最近は本当に色々な方の訃報が相次ぐけれど今朝仕事から帰ってきて声優の坂口芳貞さんの訃報を知る…
 ただ恥ずかしい話だけれど未だに下の名前の読みを知らない…自分は文字で記憶しがちで何よりも声優の場合は声で記憶をしていて、名前が思い出せなくても「あ、この声は色々なところで聴く声だ」と自分の記憶力の悪さもあって、かなりアバウトな覚え方をしている…

 坂口芳貞さんの訃報を知ってまず浮かんだ作品が「名探偵ポワロ」だった。
 現在オリジナルキャストの声優で健在なのはとうとう二代目ヘイスティングスとミス・レモンのみ…キャストの方はまだ全員健在なだけにさびしく感じる…
 これは何度も書いていることだけど自分がアガサ・クリスティーのファンになったきっかけは小さい頃に観たテレビドラマ版の名探偵ポワロだった…
 ポワロという片仮名しか読めないくらい小さい頃に観た物語は、口から緑色の魂を吐きながら志望する女性に、なにかを知った男はもがき苦しみながら息絶えて子供心に「これは怖い話なのだ」と思いながら観ていた。それが最後になって緑色の魂の正体は毒物として使われた燐が空気と化学反応を起こして緑色に見えたと論理的に解決されて、子供心にインパクトがあって犯人は完全に忘れていたけれどその部分とポワロという片仮名、あの耳に残るテーマソングに特徴的なデヴィッド・スーシェ氏の顔に熊倉一雄さんの声が自分の心のなかに刻まれて、それを手がかりにして中学か、高校生時代になってやっと地上波の再放送でドラマを観ることができた。
 そして自分が観た話はさらに後年、アガサ・クリスティーファンクラブに入会して会報でちょっと文章を載せてもらったことから自分が観た作品が何なのか判明しさらにはある方からNHK放送版をお借りすることができて何十年か越しに全体の物語をやっと知ることができたのである。
 ただ…未だに原作は未読の上NHK放映版は時間の都合でカットがされているためまだきちんと作品すべてを味わっているわけではない…こういったあたりで自分はまだまだ触れたい物語がたくさんありながら山積みになってしまっている…

 そういったあたりで実は坂口芳貞 さん演じるジャップの活躍をきちんと観るようになったのは成人してからだったりするし、未だにまだまだ観ていないものが多い…
 録画をしていたりCSやビデオ・オン・デマンドなどでいつでも観れるという安心感からついつい他のものから触れてしまっているのである…

 そういったあたりで不真面目なファンではあるけれど、ポツポツと観ていて初期のレギュラーメンバーの声に親しみがわいているのである。
 それこそ考えてみると自分の趣味の方向性に大きな影響を与えているともいえる…もしもあのときたまたま家族があのチャンネルに合わせていなければ、吹替ではなく字幕だったらなどなど考えるとあのときに出会わなかったら自分の趣味はまだ違ったものになっていたのかなと思う。それこそ趣味関係で学生時代は孤立をしていたりしてそういった経験もなかったのかなとも思ったりする…
 けれどもそういった出会いがあったからこそ、今の、色々な方向性の趣味になったわけだから幸運でもあったのだとも思う。
  そういったあたりでいえばこれも何度も書いているけれど自分の家族はまったく本を読まない…幼い頃は両親が共働きでよく近くの祖父と同居していたおばさん(祖父の姉)のもとに預けられていたのだけど、このおばさんと、一時期二人と同居をしていたおじさん(父の兄)の二人だけが本を読んでいて最初はその真似から初めて、本を読むようになったのである。
 特に自分はおばさんにかなり影響を受けていて、おばさんは志賀直哉氏やら太宰治氏やら文学系から赤川次郎さんや西村京太郎氏、さらには同居をしていたおじさんが購入していたマガジンやジャンプ(お気に入りは金田一少年やドクターKなど)と興味があるもの、面白いものを片っ端から読んでいて完全にこういったあたりで今の自分の、興味があるものに首を突っ込むミーハーな部分はこのおばさんの姿を見ていたからだと思う。
 そういったあたりで自分は色々な偶然など環境としてはそれなりによかったのだなと思う。
 ふと考えてみると問題の名探偵ポワロのエピソードも家族ではなく、預けられたときに祖父とおばさんと一緒に観たような気がする…というよりも多分そうだと思う。今は家族は海外ドラマは大好きで観ているけれど、自分がまだ独り暮らしをする前までは母や弟は海外ドラマや洋画が苦手だったから多分チャンネルを変えるか観ていなかったと思うから、そう考えるとあの出会いは本当に奇跡的だと思う…
 余談だけどその問題の作品は思いっきりネタバレをしているため作品名をあげられない…ドラマ版や原作に触れている人には何の作品かわかるとは思うけれど、あまり有名ではない作品だけにとりあえず伏せておく(さらなる余談だけどあるミステリ系のブログを読んでいると海外で出た限定本ではいくつか写真が収録されていて被害者をアガサ・クリスティー自らが演じているそうでビックリした)

訃報は仕方がないことで、避けられない運命ではあるけれども自分が小さい頃からテレビや本などで親しんでいた方の訃報はいつだって悲しいし、もう新しい声や作品には出会えないのだと思うと辛いものがある。
 名探偵ポワロの場合は戯曲版と一部短編をのぞいてすべての映像化が完了したことからきちんと完結をしたから新しいものはそれこそオリジナル作品でないと製作されることはなく、そういった意味で幸福だとは思う。
 ただそれでも演じた方や声優の方の訃報はショックである。
 ブログ開始以前のためSNSのみにしか収録をしていないけれど、熊倉一雄さんの訃報のときに書いた日記はかなり混乱をしていた。
 普段なら関係するものは資料としてブログに再録をするのだけど、この件に関してはあまりに辛いので再録はしない…そういったあたりでもうだいぶ前だから読んでいる人も少ないけれど、あのときの日記を読んだ方なら知っていると思うけれど本当にショックで、今回もまた同じように衝撃がでかい…

 もしもあのとき「名探偵ポワロ」という存在に出会わなかったら?おばさんやおじさんが本を読む人間ではなかったら?あの声やテーマソングが印象的ではなかったら?あのエピソードでなかったら?
 今となってはもう知るよしもないけれど本当にあれは分岐点のひとつだったのだなと思う。
  そういったあたりで名探偵ポワロのDVDボックスがほしいと思うし、シャーロック・ホームズの冒険と同じように廉価セットが出ていて一度は購入しようと思ったのだけど…名探偵ポワロは旧シリーズの全巻セットなるものがありこちらは収納ボックスや特典ディスクなどがありそちらがほしいと分割セットを見送っているけれど、色々な出費などから購入が出来ていない…ちなみに後にブルーレイBOXも出たけれど、何度も書くように自分は未だにDVD派でそういったあたりであくまでも狙いはDVDの廉価全巻セットである…
 ただし、デアゴスティーニから出た新録版は創刊号だけ所有していたりはする…
 書いていて思うけれど今はソフトやネット配信などで手軽に作品に触れることができ、なおかつ幻と言われていた作品の発見やソフト化が少しずつ進んでいたりと現代は本当に幸福だと思う…