自分はぽつぽつとライトノベルを読んではいるけれど、実をいうと高校生時代は地方ということもあってほとんどライトノベルは読んでいなかった。今以上に偏見だとかあったりして本格的に読み始めたのは成人してあたりだったりする(そういったせいで未だに自分はオタクやマニアという言葉が苦手なのだけどそれはまた別の話)

 それでも多少は読んでいてそのなかのひとつが甲田学人さんのMissingシリーズだった。

 自分は著者の甲田学人さんのツイッターをフォローしてはいるけれど趣味関係で様々な方をフォローしているため今回の改訂版の発売を数日前に知りそこで予約したのである。

 オリジナル版の発売が2001年発売…14歳高校生だった自分が今や三十を越えていて光陰矢のごとしという言葉が浮かぶ。今回はそういった懐かしさもあってあれこれと思うままに…

 

 今回の改訂版では二十年も間が空いているということで情報テクノロジーや時事ネタなどを加筆改訂しているそうだけどまだ読めていないのでそういった違いをまだ読み比べていないのだけど、改訂版を手にしてまず思ったのはイラストレーターの変更だったりする。

 旧版は翠川しんさん、改訂版は花邑まいさんとどちらも素敵なイラストなのだけどやっぱりずっと親しんでいたのは翠川しんさんだからちょっとさびしい。こういった間があいた作品の新装版はイラストレーターが変更されるのも珍しくはなく色々な事情があるとは思うけれど難しいなと思う。それこそ実家にあるけれど一巻だけ漫画化されたとき翠川しんさんのキャラクターデザインをもとにしていたからなおさらMissingと翠川しんさんの絵は自分のなかで強く結び付いていたりする。ただこのあたりは初読の人にはまったく気にならない部分ではある(そもそもちらっと中身をみるかぎり挿し絵はなさそう)

 ただ改訂ということでふと思い浮かんだのは二巻以降で死亡している人物が一巻の時点ではまだ生存しているかのような記述があったことである…そしてもうひとつ、当時何度も読み返していてある名前に関してミスをしていると思ったけれど、後に出た巻でそれがミスではなくある事件を引き起こすことになる矛盾となっていて驚いた。ただこのあたり自分のように早合点しそうな人も結構いそうと思った(苦笑)

 さてさて本作は都市伝説を題材にしたものだけど、ポイントは物語で語られる民俗学などの話題がデタラメなものではなくきちんと実際にある説に基づいているということである。ただこのあたりで長年参考文献などの記載がなくてちょっと不思議だったのだけどあるインタビューで元々著者は趣味から民俗学や魔術などのオカルトなどに関することを調べていてそれまでの蓄積から引き出しているということで、今となっては参考文献そのものがわからないそうでちょっとビックリした。

 次のシリーズの「断章のグリム」ではその題名からわかるように童話を題材にしていたのだけど、自分は軽くとはいえ本作を読んで民俗学や童話、昔話、伝承というものに興味を持った(余談だけどその流れで色々な本を読んでいると現在、学校の怪談というそのものが消滅の危機にあるのだとか、それはまた別の話なのでここまで)

 本シリーズでは都市伝説をテーマに毎回取り扱われる題材に沿って物語が展開するのだけど、ファンタジー要素ながらミステリーの要素もあって毎回作中ではディスカッションというか、なぜ怪奇現象が起きるのか?その原因は?そしてそのきっかけとなっている人物は?と伏線を張った上で最終的にそれらが集まって真相に至る形式で、その論理の仕方が幻想的なためにそれらの伏線から真相にたどり着くのは難しいとは思うけれど、改めて読み直すとそのパズル的な組み合わせの面白さがありそういった部分で自分は惹かれたもののひとつである。

