連関表作成は国(総務省)や都道府県、市等において一般的に行われており、それらのホームページにおいても産業連関表の見方についての説明が行われていることから、嘉悦報告書の説明と対比しました。

 

36ページ「(2)モデル」において2部門に単純化した大阪府の産業連関表の基本的なモデルについての説明が始まります。37ページに(図5-3-1 基本取引表)が示されます。収支均衡式(5-1)、需要均衡式(5-2)が示されます。

x11+x12+F1+E1-M1=X1 (5-2)

x21+x22+F2+E2-M2=X2

これは正しいものです。

 

次に嘉悦報告書では「ここで、部門iが部門jから投入した額xijを部門jの生産額Xjで除した値をaijとすれば、これは部門iの生産物を1単位生産するために必要な部門jからの投入額を表し、投入係数と呼ばれる。」とあります。(5-3)式においてaij=xij/Xjと定義されています。(5-3)式は正しいです。

しかし、投入係数の説明が間違っています。正しくは『部門jの生産物を1単位生産するために必要な部門iからの投入額』です。

 

「(5-2)式に(5-3)式で求めたxij=aijXjを代入すれば以下が得られる。」

a11X1+a12X1+F1+E1-M1=X1 (5-4)

a21X2+a22X2+F2+E2-M2=X2

とありますが、(5-4)式は間違っています。代入しても(5-4)式は得られません。正しい式は、

a11X1+a12X2+F1+E1-M1=X1 (5-4)’

a21X1+a22X2+F2+E2-M2=X2

 

「これを行列で表記すれば次のようになる。」とありますが、(5-5)式自体は正しい式に戻っていますが、「これ、すなわち誤った(5-4)式」を行列表記しても、(5-5)式にはなりませんから、誤った文です。(5-4)’式を行列表記すれば、(5-5)式になります。嘉悦学園は計算せずに、結果の式だけを他の教科書から写したのでしょうか。(5-6)のベクトル表記の式は正しいです。

AX+F+E-M=X (5-6)

 

次の移輸入率mi の定義式が致命的な誤りです。37ページの最後に「ここで、部門別の府内需要に占める移入・輸入の割合を示す移輸入率miと定義すると以下のようになる。」とあります。

38ページ冒頭に、

mi=Mi/ai1Xi+ai2Xi+Fi (5-7)

とありますが、間違っています。(5-7)式の分母は部門iにおける中間需要と最終需要の和ですから、投入係数aij=xij/Xjの定義(5-3)式から正しい式は、

mi=Mi/ai1X1+ai2X2+Fi (5-7)’となります。

(5-7)式は一般的には誤りでも、miの定義式ですから、この報告書では嘉悦はこのように定義したということです。以下では嘉悦による誤った定義のmiをmi[嘉悦]と書いて区別します。

「これをMi=mi(ai1Xi+ai2Xi+Fi)と変形し、」と、誤ったmi[嘉悦]のまま、計算を続けています。「(5-6)式に代入すると以下を得る。」とあり、ベクトル表示の(5-8)式を嘉悦は示しています。

AX+F+E-M^(AX+F)=X (5-8)

 

また、移輸入率miの対角行列M^(エムハットと読むことにします)の定義式(5-9)が示されます。ここで、M^も行列の構成成分であるmi[嘉悦]が誤って定義されていることから、一般的なM^ではなく、嘉悦による誤った定義のM^です。M^[嘉悦]と書いて区別します。

しかし、誤った(5-7)式のMi=mi(ai1Xi+ai2Xi+Fi)を(5-6)の式に代入して、いくら計算しても、(5-8)式を得ることはできません。この文は間違っています。(5-7)’の正しいmiの定義式を(5-6)式に代入すると、(5-8)式を得ることができます。

(5-8)式は外見上、産業連関分析の説明に出てくる一般的な式で正しいように見えますが、(5-7)式の誤ったmi[嘉悦]ならびに(5-9)式の誤ったM^[嘉悦]の下では、成立せず、誤った式です。嘉悦学園はここでも計算せずに、結果の式だけを他の教科書から写したのでしょうか。

「そこで、(5-8)式をXについてまとめると以下が得られる。」とあり、(5-10)式が示されます。(5-8)式から(5-10)式は一般的な行列の計算をすれば、得られますが、そもそも、(5-7)式ならびに(5-9)式の誤った定義の下では、(5-8)式は成立しないのですから、(5-10)式も成立しません。

