子どもの頃から、

台風が来るよ、ってお母さん蛙やおばあちゃん蛙が言うのを聴くと、


かえるちゃんは、ちょっと嬉しかった。


お父さん蛙が仕事から帰ってきて、

お母さん蛙やおばあちゃん蛙が安心すると、
かえるちゃんは、ますます嬉しかった。


(安心を背景に、)全力で台風を待ち受けるわけである。


かえるちゃんは東京育ちなので、
実はあまり大した台風を体験していない。

また、子どもだったため、
ほとんど大変なメにも遇っていない。



だからかもしれないが、

『台風』ときくと、
なぜかワクワクしてしまうのである。


お母さん蛙やおばあちゃん蛙がせっせと準備していたのを思い出す。


懐中電灯や電池、
ロウソクやマッチ、
ヤカンやお鍋に水を汲み置いたもの、
早めに炊いたご飯。


それでも、
実際にそれらが役に立ったことは無くて、


かえるちゃんには、
『台風』というとそこはかとない賑わいとして、

それらが記憶されるのである。


昔は、本当に、そういった備えが必要だったそうだ。


かえるちゃんは、
だから、
『台風が来る』
ときくと、
何か備えなければ!…と思ってそわそわしてしまうのである。


でも、
実際にはどう行動してよいものかよくわからず、

なんやかんや、居ても立ってもいられないような、

みょうなココロモチになり、

どうも苦手であります。



今日は、

もう大人なんだから!と思いきって、

『超熟』(パン)や、牛乳や野菜ジュースや、
シュークリームなどを買い込んできて、
一応の『備え』をしたのである。



あとは、明け方から強まるという強風に備えて、
ベランダの植物をまとめておけば、ばっちりである。
:
はずである。



しかし気持ちがワナワナして、
きっと今夜は眠れないのである。


かえるちゃんは、やっぱり台風が苦手である。