 ただ自分はこのシリーズは好きなのだけど、昨年の読書週間日記で断章のグリムを取り上げた際にも書いたように、一巻ではまだおとなしいけれどスプラッタ(残酷)描写がかなりきつくて、そういったあたりでなかなかに人にすすめにくい。正直表紙から軽いものを連想をして手にするとまずもって痛い目にあってしまう作品のひとつである。ただ意外なことに次回作をふくめて女性人気も高いそうだけど…

 

 そしてこのシリーズですすめにくい要素のひとつが情け容赦ない展開、死んでほしくないと思ったキャラクターすらも平気で命を落としてしまうのである。次の作品をふくめてレギュラーキャラクターすら最後まで生き残れるのか油断がならないのである…それこそ小さな子供すら情け容赦なく命を落としてしまうのである…

 自分は13日の金曜日のようにド派手で現実味のないものは好きだけど、痛みが想像できるネチネチしたものは苦手で本書は後者にあたり読むのがかなりきついのだけど、それでも最後まで読んだのはその物語がどうなるのか気になったからである。

 二作品とも巻数を重ねるごとに謎が積み重なり、それが少しずつ明かされる構成のため後半になるとそこから読むと内容がつかめないため、最初から順番に読むことをおすすめする。

 ただし著者のツイッターによると今回の改訂版はとりあえず一巻のみで以降がつづくかどうかは完全に売り上げによるものだとか…一応初動の動きはいいとツイートしていたけれどもファンとしては気になってしまう…

 ちなみにオリジナル番と断章のグリムは電子書籍も発売されているけれど、後者は電子書籍化に際して最終巻の最後にあるキャラクターのその後の文章が追加されているそうで、電子書籍をまだ未導入かつ紙媒体で持つからその部分が気になるし、単行本未収録の話も追加されているそうで紙媒体で集めた自分としてはちょっとモヤモヤしたり(苦笑)

 

 なお本作のあとに「夜魔」と題した物語として関連する短編集が出ている。最初はハードカバーで出てこれは実家にあるけれど、後に追加短編をいれたうえで二冊分割で文庫化(珍しいことに同一レーベルではなく電撃文庫とメディアワークス文庫とわかれた)されていてまずはこちらから雰囲気をつかむのもいいかもしれない。余談だけどハードカバー版では帯の推薦をなぜか女優の栗山千明さんが担当していてどういった縁なのだろうと未だに謎である。

 ちなみにオリジナル版の短編集の最初におかれた「罪科釣人奇譚」は第七回電撃ゲーム小説大賞最終候補に残ったものだけどその物語は人間の瞳のなかに棲む魚を見つけてしまった男が、その魚を釣るという話で一緒に眼球もえぐりとってしまい連続殺人鬼となってしまうものである…収録短編集では小学生の恋愛がほほえましくも少年がえた力のゆえに惨劇となり、そして彼女を探し求めるエンディングのものが印象的だった。

 

 著者はその後も作品を発表して一応本は入手しているのだけど積ん読してしまっている…先に書いたようにちょっときつい内容のためどうしても気合いをいれないといけないため、後回しにしてしまっている。だんだんと歳をとるにしたがってハッピーエンドを主に好むようになったりしてバッドエンドだとか苦い結末だとかが学生時代にくらべてなぜかきつく感じるようになってしまったのである。そういったあたりでそういった本を読まないと…

 

 最後にその内容ゆえに甲田学人さんの作品のアニメ化はまずないと思っているのだけど、断章のグリムまでは漫画化およびドラマCD化されている。断章のグリムのほうのドラマCDは入手できたけれど、Missingのときはお小遣いなどから入手できず、今回の再刊でそのドラマCDも復刻しないかと思っている…

 

 本当は作品ひとつひとつを簡単にでも紹介しようと思ったのだけれども長くなってしまったしうまく説明できないのと、とりあえず第一巻が再び出たのだからまずは何の予備知識もなく楽しんで、それで面白いと思ったらつづきを読んでほしいと思うことで作品紹介はとりあえずまたべつの機会に…

 それこそ先に書いたように二巻以降が出るかどうかはこの一巻の売り上げ次第なのだから…