X=[I-(I-M^)A]-1[(I-M^)F+E] (5-10) Iは単位行列、A-1Aの逆行列を表す。

(5-10)式は外見上、産業連関分析の解説で一般的によく見るモデル式のようですが、(5-7)式のmi[嘉悦]ならびに(5-9)式のM^[嘉悦]の誤った定義の下では、モデル式とは違う式になります。そもそも等式自体が成立していません。また、miならびにM^が正しい定義なら、(I-M^)は府内自給率、[I-(I-M^)A]-1は逆行列係数、[(I-M^)F+E]は最終需要額で、Xは生産誘発額ですが、(I-M^[嘉悦])は府内自給率ではなく、[I-(I-M^[嘉悦])A]-1は逆行列係数ではなく、[(I-M^[嘉悦])F+E]は最終需要額ではありません。よって、(5-10)式に逆行列係数表や最終需要額を代入して計算することはできません。

 

次の38ページから39ページにかけての「(3)広域プロジェクトにおける府市連携による経済効果」において、地下鉄中央線延伸(540億円,工期7年)、JR桜島線延伸(1700億円,工期11年)、なにわ筋連絡線・新大阪連絡線(1310億円、同時整備の場合,工期記載なし)の3つの広域プロジェクトを取り上げ、工期を10年と仮定した上で、10年間にわたる生産誘発額を算出しています。「上記の総額3,550億円を建設部門に投入し、(5-10)式により生産誘発額を計算した結果、生産誘発額(一次波及効果)は4,867億円と推計された。」と書いてあります。残念ながら、成立していない「(5-10)式により計算した」と嘉悦自身がはっきり書いてあります。よって、この4,867億円という数値は意味を持たないことになります。

 

嘉悦大学の「教授」は以前の高校レベルの行列計算もできないのか!

投入係数や移輸入率の定義もわかってない!

大阪都構想による社会資本整備の経済効果4867億円は、途中の計算式がデタラメで何の意味も持ちません。

昨日の嘉悦報告書の91ページの続きです。

嘉悦報告書の本編57ページから60ページも一緒に見てね。

 

7章 1節.マクロ計量経済モデル

59ページ「内閣府から公表されていない足下の資本ストックのデータについては、減耗率3%で延長している。減耗率については、補論A7.0を参照されたい。」とあります。すなわち、内閣府『都道府県別民間資本ストック』のデータは2009年度までなので、民間資本ストックは2010年度以降、内閣府『社会資本ストック推計』のデータは2014年度までなので、2015年度は減耗率からの逆算による計算値ということです。

 

91ページ。

 

 KPt=(1-δ)KPt-1+IP←→ δ=(KPt-KPt-1-IPt)/ KPt-1

ただし、KPtはt期末民間資本ストック、IPtはt期の民間固定資本形成、δは減耗率(民間)である。

これ、計算おかしいです。

計算すれば分かりますが、上記減耗率の数式が間違っています。

正しくは、KPt=(1-δ)KPt-1+IP←→δ=-(KPt-KPt-1-IPt)/ KPt-1

おいおい、嘉悦大学、中学1年生レベルの数式変形を間違えてるやん。

 

「注2)2010年以降の民間資本ストックは、減耗率3%で除却し、民間固定資本形成を足し合わせて作成。減耗率は下式から逆算し、2011年から2015年平均から導出。」???

ちょっと待って。よく考えてみよう。

2010年以降の民間資本ストック値は分からないのですから、2011年から2015年の民間資本ストック値から、上記式(しかも間違っていますが)から減耗率を逆算して、その平均が3%であると言うのは意味がわかりません。減耗率3%の根拠は説明できていません。これは循環論法であり、許されない説明です。

 

「注3)2015年度の社会資本ストックは、減耗率3%で除却し、公的固定資本形成を足し合わせて作成。減耗率は民間資本ストックと同様に逆算し、2011年から2015年平均から導出。」とありますが、2014年までの減耗率平均なら求められますが、2015年も入れると、同じく循環論法になり、間違いです。

 

次は92ページの東京都統計も同じく、見てみよう。

本編61ページから64ページも見てね。

7章 2節.社会資本の経済効果

大阪府と東京都に関してそれぞれの社会資本の限界生産力、民間資本の限界生産力を求めています。(7-2-4)式の係数の推定を行うため、『都民経済計算』、内閣府『都道府県別民間資本ストック』、内閣府『社会資本ストック推計』等からデータを入手していますが、62ページ「内閣府から公表されていない足下の資本ストックのデータについては、減耗率5%で延長している。減耗率については、補論A7.0を参照されたい。」とあります。すなわち、東京都においても、民間資本ストックは、2010年度以降は減耗率からの逆算による計算値ということです。

