交叉方位17 | シンイー信義ー の小部屋

シンイー信義ー の小部屋

イ・ミンホ主演ドラマ「シンイー信義ー」中心の2次小説サイト
ペ・ヨンジュン主演ドラマ「太王四神記」も書き出しました

「そうそう、それとなんだけど」

 

ウンスのよく通る声で、大事な話なんですと云い、さっきまでとは違い真剣な顔つきで話し出した。

 

「あなた達が通ってきたあの洞窟なんですが、その穴は天穴っていうところなんです。わたしはその場所について研究していて、最近ようやくその天穴が開く日がかなりの確率で予測できるようになってきまして――」

 

タムドクもスジニも、自分たちの居の今在るこの場所について、そして自分達の帰るべき場所への事についての話であることを即座に理解し、ウンスの話に耳を傾けた。

ウンスはそんなふたりに真摯に告げる。

 

「その天穴が開くと思われるのが、じつは明日ではないかとわたしは思っています」

 

タムドクとスジニが通ってきた光の渦。

それが天穴と云うものらしい。

この世界に来て、似ているが色々なものがタムドクが居た世界より発展していることには気づいていた。

チェ・ヨンがいつも持っている鬼剣と云われる刀もそう。

我らが命を守る鍛冶屋パソンの作り上げた剣より出来栄えは数段上であり、素材も違うようにも見える。

他の兵士が持つ剣であってもそうだ。

どうやらここは我らが済む世界とはどこか近くて遠い異なる世界なのだと理解した。

そしてそのことをこの医仙と尊ばれる方が、どういう訳か自分達の正体も知っているような感覚をタムドクは感じていた。

 

スジニのとの会話や、一挙一動を見る視線。

他の者から感じない視線のゆくへは、違う次元で見られていると感じるが・・・

まあ危険はあるまいな...

タムドクは問題ないと把握し捨て置くこととする。

 

ここは色々興味深いことがある世界だ。

しかし、自分たちがここで存在し事を成すことがこの先良いことになるのか、それはあまり良い予感はしないと感じており、だからタムドクは自身の行動を制限していた。

しかし、己の好奇心をこうも制することができるようになったとは、タムドクは自分も親となり成長してようだと自分に変な感心をし、その考えに微妙に頬が緩んだ。

そしてそれはスジニも一緒なのだが。

このことが更に自身の頬を緩ませる。

タムドクは自分達の今までの生活を想い出す。

 

いまや酒やバクチを好んでいたスジニの姿はない。

それでも少し前まで酒は飲んでいたが、この世界に来る少し前からスジニは酒に手は付けていなかった。

やはり子がいることを感じていたのだろう。

無意識にか気を付けていたらしい。

ククッと笑いながらスジニとのことに思いを馳せていた時。

 

「あのータムドクさん」

 

しばし時を忘れていたようだ。

 

「すいません」

 

タムドクは素直に謝りウンスを見た。

 

「――それでなんですけど、多分、この期を逃すと1年は天穴が開くことは無いです。だから明日、天穴を通ることが最善だと思います」

 

ウンスに云われるまでもなく、もうそろそろこの地を立たねばと思っていた。

ここは居心地も良いが自分達の場所ではない。

ただ、身重のスジニがいる。

まだ、妊娠の症状は軽そうだが身体の傷も心配であった。

しかし、そうも云っていられないのも事実。

自分達を待ち探しているだろう仲間の事を考えると、皆は心配させたことをえらく怒るであろうが...しかしスジニの状態を伝えると皆それ以上に喜ぶことも目に見えている。

機嫌良く口角を上げるタムドクはウンスへと告げた。

 

「では、その天穴とやらが開くのであれば、わたし達は明日通るしかないですね」

 

「ですよね、それが良いとは思うんですが・・・」

 

機嫌良いタムドクとは裏腹にウンスが綺麗な眉を寄せ言葉を止める。

言葉の歯切れが悪い。

 

