数学の行列って知ってますよね。私たちの世代は高校数学の「代数・幾何」で、行列を勉強しました。逆行列とかありましたよね。
今の高校数学課程からは、行列はなくなりましたので、大学に入ってから勉強するそうです。なので、行列が出来ない大学生は当たり前。でも、嘉悦大学「教授」も行列ができなかったという話。
嘉悦報告書36ページから41ページ
5章.政策効果分析による総合区の経済効果 3節.府市連携による経済効果
5章3節においては、産業連関分析を用いて府市連携による経済効果に関して検討しています。
産業連関表の見方については、嘉悦報告書においても説明されています。
嘉悦報告書の説明は分かりにくいって言う人は、「産業連関表」で検索してみて。もっとわかりやすい説明のサイトもあるよ。
産業連関表作成は国(総務省)や都道府県、市等において一般的に行われており、それらのホームページにおいても産業連関表の見方についての説明が行われていることから、嘉悦報告書の説明と対比しました。
36ページ「(2)モデル」において2部門に単純化した大阪府の産業連関表の基本的なモデルについての説明が始まります。37ページに(図5-3-1 基本取引表)が示されます。収支均衡式(5-1)、需要均衡式(5-2)が示されます。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20200210/14/kaetsuhokokusho/f1/ae/p/o0753062414710764795.png?caw=800)
x11+x12+F1+E1-M1=X1 (5-2)
x21+x22+F2+E2-M2=X2
これは正しいものです。
次に嘉悦報告書では「ここで、部門iが部門jから投入した額xijを部門jの生産額Xjで除した値をaijとすれば、これは部門iの生産物を1単位生産するために必要な部門jからの投入額を表し、投入係数と呼ばれる。」とあります。(5-3)式においてaij=xij/Xjと定義されています。(5-3)式は正しいです。
しかし、投入係数の説明が間違っています。正しくは『部門jの生産物を1単位生産するために必要な部門iからの投入額』です。
「(5-2)式に(5-3)式で求めたxij=aijXjを代入すれば以下が得られる。」
a11X1+a12X1+F1+E1-M1=X1 (5-4)
a21X2+a22X2+F2+E2-M2=X2
とありますが、(5-4)式は間違っています。代入しても(5-4)式は得られません。正しい式は、
a11X1+a12X2+F1+E1-M1=X1 (5-4)’
a21X1+a22X2+F2+E2-M2=X2
「これを行列で表記すれば次のようになる。」とありますが、(5-5)式自体は正しい式に戻っていますが、「これ、すなわち誤った(5-4)式」を行列表記しても、(5-5)式にはなりませんから、誤った文です。(5-4)’式を行列表記すれば、(5-5)式になります。嘉悦学園は計算せずに、結果の式だけを他の教科書から写したのでしょうか。(5-6)のベクトル表記の式は正しいです。
AX+F+E-M=X (5-6)
次の移輸入率mi の定義式が致命的な誤りです。37ページの最後に「ここで、部門別の府内需要に占める移入・輸入の割合を示す移輸入率miと定義すると以下のようになる。」とあります。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20200210/14/kaetsuhokokusho/c8/a6/p/o0955066914710769564.png?caw=800)
38ページ冒頭に、
mi=Mi/ai1Xi+ai2Xi+Fi (5-7)
とありますが、間違っています。(5-7)式の分母は部門iにおける中間需要と最終需要の和ですから、投入係数aij=xij/Xjの定義(5-3)式から正しい式は、
mi=Mi/ai1X1+ai2X2+Fi (5-7)’となります。
(5-7)式は一般的には誤りでも、miの定義式ですから、この報告書では嘉悦はこのように定義したということです。以下では嘉悦による誤った定義のmiをmi[嘉悦]と書いて区別します。
「これをMi=mi(ai1Xi+ai2Xi+Fi)と変形し、」と、誤ったmi[嘉悦]のまま、計算を続けています。「(5-6)式に代入すると以下を得る。」とあり、ベクトル表示の(5-8)式を嘉悦は示しています。
AX+F+E-M^(AX+F)=X (5-8)
また、移輸入率miの対角行列M^(エムハットと読むことにします)の定義式(5-9)が示されます。ここで、M^も行列の構成成分であるmi[嘉悦]が誤って定義されていることから、一般的なM^ではなく、嘉悦による誤った定義のM^です。M^[嘉悦]と書いて区別します。
しかし、誤った(5-7)式のMi=mi(ai1Xi+ai2Xi+Fi)を(5-6)の式に代入して、いくら計算しても、(5-8)式を得ることはできません。この文は間違っています。(5-7)’の正しいmiの定義式を(5-6)式に代入すると、(5-8)式を得ることができます。
(5-8)式は外見上、産業連関分析の説明に出てくる一般的な式で正しいように見えますが、(5-7)式の誤ったmi[嘉悦]ならびに(5-9)式の誤ったM^[嘉悦]の下では、成立せず、誤った式です。嘉悦学園はここでも計算せずに、結果の式だけを他の教科書から写したのでしょうか。
「そこで、(5-8)式をXについてまとめると以下が得られる。」とあり、(5-10)式が示されます。(5-8)式から(5-10)式は一般的な行列の計算をすれば、得られますが、そもそも、(5-7)式ならびに(5-9)式の誤った定義の下では、(5-8)式は成立しないのですから、(5-10)式も成立しません。
X=[I-(I-M^)A]-1[(I-M^)F+E] (5-10) Iは単位行列、A-1はAの逆行列を表す。
(5-10)式は外見上、産業連関分析の解説で一般的によく見るモデル式のようですが、(5-7)式のmi[嘉悦]ならびに(5-9)式のM^[嘉悦]の誤った定義の下では、モデル式とは違う式になります。そもそも等式自体が成立していません。また、miならびにM^が正しい定義なら、(I-M^)は府内自給率、[I-(I-M^)A]-1は逆行列係数、[(I-M^)F+E]は最終需要額で、Xは生産誘発額ですが、(I-M^[嘉悦])は府内自給率ではなく、[I-(I-M^[嘉悦])A]-1は逆行列係数ではなく、[(I-M^[嘉悦])F+E]は最終需要額ではありません。よって、(5-10)式に逆行列係数表や最終需要額を代入して計算することはできません。
次の38ページから39ページにかけての「(3)広域プロジェクトにおける府市連携による経済効果」において、地下鉄中央線延伸(540億円,工期7年)、JR桜島線延伸(1700億円,工期11年)、なにわ筋連絡線・新大阪連絡線(1310億円、同時整備の場合,工期記載なし)の3つの広域プロジェクトを取り上げ、工期を10年と仮定した上で、10年間にわたる生産誘発額を算出しています。「上記の総額3,550億円を建設部門に投入し、(5-10)式により生産誘発額を計算した結果、生産誘発額(一次波及効果)は4,867億円と推計された。」と書いてあります。残念ながら、成立していない「(5-10)式により計算した」と嘉悦自身がはっきり書いてあります。よって、この4,867億円という数値は意味を持たないことになります。
嘉悦大学の「教授」は以前の高校レベルの行列計算もできないのか!
投入係数や移輸入率の定義もわかってない!
大阪都構想による社会資本整備の経済効果4867億円は、途中の計算式がデタラメで何の意味も持ちません。