状況はどんどん変わる。
日々変わる。
直接仕事の依頼を受け、テンションがあがりっぱなしの毎日。
たいしたことでもないのに、電話をしてみたり、
電話をするのを躊躇してみたり。
ふわふわした感じで進んで行く毎日。
私の分野の説明を求められ、同行する事になったある日。
先方の要望を聞き、出来る出来ない、それはこういうことと説明、
具体的な提案も交えつつ、話は進んで行きます。
「ありがとうね。先方も理解できて安心してたし助かったよ」
『いえいえ、よかったです』
「これからも頼りにしてるから(笑)」
『…ありがとうございます』
「今の間は何?」
『いえ…なんでもないです』
「気にしてるの?彼女の事」
『そうじゃなくて…』
「実は…、まだ言っちゃいけないんですけど…」
『言うの?』
「私、会社辞めるんです」
『え…』
「すみません」
『辞めるのに、仕事引き受けたの?』
「今の仕事が完了するまではいます。ちゃんと最後までやります」
『…なんで、今言うの…』
「…」
『…』
そこから終止無言。
『お疲れさま。気をつけて帰ってね』
目も合わせてくれない。
背中が怒ってる。
「お疲れ様でした…」
タイミングが悪かった。中途半端な気持ちで仕事してると思われた。
この仕事も降りなきゃいけないのかも…な。
なんで今、口にしたんだろ…。
なんで今、顔に出したんだろ…。
頭の中に、彼の顔がよみがえる。
無表情な、気持ちが見えない、帰り際に見た顔。
気づいたら、あの場所にやってきていた。
ふたりで見た夜景。
今日は少し早い。
まっかな夕焼けが輝いている。
ここで見たあの日。
ぐちゃぐちゃだった気持ちを整頓してくれた。
壊れかけた心を戻してくれた。
彼の優しさが私を癒してくれた。
少しづつ関係が深くなって、気づいたら別の感情も生まれてた。
それが良くなかったのかもしれない。
そんな事、考えちゃいけなかったのかもしれない。
踏み込んじゃいけなかったのかもしれない。
夕焼けが沈む間、そんな事を考えていた。
言ってしまったものはしょうがない。
もう引き返せない。切り替えよう。
帰ろうとした時、車がきた。
知らぬ間に流していた涙で顔がヒドイ。
見られないように顔を隠して、自分の車に引き返した。
『来てたの』
「あ…」
『僕だけの場所だったのになぁ』
「…」
『夕焼け見れた?』
「はい。夕焼けもきれいでした」
『そう。会社に戻ったら、夕日が見えたから来てみたけど。
間に合わなかった。残念』
「写メ撮りました。見ますか?」
『うん』
ふたりの距離が近くなった。
『手、冷たい。寒い?』
「いえ…あの…」
『さっきはごめん』
少し薄暗がりの中、手を握りしめ、うつむきながら彼は言った。
『驚いた。それから寂しくなった。
もう会えないって知ったら、泣きたくなったよ』
「…」
『全然わからなかった。そんなに頻繁に会う訳じゃないけど、
いつも元気だし、明るいし、笑ってるから』
「…」
『ずっと悩んでたんでしょ?』
「…」
『頼りにならなくて、ごめんね』
「そんな…!」
『相談にのってあげれなかった。
すごい決断をひとりで決めたんでしょ。
それを思ったら、また落ち込んでさ…で、ここにきた』
「私…」
『君に会えたからいい。こうして目の前にいるから。
今日は僕が癒された(笑)』
「…」
『もう少し、このままこうしてていい?』
「(うなずく私)」
『よかった』
嬉しそうに笑った彼。
私の事なんかにかまってる暇なんてないはずなのに。
多くを聞かず、自分の素をさらけだし、そんな姿に愛おしさを感じた。
始まったばかりの関係は、まだ終わらなかった。