私だけ、診察室に呼ばれ、医師から急性増悪を起こしていることを告げられた。
父の病気が発覚した時に、病気については調べていたので、急性増悪がどういうものかわかっていた。
涙が溢れた。
どうしよう。
なんで。
声を振り絞って、「あんなの毎日頑張っていたのに・・」と言うのがやっとだった。
医師は「●●さん(父のこと)が、努力して頑張っていたのは知っています。でも、こればかりは、どうすることもできないんです。努力していても、感染症や誤嚥などが原因で急性増悪を起こしてしまうんです。急性増悪の原因を特定するのは難しいです。」
医師は、続けて、コロナ治療で用いられた薬で急性増悪でもある程度の実績をあげている薬を投薬したい。説明しますので、聞いてくださいと告げ、一枚の紙をもとに説明をしてくださった。
この薬は拒否をすることもできます。
同意の場合は、こちらにサインをくださいとのことだった。
良いも悪いも判断する余裕がなかった。
医師にお任せするしかなかった。
医師は、ステロイドとこの薬を一秒でも早く投与したいと言う。
私は、すぐにサインをした。
先生は、私がサインしたのを確認すると、バタバタ走って処置室の方に行き、看護師さんへ投与の指示をしたようで、数分してまたバタバタ走って診察室へ戻ってきた。
今後について説明があった。
今から薬の投薬を始めます。評価は一週間後くらいにしたいと思います。
薬の効果があれば、急性増悪が止まり、少し回復した状態で落ち着くと思います。しかし、急性増悪前の状態に戻ることはないです。
薬の効果が無ければ、このまま一週間程度で亡くなってしまうと思います。急性増悪を起こしてしまうと、3~4割の方はそのまま亡くなってしまいます。ご年齢を考えると、その可能性も高くなります。
急性増悪がとまって、安定した状態にもっていけるよう頑張ります。
とのことだった。
それと、●●さん(父のこと)は、とても気の弱い方と存じ上げていますので、一旦、ご本人には急性増悪という言葉を使わないで、病状を説明します。急で悪くなった箇所が肺にあることがわかったので、入院で治しましょうとお伝えしますね。●●さんの心が折れてしまって、治療への意欲が無くなってしまうことが一番怖いので、そうさせてください。とのことだった。
父の性格を理解したうえで、医師が対応してくださったのは、有難かった。
お願いしますと伝えて診察室を出た。
それが精いっぱいだった。
父が処置室で薬の投与を開始し落ち着くのを待つ間に、実家に連絡をした。姉が来ていた。
あ・・・・今、思い出した。
ちょうど、姉が実家に遊びに来ていた日だった。
父を私の車で病院へ連れて行こうとしたけど、なぜか私の車のエアコンがなかなか効かず、6月とはいえ夏のように暑い日で、エアコンの効きが悪い車での移動は無理だと父が言うので、姉の車で病院へ向かったのだった。病院のロータリーに姉の車から降りて、貸し出し用の車いすを借りて、外来に向かったんだった・・。なぜ忘れていたのだろうか・・・。
あの時は姉がいてくれて、本当に良かった。
医師からの説明をうけて診察室を出た後、病院の外へ出た。
姉に電話して、医師からの説明の通り、姉に説明をした。
絶句していた。
私は、姉に話しながらまた泣いた。