子供の頃に読んでいた本を懐かしく思うことがあり、たまに再刊や古本屋さんで見つけると手に取ることがある。
今回の香月日輪さんの地獄堂霊界通信シリーズもそのひとつで、小学生の頃に図書室に新刊が入ってくると楽しみに読んでいた。
ただ当時のレーベルとしては小学生向けで小学生の頃には完結せず途中までしか読んでいなかった。
だから本屋さんで復刊をみつけて懐かしさと同時に、小学生向けかつポプラ社から出ていた児童書が講談社ノベルズから再刊で驚いた。
ただセカンドシーズンまで全巻集めながら途中までしか読めていないのだけれども(苦笑)
さて本作は小学生の頃に実写版デビルマンの監督で映画化されていて、自分はビデオで観たけれども当時あまりに内容が違いすぎて怒った記憶がある。それこそ子供向けにしすぎと…
その記憶がずっと続いていたのだけれども、この再刊で懐かしくて完全版1巻を読み返すと「え、これ児童書だよね?」と驚いてしまい、このままでは児童向け映画としては映画化できないよな〜と思ってしまった…
完全版1巻でいえば第二話「地獄堕ち」は読んでいて当時のポプラ社版の挿絵も思い出したけれど、多分当時の自分はこの物語の構成や仕掛けを理解できていなかったと思う…
不倫と、鳥のかっこうの習性がヒントだけれども最後の恐ろしさは大人になって震え上がったけれども、当時の自分は多分劇中の登場人物のようにその違和感の理由がわからなかった…
記憶違いかもしれないけれども、ポプラ社版ではバラバラに食い殺された赤ん坊の絵も描かれていたような気がする…
講談社ノベルス版には初出データがないため記憶違いかもしれないけれども、多分1巻はポプラ社版の2冊分を一冊にまとめたもので第四話「生霊を追って走る」はオリジナル版では一冊で刊行されていたと思う。
主人公三人組は悲劇を食い止めようと走り回るけれども、結局その努力も無駄に終わる切ない結末だけれども、それでも何かをすると決意する物語で爽やかな終わり方で、その後も様々な事件にあうことになる…
老人介護問題とそれに伴う虐待に関する事件もあったりして、読み返していて今では児童書として出すのは難しいと思う…
本作はOVAとしてアニメ化されていて、これもビデオで観た記憶があるけれど第一話を忠実に、ポプラ社版の絵柄で映像化されていて面白かった記憶があるけれどまた観たいなと思う。
当時のイラストはポプラ社版学校の怪談の一部も担当した前嶋昭人さんで学校の怪談のときは悪ふざけもあったりして苦手だったのだけれども、独特の絵柄もあって地獄堂霊界通信とセットとなっている部分がある。再刊ではみもりさんにイラストレーターが変更されていてこのあたり絵柄などから仕方がないのかなと思っていた。
ただ少し調べたらどうも前嶋昭人さんは現在はイラストレーターとしての仕事はしていないようで、一時期ラーメン屋さんを経営していたという情報がでてきてビックリした。
ここからは余談だけれども、地獄堂霊界通信の作者の香月日輪さんは少し尖った性格のようで、どうもポプラ社版のイラストが好きでなかったようで復刊でのあとがきを読んでいてちょっとそのあたりが漏れているように感じて、ちょっと苦手に思う部分だった。
感慨深いといえば、ノベルス化にあたって、以前の原稿を書き直す作業を書き直す作業をしたのだが、これが想像以上に過酷であった。直しても直しても、平仮名の山。旧地獄堂が、いかに「子供向け」のこしらえだったかが、よくわかる。これに比べ「新生地獄堂」は、幅広い読者層に読みやすいつくりになっているのだ。これも、私が望んでいたことだ。とても嬉しい。
これは完全版1巻のあとがきで、理解できる部分もあるけれどちょっと悲しくなった部分でもあった。
子供向けを軽視しているわけではないと思うけれど(それこそ児童書として出したり、幅広い読者層に読んでほしいと書いているから)ちょっと引っ掛かる部分だった。
それで思い出したけれど、小学校卒業後一度だけ図書館で未読の本がありあとがきを読んだことを思い出した。
そのあとがきを読む限り、その巻では子供の自殺問題を取り扱っていたようだけれども、子供の自殺を否定する人を似非ヒューマニストと批判していて、子供にも自殺する権利があると主人公に語らせているようでそのあたりで衝撃を受けたのを思い出して、何となくそこで読まなかったのを思い出し、懐かしさと続きが気になり全巻揃えながら読めていない部分がそういった、ちょっと尖りすぎた部分だったりする…
ただそれを差し引いても物語は魅力的でゆっくりとつづきを読んでいきたいと思う。
本作に関して切ないのは作者の香月日輪さんは51歳と若くして亡くなり、予告されていた第三シーズンが結局実現しなかったこと…復刊でセカンドシーズンが終了時期に予告されていて楽しみにしていたのだけれども、その後まったく続報がなくさらには作者も有名となり色々な作品がアニメ化など次々と作品を発表していたからそのあたりで止まっているのだと思っていた。だからいつか実現すればいいやと思っていたから、亡くなったときは悲しくなった。
復刊後のイラストおよび漫画版を担当しているみもりさんによると、第三シーズンのアイディア…中学生になった三人の活躍を断片的に聞いていたそうで作者の中ではある程度形になっていたと思うだけに、それが永遠の幻となってしまった…
先に書いたように作者に関しては尖った部分が苦手に感じるけれども、それでも子供の頃に楽しんだのは間違いないのだから、作者には感謝しかないのである…