「ウンス殿?」

 

「えーっと、それがですねぇ、言いにくいことが一つ」

 

ウンスは姿勢を正し話す。

 

「このあなた達が通った天穴ってやつは何というかちょっと厄介なものでね。これってすごーく理不尽なんだけど、同じ場所を通ったからって必ずまた同じ場所や同じ時に帰れるかってのが分からないんです」

 

「それって、先生。わたし達戻れないってことですか?」

 

スジニは勢い良く立ち上がる。

 

「戻れないって決めつけられないけど、まあ、そういうこともあるってことです」

 

立ち上がったスジニに自身を落ち着けとばかりにタムドクが人差し指で机をトントンと叩く。

それはタムドクがいつもするここに座れとの合図だ。

スジニは素直に座り直しウンスの話を聞く。

 

「実はですねぇ――」

 

ウンスは自分のこれまでの経緯を説明した。

自分もこの穴を通って未来からやって来たこと。

その後再度通った時は同じ時に戻れたこと。

だけど、その後は違う時代に辿りつき、この時代に戻るのに何度も天穴を通り数年かかってしまったことを...

 

タムドクはウンスの説明を黙って聞いていた。

やはり自分が考えたように、自分達は違う時代に来ていたのだ。

そしてウンスは自分達と同じ時の彷徨い人であり、必死に自身の望み選んだ場所に戻ってきたのだろうことが知れた。

 

「そんな―――困ります。わたし達は必ず帰らないとダメなんです。帰れないなんてどうすれば―――」

 

スジニは云っても仕方がないと分かっていてもスジニにどうすればと問い、タムドクの穏やかだが芯のしっかりした声に制される。

 

「シィッッ」

 

それを云っても仕方なかろう。

 

ウンスに向き直り穏やかな声で問う。

 

「それでウンス殿、もし我々が天穴を通って戻れないことになった場合どうすれば良いのか?」

 

この方は、自分も何度か天穴を通ったと云った。

だけど戻ってこられた方でもある。

 

「そうね、戻れないことがあったら、そうしたらまた、天穴が開くのを待って通るしかありません」

 

ウンスは困ったように眉をおとし、タムドクを見上げた。

 

「あなた達の思う場所や時に戻れるまで、天穴を開くのを待ちまた通る。その繰り返しなんです」

 

「・・・ふむ」

 

タムドクはウンスの言葉に黙り考え込んだ。

策士である王だが、こればかりはどうにもならない。

 

「だけど、わたしとの時と違うことが一つ」

 

ウンスは懐から紙を取り出し机に広げ見せる。

 

「それは天穴が開く時期がある程度高い確率で分かること。わたしの時はまだこの時期があやふやにしか分からなかったけど、今は分かります。そしてその時期を、念のため数百年分この紙に書き出しました。天穴が開いてからどの時期に次ぎ開くか書いています。天穴は太陽の―――」

 

ウンスはその要点をタムドクに伝える。

タムドクは独特な話をきちんと理解しウンスの話を飲み込んでいく。

スジニにはさっぱりで、紙に書いた時期を確認するが理解は出来ない。

 

もしかして戻れないかもしれない。

そう聞いても想像以上に落ち着いていられるのはやっぱり王と一緒だからだ。

この方と一緒なら何処でだって生きていける。

それだけで自分は強くなれる。

 

それはタムドクも一緒で、ウンスから話を聞き終えスジニの手に触れ包んだ。

 

大丈夫だ。

 

そう云っている王の眸はいつもの偉大な王でスジニが愛してやまない王のもので、それだけで自分は安心できる自分に貌が熱くなるのを感じる。

 

こんな時にも自分は王に逆上せてる。

 

更に赤くなりそうな自分の思考を追いやるように、スジニはフルっと頭を振り気持ちを切り替えて、今はウンスから伝えられることを聞き逃さないように忘れないようにと耳を傾け聞いた。

 

 

 


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