庭の杏、店の杏 | 子宮筋腫をとったらば

子宮筋腫をとったらば

2015年12月に開腹で子宮の全摘をした、45歳・既婚・子ナシの備忘録。

近所の住宅街を歩いていた時のこと。

夫が上を向いて「わあ、すごい」。

なにかな?と思って目線を辿ると杏が鈴生り。

葉っぱの柔らかな黄緑を背景にたくさん点在する

オレンジ色がそれはそれはかわいらしくて。

立ち止まってふたりで見惚れました。

 

ときどきそばを通るそのお宅はちょっとお庭が

独特の雰囲気で、異彩を放っていました。

木も草も豊富にあって、雑多なように見えて

でも計算されているような。

おうちとのバランスも絶妙で、

なんだかヨーロッパの住宅のお庭みたい。

通り過ぎるたびに気になっていました。

 

そのお庭で一番大きい木が杏だったのですね。

花に時期にもっとちゃんと見ておけばよかった。

それにしても見事な生りっぷりで、

見ているだけでも幸せになる景色。

角を曲がったら門のところで

女性がふたり、お話ししていました。

私たちが杏で興奮していたのがしっかりと

聞こえていた模様、恥ずかしい。

 

おうちの女主人と思しきお方が、

「そう、杏なんですよ。今年はたくさんなってね」

とにこやかに話しかけてくださいました。

門の脇にもさらに二本の杏の木があって、

こちらもたわわに実がついています。

まさに杏のお庭という感じ。

 

杏の木だとは気が付いていませんでした。

かわいい景色ですね、眼福です、と言ったら。

「よかったら少しお持ちになる?」

え?いいんですか?

「ちょっと待ってね」

とお庭のテラスに置いてある大きな籠から

きれいな実を選り分けてくださいました。

おうちの中から上品なおばあさまも出ていらして

「差し上げるほどのいいのはあんまり残って

いないけれども……」

と一緒に熱心に吟味してくださって。

うわあ、ただの通りすがりなのにお手数を

おかけして申し訳ない気持ちです。

 

お話ししていた女性はどうやらご近所の方らしく、

よく見たら手元にはたくさんの杏が入った

大きなビニール袋を持っていらっしゃる。

「毎年いただくけれど、お店のものよりも

ずっと美味しいのよ。ここのがいちばん」

と笑って教えてくれました。

 

「はい、少しだけれどどうぞ」

と差し出された紙袋にはかわいいサイズの

杏たちがころころと入っていました。

ほんとうにありがとうざいます、嬉しい。

「毎年なりますからね、またいらして」

というステキな言葉に送られて、

杏のおうちを後にしました。

 

木で熟してもぎたての杏を食べるのは

これが初めてで、せっかくだからと

そのままいただきました。

小ぶりの実は独特の酸味でとても美味しい。

庭に杏の木が欲しいという妄想が捗りました。

 

その1週間後くらいに今度はお店で杏発見。

あら、結構お買い得よ?買っちゃう?

大喜びで2パック抱えて帰って、

さてなににしようかな。

先日いただいたものよりは大分大きい、

そして実は堅めです。

これは去年失敗したシロップ漬けに

再チャレンジしろということでは。

 

1年前に同じ店で同じだけ杏を買って、

何も参考にせずシロップ漬けを作ったら。

加熱のし過ぎで実がふにゃふにゃになる

という大失態を犯しているのです。

今年はちゃんと調べましょう。

 

ということできっちり手順を踏んだら、

めでたく美しい杏のシロップ漬けが完成。

そして残る種、これでやりたいことがある。

 

杏仁豆腐が大好きです。

アーモンドエッセンスの懐かしいタイプも

美味しいけれど、やっぱりちゃんと杏仁を

使ったものがいいですよね。

あれを自作してみたいと常々思っていて、

杏仁のパウダーも中華食材屋さんなどで

売ってはいるけれども。

一度は杏の種から取り出してみたいんです。

 

簡単に考えていて金槌でゴンゴン叩いたら。

……無反応にもほどがある。

クルミよりもうんと固い、平べったい種。

力仕事は夫にお願いしたら。

いろいろ試してうまくいかなかった果てに

出てきたのは万力。

なんか……作業に対して装備が重厚な気も

しなくはないけれど、この際割れればいいや。

流石に万力はその名に恥じない仕事を

してくれました、ありがとう。

あとでよくよく調べたら鑿と金槌のコンビで

上手に割る方法がありました。

 

無事に出てきた杏仁は一晩水に漬けて、

ミキサーにかけたらそれだけでもうあの

なんとも言えないいい匂いがしました。

加熱しなくてこんなに香りが立つなんて驚き。

少し柔らかめに仕上げてクコの実も飾った

初めての自家製杏仁豆腐は大成功でした。

 

でも作り方を調べる道中で、杏仁には

食用と薬用があることを知りました。

薬用のものは分解されると青酸(!)を

発生するのだとか、毒にも薬にもなるとは

こういうことなのですね。

なので処方には慎重に分量を量るらしい。

……国産杏の杏仁はどっちなの?という

もっともな疑問が飛び出しました。

国産と言っても木の種類によって違うだろうし、

買った杏の種から作るレシピも多々あって、

たくさん食べなきゃいいかなと実行して

実際に何事もなかったけれど。

なにかあってからでは遅いので、

やっぱりちゃんと食用の杏仁を買った方が

いいのかもしれません。

お店で出される杏仁豆腐小さいな、

もっと食べたいと思っていたけれど、

あのサイズにはちゃんと理由があるのかも。

実際にやっていろいろ納得して満足。

 


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