12/20(水)日生劇場へ行ってきました。
 



18時開演だから、この日は会社から駅まで、猛ダッシュ走る人のパターンでしたが、大学病院の予約が、思いがけずこの日に取れたため、有休をとり、余裕がありました。とはいえ、大学病院に朝から6時間半くらい、いる羽目になりましたがショック

世界初演が韓国であり、既にシーズン2のような状態で再演があった作品。
韓国在住のミュージカル通の感想を見ていたから、日本版はどうなるんだろうと思っていたのですが、ラジオで井上さんが小野田さんと話しているのを聞き、期待が高まってました。

ダブルキャストでしたが、私が見た回は、この方々の出演でした。
 



メインキャストは、こんな感じ。

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(孤高の音楽家) 井上芳雄
アントニー・ブレンターノ(ベートーヴェンの想い人“トニ”) 花總まり
カスパール・ヴァン・ベートーヴェン(ベートーヴェンの弟)海宝直人
ベッティーナ・ブレンターノ(“トニ”の義理の妹) 木下晴香
バプティスト・フィッツオーク(野心家の弁護士) 役:渡辺大輔
ヨハンナ・ベートーヴェン(カスパールの妻) 役:実咲凜音
フェルディナント・キンスキー公(ベートーヴェンのパトロンの一人) 役:吉野圭吾
フランツ・ブレンダーノ(銀行家であり“トニ”の夫) 役:坂元健児

いや~ベートーヴェン役の井上さんが出ずっぱりとは聞いていたけど、本当に出ずっぱりだし、歌いっぱなしだし…ラジオで、さかんに弟役やフランツに、3~4曲あげたいとか話していた気持ちが、わかりました。全然、息つく暇がないという印象。
「歌が上手くて声量もある海宝さんや小野田さんが、ベートーヴェンの弟役で、あれしか歌わないの?」と思いました。
だから、ふと、万一、井上さんが体調不良とかになった場合、彼らのどちらかが代役を務める事も視野に入れたりしてるのかな?と思ったくらい。もしくは、佐藤さんか坂元さんが代役をするとか?

しかも、ベートーヴェンの曲を生かして作ってるからか、いつものミュージカルと違って、耳にすっとなじむメロディーがなかったなぁ~
聞いていて難しく感じたけど、実際歌ってる俳優さんたちはどうなんだろう?と思ったら、井上さんの連載記事に色々書いてありました。やっぱりね~

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00752/00023/

父親に虐待された過去を持ちながら、音楽の才能があり、音楽家としての自負があり、自分自身に嘘をつかない人生を歩んできた彼に、耳が聞こえなくなるという、音楽家としては死をも意味するような逆境の中、トニの愛は、一筋の光明だったと思う。
ベートーヴェンとトニの恋は、共に人生を歩むという意味では叶わなかったけれど、魂は繋がっていたのだと、しみじみ思えた。トニに出会って、ベートーヴェンが、真に愛に目覚めた時に、耳が聞こえなくなっていても、音楽への情熱も更に燃やし続ける事になったに違いない。彼女こそ「不滅の恋人」だったのだろう。

「モーツァルト」でも主役を演じた井上さんだけど、年齢を重ねた今演じる「ベートーヴェン」は鬼気迫るものがあり、不屈の精神を感じつつ、見終わった後に、なぜか勇気というか、生きるエネルギーをもらった気がしました。それは、ベートーヴェンの曲のせいなんだろうか…

恵まれた生活を送ってはいても、心が満たされないトニを演じる花總さんは、エリザベートと違い、自分で運命を切り開くという事はしないけれど、ささやかな抵抗を試みながら、ベートーヴェンのエネルギーの相乗効果で変わろうとしている姿が、いじらしかった。真実の愛を求め、魂の自由を求めた彼女だけど、愛する子供を手放す事は到底できなかったし、ベートーヴェンも、そんな酷なことを彼女にさせる事はできなかったのが、仕方ない事だけど、見ていて辛かったぐすん
冒頭のベートーヴェンの棺に語りかけるシーンを思い起こすと、来世でこそ結ばれてほしいと思わずにいられないえーん

でも、一番涙したのは、意外にも、弟カスパールとの和解のシーンかなぁ~
結婚に大反対だったし、自分の嫁の事をひどく言った兄に対して、どこまでも優しく寄り添うその姿が、全然違うけれど、画家ゴッホと献身的だった弟テオとの関係みたいに感じられて… 誰がなんと言おうと、他人には理解しがたい、家族という絆がそこにあるのだと思う。劇中、井上さんが海宝君に、「うーん、いい声だ。僕と同じくらい」みたいなセリフがあったけど、あれはアドリブかしら?ウシシ

トニの義理の妹ベッティーナの木下さんは、可愛らしくて、明るくて、義理の姉とも仲がいい感じだったのに、最後の最後に裏切るのは、ある種の嫉妬なんだろうか。
それとも、兄を怒らせたら、自分の立場が悪くなるという一点なんだろうか。
途中まで協力してるような気さえしたのになぁ。
木下さんの声が、聴いていて気持ち良かった~役柄の明るさそのままに…
花總さんとのデュエットは、声質が違う二人だけど、不思議なハーモニーがありました。
なんと表現すべきなのか…同じ物事を見ながら、楽観的な感じと悲観的な感じといえばいいのか…ちょっとうまく言えませんがあせる
木下さんは、ベートーヴェンが題材の他の舞台に出演されていて、そこでの役とは真逆だったから、ギャップが凄かった。見るたびに、化けるなぁ~と思います。

トニの夫フランツの坂元さんは、要所要所登場しては、威圧感を漂わせながら、物凄い声量で歌いまくって去っていきました。あれだけ、言いたい事だけ言い放ってる歌も珍しい笑常にお金の事しか頭になくて、愛情なんて二の次で、トニに優しい言葉の一つもかけてあげない。まぁ、今どきなら、子育て終わったら、熟年離婚されるパターンかもしれないけれど、経済的に女性が自立してないあの時代なら、無理もない話かなぁ。

そうそう、6人のダンサーが登場するのですが、それがトートダンサーのようによく動く。ある種、ベートーヴェンへ音楽に全てを捧げるようにけしかける感じ。
時々、ぞっとする雰囲気を漂わせてました。さっき貼り付けた記事を見ると、ゴーストなんですね~とても、象徴的な6人です。

あと、「アナスタシア」並みに、LEDで様々な情景が映し出されていて、凝ってました。
世界初演の韓国からも、演出の方がいらしていたようで、様々な国のスタッフが結集してつくられているせいなのか、とにかく今までのミュージカルとはちょっと違うテイストでした。そうだ…ベートーヴェンがオケピで指揮するシーンもあるから、そんな部分も新鮮。視覚的にも、色々趣向がありますしねウインク
何より、日本初演で初めて見るミュージカルだから、余計そう思うのかもしれない。

いずれにしても、悲恋だけど、なぜか、ふつふつと湧き上がってくるものがあり、前向きに生きていくエネルギーに満ちたミュージカルだと思います。