古い糸 | 子宮筋腫をとったらば

子宮筋腫をとったらば

2015年12月に開腹で子宮の全摘をした、45歳・既婚・子ナシの備忘録。

押し入れの中に糸でぎゅうぎゅうの

大きなケースがいくつかあります。

自分で買ったまだ編んで/織っていない糸。

編み物好きだった祖母・伯母・母の

未使用の糸や編みかけて終わっていないもの。

それから解いて使えそうなセーターなど。

編みや織で一生遊ぶには充分な量。

使っていないさらの糸はそのままでいいけれど、

編んだ途中で終わっているものや

セーターやカーディガンになっているものは

解いて洗って干して糸の癖をとらないと

再利用はできません。

 

引っ越しの時にこれらのまあまあ大量の

糸を引き取って2年。

ようやく重い腰を上げて編みかけの一部を

解体しはじめました。

自分で設計した手書きの編み図がついていて、

あとちょっとで完成するものなどを解くのは

もったいないような、切ないような。

でもこのままのサイズで完成させても誰も

使えないしね、と自分に言い聞かせます。

 

解いていると随分懐かしい糸に再会して

手が止まることもしばしば。

昔は手編みのものってお役御免になると

解いて再利用が一般的だった気がします。

私が子供のころに着せてもらったセーターが

祖母のベストになっていたり。

再利用も1度や2度ではなくて、

多分編み手が好きだった糸は

何度もその姿を変えていました。

ものすごく局地的にエコ。

 

新しい糸が再利用に耐えられなかった

こともあったりしたので、

昔の糸は多分今のものよりもずっと

丈夫だったのだと思います。

ウールなら羊の飼料も変わっているでしょうから

糸の品質が違うのも当然かもしれません。

コットンだって土や肥料で違うかも。

そんな丈夫な糸でも編み返しを繰り返せば

痩せてくるので、祖母はよくうんと細い

モヘアと2本取りで使っていました。

なので未使用在庫の中に古いフランスの

色とりどりのモヘアがたくさん。

 

多少退色しているところを除けば

まだまだ使えそう。

今はモヘアのセーターなんて、というか

手編みのセーター自体の需要がない。

どこも暖房が行き届いて暖かくなって、

材料工学の進歩のおかげで衣服も安くて

軽くて暖かいものがたくさんありますものね。

私は好きでうちでも外でもウールのものを

身に着ける方だけれど、

モヘアで編んだほわほわのガーリーなものは

あんまり得意ではないのです。

オマケに色も他の糸に合わせるためか

柔らかいパステル調が多くて、

このまま編んだものを使う気にはなれない。

モヘアのくせにちっともチクチクしなくて

いい糸なんだけどなー。

 

そんな風に悩んでいたところに。

ロンドンのJちゃんがお母さまと日本に

遊びに来るというお知らせが届きました。

これはいいチャンスかも。

Jちゃんのお母さまはお目にかかるときは

ロンドンでも東京でもいつもカワイイ

お手製のギフトをくださるのです。

手編みのティーコージーだったり

パッチワークの巾着だったり。

たまにはこちらも手作りで応えたいなと

思っていたので、モヘアを使ってうーんと

軽いショールを織ることにしました。

ちょうど少し前にしまってあった機を出して、

リハビリがてらのランチョンマットを

織り終わったばかり。

 

木綿の経糸2色、モヘアの緯糸2色でざっと

設計図を書いて織り始めようと思ったら。

「ダメだよちゃんと全体をデザインしないと」

うちのデザイン部長から突っ込みが入りました。

バランス見ながら織ればいいかなって……。

「差し上げるものならちゃんとしなさい。

全体のサイズ教えて」

と怒られてフォトショで詳細なデザイン画が

出来上がってきました。

ありがとういつもすまないね。

でもホントは野放図に織るのが好きなのよ……。

そういえば昔7色くらい使った自分のセーターを

編むときにも同じ説教されて編み図を作って

もらったことがあったな。

進歩がないのですね、わたくし。

 

夫デザインのおかげでショールは我ながら

なかなか良い出来に織りあがって、

無事プレゼントすることができました。

そもそもJちゃんおかあさまのSさんは

祖母と伯母の古くからのお友だち。

緯糸は祖母のですと言ったら喜んでくれました。

というか、知り合いのイギリスの人たち、

みなさん喜び方が上手すぎなんですよ。

「マフラーを持ってくるのを忘れちゃったから、

今日ここで買おうと思っていたのよ」

って本当にそんなタイミングなら私も嬉しい。

Sさんの日本の冬の寒さを少しでも和らげたなら

きっと祖母も伯母も喜びます。

 

こんなふうに上手く納まることはなかなかない

とは分かっているけれど。

そもそも年寄りが手製のものを人さまに

差し上げるというのはよっぽど気を付けないと

押し付けられた方は迷惑になっちゃいますよね。

手作りのものって処分に困るし精神的に重いし。

調子に乗らないように、プレゼントはよくよく

吟味して大丈夫の確信が持てるときだけ。

もちろん自分や夫が使うものもできるだけ

編んだり織ったり自家生産していって、

自分が死ぬまでに限りなく糸の在庫が

ゼロに近い状態にしたいというのが目標。

あと、古い着物も裂いて使いたい。

裂き織のお勉強もしないと。

 


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