 

92ページ。

「注2)2010年以降の民間資本ストックは、減耗率5%で除却し、民間固定資本形成を足し合わせて作成。減耗率は大阪府の民間資本ストックと同様に逆算し、2011年から2015年平均から導出。」とありますが、これも大阪府と同様に、循環論法になっており、減耗率5%の根拠は説明できていません。

 

このような、誤った数式や循環論法によって、計算された民間資本ストック値は意味を持ちません。意味を持たない民間資本ストック値をサンプルに用いて、推定されたマクロ計量経済モデルの生産関数をはじめとする連立方程式は意味を持たないと考えられます。また、それらを用いたシミュレーションも意味を持たないことになります。

 

嘉悦報告書は循環論法により、説明にならない説明をして、読者を騙しています。

嘉悦大学の「教授」は中学生からやり直したほうがいいんじゃないの?

大阪市、大阪府。こんなデタラメ数式をホームページに載せてたら、大阪市立、大阪府立学校の数学のテストは全員100点にしないといけないよ。

先ほどの90ページの続きで、嘉悦報告書91ページ行こうか。

嘉悦報告書91ページ

補論 表A7-0-1 大阪府統計。

「出所」の行を見ると、「府民県民計算」「県民経済計算」とありますが、「府民経済計算」の間違いだと思います。5カ所ともすべて間違っています。

「社会ストック推計」とありますが、「社会資本ストック推計」の間違いと思います。

 

大阪府で間違えているということは、もしや東京都でも、やっぱり。

92ページ

補論 表A7-0-2 東京都統計。

「出所」の行を見ると、「都民県民計算」「県民経済計算」とありますが、「都民経済計算」の間違いだと思います。5カ所ともすべて間違っています。「社会ストック推計」とありますが、「社会資本ストック推計」の間違いと思います。

 

ミスで東京都と大阪府が張り合ってどうするねん?

「府民県民計算、府民県民計算、府民県民計算・・・」勝手に数えてとけや。

「都民県民計算、都民県民計算、都民県民計算・・・」道民はないんか。

「社会本ストック推計」社会本ってどんな本やねん?

思わず、つっこみたくなる、嘉悦報告書のミスでした。税金1000万円使って、笑い事やないで。

 

 

今日は、簡単なネタで行こうか。

嘉悦報告書90ページのグラフを見てください。補論「図A7-0-3 就業者数」。

「図A7-0-3 就業者数」に大阪府と東京都の就業者数とその大阪対東京比の年次推移を示すグラフが示されます。グラフの左端の単位を見ると、『兆円』とあります。人間を数える単位が「兆円」ですか?91ページの大阪府統計や92ページの東京都統計を見ると、正しい単位は、『百万人』だと思われます。

人間を数えるのに、労働者を数えるのに、単位が『兆円』ってどういうことでしょうか。これは人権侵害です。人身売買、奴隷制度を容認しているととられても仕方がありません。このようなひどい文書を、大阪市、大阪府が容認し、1000万円を支出し、ホームページに1年半以上に渡って公開してきたことは重大な問題です。

 

もう一つミスを発見。

出所)内閣府『都道府県別民間資本ストック』、大阪府『府民経済計算』、東京都『都民経済計算』から筆者試算。」とありますが、内閣府『県民経済計算』のまちがいです。内閣府『都道府県別民間資本ストック』には就業者数は載っていません。

59ページの「表7-1-1 データの出所及び加工方法」(大阪府)の就業者数に「府民経済計算・県民経済計算」と書いてあり、62ページの「表7-2-1 データの出所及び加工方法(東京都)」の就業者数に「都民経済計算・県民経済計算」と書いてあることからも明らかです。

 91ページの「表A7-0-1 大阪府統計」の就業者数の出所に「府民県民計算(府民経済計算の間違い)」「県民経済計算」と書いてあり、92ページの「表A7-0-2 東京都統計」の就業者数の出所に「都民県民計算(都民経済計算の間違い)」「県民経済計算」と書いてあることからも明らかです。

 

ホント酷いね。嘉悦報告書は、人間や労働者を物扱いしているんだよ。

大阪都構想になれば、人間や労働者が大切にされない社会になることが、よくわかるミスですね。

嘉悦報告書の最大のポイントは都構想(特別区設置)により10年間で1兆1040億円〜1兆1409億円の財政効率化効果があるという点。市会や法定協議会では、自民党市議らが、決算値と予算値が混在している点や、大阪市の歳出額に府に移管される事業が含まれている点を批判していた。それも一つの批判。

 

でも、今回は嘉悦学園の示す条件をすべて受け入れて、本当に計算があっているかどうかを確認してみよう。

少しむずかしいかもしれないけど、嘉悦報告書の原文を読んでみよう。何度も見ているうちにわかってくるよ。

嘉悦報告書は、人口一人当たりの歳出額が、人口と面積の関数で決定されるとして、以下のような関数を仮定するんだ。

log(y)=β01log(pop)+β2(log(pop))2+β3log(area)+β4dummy+u (6-1-1)式

ここで、yは人口一人当たりの歳出額(千円)、popは人口(人)、areaは面積(km2)だよ。uは誤差項。logは自然対数。

その仮定、本当に正しいの?と言うあなた。あなたは正しい。でも、それは今は置いておいて。

これを全国の市町村の実際のデータを用いて、係数β0、β1、β2、β3、β4の値を最小二乗法を使って求めて、近似式の関数を決めるんだ。

東日本大震災の被災地自治体は歳出がかさむだろうということで、被災地自治体を含んだモデルをモデル1、被災地自治体を含まないモデルをモデル2としているよ。被災地自治体を含むモデル1ではダミー変数を使うんだ。すなわち上の式で、被災地自治体では、dummy=1として、被災地ではない自治体では、dummy=0とするんだ。

こうして求められた係数の値が、以下の表6-1-2だよ。

次に、求めた係数の値と、大阪市で予定されている4つの特別区の想定人口、面積を代入して、各特別区の人口一人当たり歳出額の理論値を求めます。理論値だから、誤差項を含まない以下の式を使います。

log(y)=β01log(pop)+β2(log(pop))2+β3log(area)+β4dummy (6-1-4)式

表 6-1-4が嘉悦報告書の計算結果だよ。

われわれも、Excelを使って、実際に計算してみよう。

具体的には、モデル1では特別区第1〜4区ごとに、表6-1-2で示された係数β0、β1、β2、β3、β4の値と、表6-1-4で示された人口と面積を代入して、大阪は被災地でないから、dummy=0とするよ。

実際のExcel計算ファイルは以下を見てね。

https://drive.google.com/file/d/1ILuao2L5SbO3R00R_uGp6IYdtxJTsKzm/view

計算してみて、ビックリ。各特別区の人口一人当たり歳出額、嘉悦報告書の額と全然違う。

そして、10年間の歳出削減額も計算してみました。比較する大阪市実績値は嘉悦が表6-1-4に示した値を使ったよ。

その結果は、特別区設置により、10年間でモデル1で1兆2677億円、モデル2で1兆7919億円の歳出増加でしたよ。ヒェー。

 

最適基礎自治体規模人口50万人もデタラメ、本当は30万人でした。

人口一人当たり歳出が最小になる人口が50万人とか、嘉悦は言ってるけど。

最適基礎自治体規模となる人口pop*:pop*=exp(-β1/2β2) (6-1-3)式

これに、表6-1-2のβ1とβ2の値を代入して、計算してみよう。

Excelで計算すると、最適基礎自治体規模人口は、モデル1では31万7003人、モデル2では29万1657人。

嘉悦報告書にはモデル1で49万3356人、モデル2で49万2521人て書いてるけど、全然違うやん。

 

なぜ、こんなことが起こるのか?

表6-1-2の係数を見ると、嘉悦は小数点3桁以下を全て省略(四捨五入?)しており、有効数字という考え方がない。有効数字は普通は3桁くらいであるが、嘉悦の表記では有効数字1桁になる。そのため、誤差が指数により拡大されて結果に膨大な誤差を生んだ可能性がある。嘉悦の有効数字の扱いの問題(無知か故意か)、変数を対数で取ったことやモデル式自体が不適切な可能性。

例えばモデル1でβ2=0.05797として、計算すると財政効率化額や最適基礎自治体規模人口は嘉悦報告書に近い値になる。

逆にβ2=0.064とすれば、9兆5931円歳出増加になる。

例えばモデル2でβ2=0.0576として、計算すると財政効率化額や最適基礎自治体規模人口は嘉悦報告書に近い値になる。

逆にβ2=0.064とすれば、10兆6709億円歳出増加になる。

この方程式は係数の1つβ2の有効数字桁数の取り方で結果を数兆円単位で変えることができるのである。

 

結論。都構想の歳出削減効果1.1兆円は係数の誤差(嘉悦学園自身が四捨五入で誤差と取った)が指数により拡大されて生み出された「まぼろし」でした。